ここで今まで新聞や雑誌に書いた関連記事などををリンクします。今後はその時々にリンクできるようになるべくいたします

読売新聞2月9日夕刊。小宮孝泰の「ロンドン右往左往」
読売新聞3月8日夕刊。小宮孝泰の「ロンドン右往左往」
小田原広報誌。小宮孝泰の「ロンドン日記」
留学雑誌WISH第1回。小宮孝泰の「恥ずかしいったらありゃしない」


4月1日
朝から体調が悪い。
悪寒がするから風邪なのだろうか?下痢はしていないが、腹の具合も良くない。
不覚にも、こんな大事な時に体調を崩してしまった。
ロンドンに来て以来最悪の状態である。
体力の為にと無理に食べようとするが、ほとんど喉を通らない。

それでも10時、RADA集合。
今日の舞台稽古やらのお手伝いをお願いした佐藤章子さんも来てくれた。彼女は先月観たアングラ風芝居に出演していたロンドン在住の若い女優さんである。彼女自身はアングラ風ではなく、とてもよく気のつく女性である
通訳のジャミルも少し遅れて劇場入り。そして11時、DEE CANNON到着
11時半、稽古開始。先日の止めながらの稽古の続きだ
しんどい。正直つらかった
稽古終了予定の1時になって、DEEがまだ稽古を続けようと言い出す
たまらんかったが従う。むしろ逆らう気力がなかった
彼女はこの段階で、まだ発音や細かい芝居のチェックをしている
先生に対して申し訳ないが、彼女は演出家ではないなと思う。やはり演技の先生だ。本番前日に指示すべき大事なことはそんなことではないはずだ。

2時過ぎ楠原さんがRADAまで車で来てくれた。本日ロンドンに到着する嫁さんを迎えに行ってくれるのだ。
その前にまず私が同乗して、日本大使館まで落語用の座布団と真っ赤な毛氈を取りに行く。受け取ったその足で私は地下鉄でRADAに引き返す。楠原さんはヒースロー空港まで向かった。

誰もいないRADAの客席で倒れるように仮眠。1時間くらい眠ったところでスタッフが劇場に集まってくるが、暫くそのまま寝ていた。起きられなかった。

ちなみに2日前に懸念された平台を繋げたような少し高さのある小舞台と、着替えのための小スペースはしっかり用意されていた。文句は言ってもやるときはやってくれるもんだ。まだら模様のペンキで塗られていた平台はこの時点でまた別のスタッフにきれいに黒く塗られていた。



ここは写真はまだです。少々お待ちを


5時半嫁さん劇場に到着。久しぶりに会った私がフラフラしていたから驚いたと思う
6時からテクニカルリハーサル。これが難航した。
私の一人芝居の音響・照明の手順は、プロにとってはさほど難しくない。私は長くても1時間以内で作業は終わるものと思っていた。ところがそう簡単にはいかなかったのである
悪いとは思うが、はっきり書かせてもらう。一番の原因は照明担当のFelexだった。きっかけをしょっちゅう間違える。照明操作が打ち込みのコンピューターだったのがそれに拍車をかけた。何度も”Sorry,I'm comfused”(混乱してしまって)を連発。その度に”Please wait 5 seconds.”(5秒待ってください)と言うが、ほとんどそれは5分待ちだった。そうなのだ、彼はまだ勉強中の学生だったのだ。音響担当のAndyが彼の穴を埋めるべく必死に調光室と劇場フロアを走り回ってくれた。実は日本で言う舞台監督に当たる人がいないために彼が汗をかく羽目になっているのである。おまけに通路の主だった扉にはセキュリティのためにIDカードが必要である。それを嫌な顔をせずに行き来してくれた彼のお陰で、体調の悪さはこらえることが出来た。
それでも明かり合わせやきっかけの確認は8時過ぎまでかかってしまった。



