2020年2月号

「落語家さんは何故大勢の人を演じ分けられるんですか?」という問いに対して、「いや、演じ分けていません。ほんの少し声や仕草で差をつけるだけで、語りが主な作業です」という内容で 春風亭小朝さんが答えていた記事を読んだことがあります。「演技が喋りに奉仕しているんです」とも付け加えていました。 なるほど、そこが役者と噺家の違いかなのかと膝を打ちました。
私が付け加えるとすれば、役者は相手の台詞を聞いて心と体を動かすのが肝心で、噺家は喋りに己の個性を注ぐのが仕事だと思っています。ですから同じ落語を演じても、噺家さんによってそれぞれ違うのです。役者の場合は、既成の台本を感性の違う演出家によって色分けされた道に沿いながら役柄を表現します。でも噺家は自分自身が演出家で演者なのです。こうなると古典落語でも、噺のどこにスポットを当てるのか、どの人物に感情移入するのか、時代にそぐわなくなった状況をどうリフォームするのかが腕の見せ所です。
私も今回の演目「元犬」を演りますが、お元というお手伝いさんがいて「元は居ぬか?」とサゲる地口落ちは腑に落ちなかったので改作しました。 中盤の茶道具の”ホイロ”と”吠えろ”を聞き間違えるくすぐりも削って、犬が人間になったらしそうなことを増やしました。
ハードルを上げてしまいましたが、九雀さんの「元犬」もオリジナル版だそうです。定番の滑稽噺だからこそ味わえる、噺家さんそれぞれの語りを楽しませていただきたいです。
「風の神送り」は、米朝さんが復活させたネタだそうです。コロナウィルスで世界が震撼した今年の時事ネタになるかもしれません。
九雀さんの師匠の枝雀さんが得意にしていたとお聞きしたのが「天神山」です。ラストに、曲書きという特殊演出がある型もいつかは見たいですね。
今回は、週刊文春の近田春夫さんのコラム「考えるヒット」風の構成でまとめてみました。



九雀亭


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