小宮の書いた落語雑記帳



2020年9月の九雀亭に寄せて
〜コロナ渦で九雀亭を半年お休みしていた後の待望の公演でした〜
「七度狐」と「六尺棒」と「風の神送り」


学生時代にテレビで見た笑福亭仁鶴師匠の「七度狐」が忘れられません。
お調子者の二人が「深いか♪浅いか♪」と上方ならではのお囃子に合わせて川を渡る場面には大笑いしました。 実は、田んぼの中を褌一丁で進む男たちを想像すると可笑しくて堪りませんでした。
言葉だけではなく、想像した絵が各々の頭の中で楽しめる。まさに日本が生んだ話芸の醍醐味です。滑稽噺はこうでなくちゃいけません。
ちなみに当時の仁鶴師匠は人気番組ヤングOH!OH!のお陰で、東京の若者にも相当な影響力がありました。

後年、私たちコント赤信号もヤングOH!OH!に出演する機会がありましたが、さすがに3分でコントをまとめるのは難しかったのを覚えています。まだ“ショートコント”なんて便利な区分けがなかった時代ですから。
話がそれましたが、いつか私なりの「七度狐」をやってみたいと思っています。でも東京でやる人が皆無に近いのは何故でしょうかね?

2本日の「六尺棒」は、九雀さんが落語を教えている中学生のリクエストで古典を書き直ししたそうです。この噺のようにダメな親父と息子が落語にはよく出てきます。シンプルな内容ですから、九雀さんの味付け次第ですね。そのままだと弱めの落ちにも手直しがあるみたいですよ。

2月の時点で「風の神送り」は、桂米朝が復活させた噺ということで風邪=インフルエンザに見立てて今年の時事ネタになるかもね、なんてお気楽なコメントを書いていましたが、COVID-19の恐ろしさは東京も大阪も身に沁みましたよね。未来を予言するような落語が存在するというのは、この芸能が過去に多くを学んできたからでしょう。それをさり気なく人に伝えて、ためになるのも落語です。
先々代の桂文治がマクラでよく言ってました。「落語を聞いて偉くなった人はいっぱいいる。吉田茂なんか落語を聞いてたから総理大臣になれたのよ。だから、皆さんもどんどん落語を聞いた方がいいですよ。で、偉くなれなかったら、それまでなんだから」引きつけておいて突っ放す。人生そのものですね。






伊東四朗・熱海五朗一座合同公演


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