ここもまだだよ写真は


だが今日はここで止めるわけにはいかない。
無理を押して舞台稽古開始。集中力が切れそうになる時もあったが、やっと10時過ぎに終える。明日の成功を祈って解散

風邪を引いているなら、熱燗を飲んで栄養の高い物を食べて寝るのが一番だと思ったので、明日の打ち上げ会場である純日本風居酒屋「酔い処」に嫁さんと佐藤さんと3人で行く。ところが食べ物を口に運ぶたびに脂汗をかく。酒も不味いし、たまらん状態になってきた。思わずトイレに駆け込む。吐くかと思ったら、何故だか便意を催した。冷や汗をかきながら排便。丁度用を済ませた頃に、嫁さんが心配してトイレを覗きに来た。理由はよく分からんが、排便のお陰で気分はだいぶ楽になっていた。すぐさま勘定を済ませて、今日はタクシーで帰ることにした。

ロンドン初日の嫁さんには申し訳なかったが、荷解きを手伝った後はぐったりして布団に入ってしまった。眠らずにはいられなかった

うとうとしながら思っていたのだが、これは風邪ではない。疲れがたまったところに何か悪い物を食べたのだ。そう考えると昨日のFish&Chipsしか思い当たらなかった。もうあんな脂っこいものは食わんぞと心に決めて夢に落ちた。


4月2日(金)快晴
昨日の睡眠でほとんど回復。
よーし持ち直した。助かった。
10時半RADA到着。最終リハーサルをする。やはりきっかけがまだ心配だ。リハを始めると案の定Felexがミスをする。思わず少し切れかかって”そうじゃないって昨日も言ったでしょ”と声が荒くなってしまう。照明室で彼が悲しい顔をしている。ここは私が大人にならないといけない。繰り返した次の練習で彼もほぼきっかけどおりにやってくれた。”Very good”と照明室に声をかける。ホッとしたFelexの明るい表情が窓越に見えた。良かった。

午後1時過ぎ、やるべきことは全てやった。楽屋で嫁さんと待機する。地下のこの楽屋は男女ともトイレもシャワーも完備、部屋も広いのだが、天井が低いので圧迫感がある。ちょうどロンドンの地下鉄のTUBEを思わせる。
2時、嫁さんも客席に向かった。地下の電灯の明かりの中で私一人きりだ。不安といえば不安だが、思ったほどの緊張や興奮はない。むしろそうならないように、普段の自分でいるように心がけていた。だが、いつもの癖は抜けない。誰もいない楽屋の中を、動物園の動物のように行ったり来たりしていた。

2時15分、スタッフのアンディが出番を伝えに来た。”Have a good job!”と彼が右手の親指を立てた。”ヨッシャー”と日本語のままで気合を入れた。
ステージに続くドアを開ける。いよいよ英国の劇場での初演が始まった。

マチネはお客さんも少なめだった。30人くらいだろうか。
実は数日前の状況では予約が1枚という情報もあったので、必死で客集めした。
そんな状態も手伝ってか、心配そうに見守っているお客さんが多かった
反応が硬い。
始めてみると、色々気になることだらけだった。
客席のど真ん中にあるTVカメラのこと。
舞台最前列に中央に知り合いが座ってしまったこと
なかなか芝居に集中できずに、ミスも目立った

着替えタイム失敗だった。時間がかかり過ぎた。
夜の部は、この時間は短い休憩にしてアンケートなどを書き込んでもらおう

マチネの採点は、甘く点をつけても60点だった。
反省はするが落ち込まない。色々手直しして夜の部を待つ



「JAIL TALK」の関係の写真はまだです。良いのを選んでます





上に同じ。選別中




7時15分夜の部開演
今度は満員御礼で客席も定員より増やして80人以上の来場である
結局日本人のお客さんが多いことが分かったので、前説の段階から日本語も取り混ぜたり、得意の客つかみも織り込んだりする。
今度は反応が暖かい。
役者とは単純なものである。ていうか私は単純である。こうなると出来も良くなる
相乗効果でお客さんの笑いも多くなった

マチネで気になっていたことは改良していたので「JAIL TALK」は、ほぼ成功だった。ま、多少のミスがあったのは仕方ない。ヨシ!

ただ一人芝居で気が抜けて、落語でミスが目立った。でもこんな時はそれが幸いして、笑いのつかみになってしまった。「厩火事」も「桜鯛」も落ちまできれいに受けた



落語の写真もまだですよ




上に同じ




今回留学中の最大イベントを無事終える
AndyやFelexがしきりと”Did you enjoy?”と聞いてくる。”Yes, I've done good job. Thank you.”と答える。校長のNicholas Barterも”I'm pleased”と言ってくれた。もし私の上演が上手くいかないと、責任問題でもある。私も一安心だ。

何とお客さんの中に翻訳家の松岡和子さんもいた。ちょうどイギリスに来ていたところで、いかわとうごさんからこの芝居の連絡が届いたらしい。今回の留学に関して助力も頂いた方だけに、こんなところでお褒めの言葉が聞けて嬉しかった。
もちろん土田英生くんや楠原さん、ロックベーシストのTACAさん、フランセスキング英語学校のクラス仲間、Camdenの駅で声をかけてくれた人、新聞や雑誌の記者の方、佐藤章子さんのお芝居仲間、その他大勢の方がお友達を呼んでくださった。みなさんありがとう!
ちなみにロンドン在住の歌手の小林明子さんも観に来てくれた。小林さんの日本のプロダクション社長をよく知っている関係でご来場願えたのである。
余談だが松岡さんも小林さんも落語を褒めていた・・・

RADAの近所の「酔い処」で日本の芝居風に打ち上げだ!
Nicholas Barterも参加してくれた。嬉しいなあ!
勢いづいて、山田さんの店へも流れる。今日はいいでしょ、飲んでも


ところで例の体調不良の原因は何だったのだろう?
楠原さんにも聞いて思い当たったことがあった
数日前の和食屋さんの業界盛り上がり宴会で食べた生牡蠣である。私は普段滅多に生牡蠣は食べない。日本からの連絡でSUTOUさんたちは下痢がひどいらしい。気持ちは盛り上がっていても体が疲れていたのだろう。そのうえに脂っこいFish & Chipsだったので体が参ってしまったのである。
牡蠣を食べた他の方たちは大丈夫だったのだから、旅疲れのSUTOUさんたちと私がやられたのである。
結局前夜によく寝たお陰で体調は持ち直した。睡眠は肝心である



4月3日(土)
祭りの後の1日

今日は嫁さんサービスデイである。
昼間はCAMDEN TOWNを散策。ざっと街並みを紹介した。
アジア屋台の立ち並ぶ店で、インド料理をテイクアウト。バターライスにカレーがそれなりに美味い。初めて食べる彼女もOKのようだった。

嫁さんの希望のコース、大英博物館を訪れる。まっしぐらにエジプトコーナーを目指す。彼女のお目当ては猫のミイラや銅像だ。あの時代に猫は神様だった。大事な穀物を荒らすネズミを退治してくれるからである。


CaliceA
関係ないですが、これが我が大家さんの猫アリスです。英国人らしく、本に囲まれて知的で気高い雰囲気ですね


2年前にも訪れたコースを思い出しながら展示物を眺めていく。気のせいか多少展示が違うような気もする。ま、私の覚え違いであろう。
映画「ハンナプトラ」に出てくる昆虫の石像はちゃんとあった。

猫やクレオパトラのミイラの展示コーナーは、やはり人気が高いらしく人だかりである。私も嫁さんも負けじと行列に加わり、じっくりと眺める。前にも思ったがミイラの当人はこんな他人に見られる状態は予想だにしなかったであろう。

イギリス人がペット好きだということもあってか、お土産用にもエジプト猫グッズは氾濫していた。ちょっと興奮気味の嫁さんは、絵葉書やらノ−トやら、ミニ銅像やらを早速楽しそうに数点買い込んでいた。


Caliceme
お出かけ前にアリスと一緒に写ってみました。これ面白い撮り方の写真だね



CAMDENに戻って、何度か通ったタイ料理の店に入る。今日は他の店がほとんど休みだったのでここしか選べなかった。

昨日のお礼メールの作成
そして、夜9時過ぎから本格的にパソコンに向かう。読売新聞の原稿を2時間で一気に書き上げた。話題は予定通り昨日のRADAの公演である。いつもと違って劇的に盛り上げた文章にしてみた。時々逡巡はしたものの、こういう書き方は勢いのもののようである。思考とキーを叩くリズムが滑り出したら早かった。
勢いづいて、内容の一部をホームページの掲示板にも早速書き込みしてしまった。

本日書き上げたのは
読売新聞4月12日夕刊。小宮孝泰の「ロンドン右往左往」 こんな文章です

芝居も原稿も追えて、ホッと一息。嫁さんと二人でロンドンの部屋で酒を飲む。

外はすごい雨と風になってきた。明日のドライブは大丈夫なのだろうか?


4月4日(日)朝は快晴
楠原さんの車に乗せてもらって、ロンドン近郊の田舎町コッツウォルズへ向かう。出掛けは絶好のドライブ日和だった。
今日は楠原さんの旧友、若い頃の劇団時代からの仲間だという大阪の女性Rさんも同乗だ。先週「魚の祭り」をロンドンまで観に来た女性だ。

さあ、市内を抜けるとイギリスで何度か見たのと同じように穏やかな丘陵が段々増えてくる。緑が芽吹き始めている季節だ。牛や馬や、羊もチラホラ見え始めた。
そのままMOTOR WAYでCheltnaumという町に向かうが、この辺りで空模様がおかしくなってきた。ロンドンの天気は全く信用できない。
さらに田舎町ウィンチクームでランチタイムにしようと店に入ったら、人通りの少ない町並みとは打って変わって店内は満席である。女性店員に割とあっさりと食事を断られてしまった。イギリスではSunday Lunchといって、日曜は家族みんなで外食を楽しむ習慣らしい。


Winchpub
こんなお化け屋敷みたいなところですが、中は綺麗だし満員でした。



腹の虫を抑えてドライブは続く。
途中で私が何気なく発見した小道に入ってみることにした。私の勘は当たっていた、道が緑の丘へと続いている。細道の坂を上る。途中で野生の雉を発見。楠原さんが”美味いぞ、捕まえろ”と出来るわけないことを叫ぶ。雉も平然と我々の目の前を過ぎて行った。
見晴らしの良い所で、休憩と写真撮影。良い眺めである。坂道の行き止まりにある家から犬もやってきた。都会とは違う時間が流れている


WinchH
実際の見た目はこの画像よりずっと広々した、のどかな風景だった




WinchP
小宮夫妻と楠原さんで3ショット


さらに車を走らせ、RADAの校長Nicholas Barterのお薦めの場所 Broad Wayに向かう。走ること数十分”これぞ観光地”が見えてきた。我々と同じような観光客もぞろぞろいる。Broad Wayとは日本の軽井沢のような場所だった。
早速手頃なレストランで食事。ローストビーフがソースと共に美味しかった。そういえばイギリスで代表的な料理は確かローストビーフだった。
食後の散策。良い雰囲気のアンティークショップなどがある。雰囲気につられて全然この場所とは関係ないワインオープナーを買ってしまう。嫁さんが家にあったのが壊れたと言っていたのを思い出したからである。そういえばあれは新婚旅行のときにN.Y.で買ったものだった


BBroadWこれがその町並み。表通りの建物は全て土産物屋かお店、またはB&B(Bed&Breakfast)である。造られた可愛らしさの町




帰りの道順を利用して、近場のお城へ向かう。
途中で煙をシュッシュッと吐きながら走る本物の蒸気機関車に遭遇。停車場と呼びたくなるような昔ながらの駅にはSL写真マニアもいた。駅の側のGarden Centreで小さな鉢植えの花を買う。まだつぼみの前、5月には花が咲くようなのでCamdenの部屋のベランダに置いておこう。

お城に着いた時には、日が暮れかかったうえに雨まで降ってきた。やっとお城の入り口に着いたら、すっかり入場時間を過ぎていた。歩き疲れていたので、がっかりもしなかった。こうなったら都会へ帰ろう


Sheep
お城の近くの牧場。羊がメーメー言いながら草を食んでいる。この羊は体にペインティングされて印がつけられていた。食べるのに一所懸命で私が呼んでも振り返りもしない



一路韓国人街へ向かう。楠原さんが食材をよく買いに来る場所である。休日帰りの車の渋滞を抜けてやっと着くとまた雨。今日は随所随所で雨だ。
韓国の食材に混じって日本食の品もたくさんある。まずは眞露を購入。私はウィスキーよりこの方が好きだ。久しぶりに食べたかった”沢庵”も購入
その後は焼肉屋さんで食事。ここも満員のお客さんだった。
食べたかった牛の焼肉より豚の焼肉の方が美味しかった。回鍋肉を辛くしたような味付けで、最初は食べ難かったが慣れると白いご飯にピッタリの美味さだった。


4月5日(月)また寒くなった
イギリスで覚えた日本料理「肉じゃが」を嫁さんのために作る。じゃが芋とにんじんをの皮をむき、しらたきを煮たところで、肝心の肉がないことに気づく。
近所のTESCOまでお買い物。結局イタリアワインやら、何やら買い込む。
いよいよ肉じゃがを仕上げて食べさせる。評価はOKであった。よしよし!


Ckitchen
これが我が部屋のキッチン。可愛いけど、流しが隅にあってちょっと洗いずらい。下の丸い扉は洗濯機のドアです。使っていない時は、こうして開けておかないとカビるのだそうです。その手前に小さな冷蔵庫があります。

棚の中には先住者が置いていってくれた皿や食器、私が日本から持ってきたラーメンや蕎麦のインスタント食品がいっぱい



小田原の母に電話。小学校4年の時の先生がイギリス来るらしい。私と連絡を取りたいとのことである。会えれば40年ぶりくらいの再会である。
読売新聞に電話。2日前の原稿がまだ担当者に読んでもらえていなかった。

午後3時、遅い出発。
CAMDENで写真の現像を引き取り。嫁さんが日本に絵葉書を送る。私も初めてPOST CARDの出し方を知った。

日本大使館にお借りしていた落語用の毛氈を返しに行く。Simonが出迎えてくれた。
シェイクスピア時代の野外劇場を復活させた「グローブ座」を見に行く。London Bridge駅で降りて、テムズ川の川沿いにある。最近出来たものなので展示も設備も新しい。
須藤さんのお薦めの劇場内のシアターガイドツアーに参加した。同じような参加者が集合して、ぞろぞろとついていく。天井のない屋外型の木製の劇場。400年の歴史が感じられるように雰囲気が醸し出されている。暖かい5月になったら、ここで芝居も始まるらしい


Globesky
客席から空を覗くの図。この後すぐに雨が降ってきて、雨の線が見えた。
早くここで芝居が見たい


ガイドの説明は全て英語なのだが、比較的に分かり易い。当時の上等の観客は芝居を”観る”のではなく、シェイクスピアのような作家の韻を踏んだ美しいい台詞を”聴いた”のだそうだ。だから特等席は舞台正面の前列ではなく、役者に一番近い舞台袖の端の席が値段が高かったのだそうだ。
言葉にこだわるイギリス演劇の源がここにあった。
歌舞伎の場合は、あの衣装とメイクである。台詞もさることながら”観る”ことに重きが置かれいたはずだ。そこから流行が生まれたり、役者絵なんてものが飛ぶように売れたのである。


GlobeSt""
時代がかっているでしょ
何となく日本の能舞台も思わせる。そういえば野村萬斎さんはこの舞台で狂言をやっている。展示コーナーに写真が貼ってあった



デパートのハロッズでキティちゃんを探す。もちろん嫁さんのリクエスト。私には意外だったが、確かにあった。しかもキティちゃんヨーロッパ限定グッズもあるらしい。恐るべしキティちゃん。

CAMDENのパブで一杯、いや二杯。私が時々通っていた店だ。まだ日の明るい店内に酔っ払いの気だるい雰囲気も漂っている。嫁さんは却ってそれが新鮮のようで面白がっていた。


ここはCamdenのパブの写真の予定





4月6日(火)
朝は晴れ、しかし午後は天気はくずれる。おまけに寒い

私は朝からActors Centreのレッスンへ。嫁さんはCamdenでお買い物を楽しんだようだ。独りで気ままにショッピングをするのもいいだろう。それに少しは一人で市内を動き回れるように訓練しないとね

今日は”Classic Comedy”の授業だ。
輪になって全員の自己紹介。私もこれまでの経過などを話す。日本で演技の勉強をしたという俳優さんが一人いて、ちょっとした日本語で話しかけてくる。例えて言うのが好きな私から見ると、彼は角野卓造さんとロビン・ウィリアムスを混ぜたような感じ。

ウォーミングアップはまず好きな声の合唱団。つまり3人一組になって”アー”でも”ヨーロレイ”でも”ウヒョヒョ”でもいいから自分たちの音を決める。
指揮者が一人いて、順不同に組を指していく、指されたら声をそろえて出す。それだけのことである。子供の遊びのようでもあるが、中年以上の俳優が恥ずかしがらずに、むしろ楽しそうに合唱していた。
今日はObserverなのだが、これは私にも参加できるので一緒になってやる。

次に始まったのは、例のGibberishのエチュードだ。出鱈目言葉を語る人間と通訳の掛け合いだ。今日は無理をしないつもりなので見学した。

次からは先生に与えられたテキストを使って、2人一組でリーディングだ。
先生は70歳くらいの小さな体の女性。この学校にはこのタイプの先生が多い。
次から次へと台本と出演者を変えて進んでいく。正直言って、私には分からない作品が多かった。
中で劇場の舞台での出来事の台本が短くて分かり易かった。駄目俳優が台詞やら小道具の王冠などを忘れてうろたえているのが大体分かった。

授業の終わり近くで、いきなりObsereverの私にも順番が回ってきた。何かやりたいかと聞かれたので、てっきり来週やらせてもらえるものだと思って、前述の舞台劇の喜劇の台本をコピーしてもらった。次までに理解しようと思ったからだ。
そしたら突然やってみろという。”えっ”と思ったが、躊躇は一瞬だった。こういう場合はどうとでもなれである。台本の20%くらいしか理解できていなかったが、しどろもどろでやってみる。丁度それが舞台でうろたえている駄目俳優と重なったのだろう。みんなから笑いと拍手が起きた。この学校でこんなに拍手をもらったのは初めてだった。
日本人がオロオロしているのが可笑しかっただけにせよ、どちらでも良い。ただの引っ込み思案にはなりたくはなかった。

来週までによく読んで再チャレンジだ。狙うと失敗するのであくまで自然体でいこう。今日見学していた俳優さんたちの1週間後の成長も楽しみである。


Actorbar
ここが俳優学校のBar。昼間は喫茶室。安い紅茶でゆっくりしていられる。
私はここで台本を読んだりして時間を潰してました



嫁さんをヒースロー空港に送る。Paddingtonの駅から空港行きの特急に乗る。これは便数も多いし、料金も安い。実は正規の窓口で往復切符を買おうとしたら、駅員さんに”ここで買うより、乗車口の側で買うと半額だ”と教えられた。そのシステムは分からないが安いに越したことはない。イギリスでは往復の方が片道より安いこともあるらしいので注意しよう。

ちなみにイギリスでは往復は”return”片道は”single”と言う。

家に帰って一人で寂しくお礼メールを出す。
そして溜まってしまった日記の整理と更新。画像も処理



4月7日(水)
日本大使館の一室で北海道新聞の取材。3月25日に楽屋に使っていた部屋だ。こういう場合にも貸してくれるらしい。
一ヶ月くらい前の取材の時よりも、言いたいことが増えたし意見もまとまってきたのを感じる。取材の経験や新聞記事の投稿などが考え方に影響しているのだと思う。日記も少しは役に立っているはずだ。
ついつい1時間くらいベラベラと喋ってしまう。

Googde St.の「酔い処」で飲み会。今日は4月2日に挨拶し切れなかった人たちとの集まりをセッティングしてみた。
ロンドンで装飾ろうそくのデザイナーをしているBさん。この人は9人もお客さんを呼んでくれた。Camdenの駅で声をかけてくれた人である。今日も何人か呼んでくれた
そしてフランセスキング英語学校の生徒、グラフィックデザイナーのOさん彼は。最近N.Y.である賞を取ったという。
偶然2人ともデザイナーだった。もちろん2人とも日本人。
その他のメンバーは、オペラ歌手のEさん。
WebデザイナーのKご夫妻。
女子大生などなど



飲み会の写真の予定。へべれけかな?



この日は馬鹿に盛り上がってしまった。特にロンドン歴の長いEさんの言葉には説得力と迫力があった。延々と話は盛り上がった。
閉店間際に店長が宴会に参加。サービスで日本酒がどんどん出てきた。久保田も混じっていたことは見逃さなかった。味は覚えていないが・・・

みんなでKさん夫妻宅まで歩いて移動。そのまま朝方まで宴会が続いた。
学生時代を思い出すように、みんなで雑魚寝。
何年ぶりだろうか


4月8日(木)
朝帰り。こういうときは無性に麺類が食べたい。
家に帰って買い置きのカップ麺を食べる。
美味い!日本のカップラーメンは美味い!
腹がくちくなってベッドで昼過ぎまで眠ってしまった


楠原さんと話題のミュージカル「Jerry Springer the Opera」を観に行った。口コミで私の耳に入った情報を集めると、かなり評判の高い芝居だった。だから今日は満を持して、この機会を待っていたのである。楠原さんが隣にいれば私の分からないギャグやストーリーも教えてもらえる。

で、結局、これは素晴らしい!
アメリカで人気の番組、夫婦や恋人の喧嘩を囃し立てる番組の司会者Jerry Springerを主人公にして繰り広げられるオペラミュージカル。
早い話が第1幕は”Fuck”とか”Shit”とか”Ass hole”とかの俗悪な言葉を声楽家の美しい歌声で歌い上げたりするのだ。”ケツのあなー♪”という訳である。これで場内がどよめく。
TVに出たがり屋のスノッブ共が1幕では続々登場し、女で男でもデブでも何でもござれのバイセクシャルや、赤ん坊プレイの好きでオムツにウンチをしたがる親父などが笑いを誘う。
やることはくだらないのだが、歌は全員本格的なオペラである。ここが凄い!
ギャグが出来るオペラ歌手が集合しているのだ
そういえば舞台でこんなに大勢太った役者を見たのは、ロンドンに来て初めてである

第2幕は、首にした前説の男の逆恨みを買い、ピストルで撃たれてしまった主人公の死の間際のめくるめく妄想。ここでは宗教的な話題が多く登場するので細かい内容は私には理解できなかった。ただし話は分からなくても、楽曲は2幕の方が素晴らしかったので充分に楽しめる。
首になった前説男は悪魔として登場する。彼のキャラクターと歌が素敵だ。キリスト役になった黒人の赤ん坊プレイ親父との”アー♪”と”トー♪”だけの歌合戦などは圧巻だ。
舞台終幕、主人公のJerry Springerは今までのことを悔いながら死んでしまう。終盤にかけての主役の芝居は上手い。周りの俳優が全員歌う中で彼だけは終始演技だけで勝負しているだけに凄く光る。
補足するとボディガード役のコメディリリーフのスキンヘッド男もかなり美味しいところをさらっていくので注目だ

カーテンコールも実に洒落ている。演出の勝利である
これがやはり今回のベスト1の作品であろう
終演後のロビーでライブCDや写真付きプログラムにオリジナルキャップまで買ってしまったミーハ−の私である

楠原さんが駐車禁止でタイヤをロックされてしまった。申し訳ないが私にはどうしようも出来ない。仕方なく地下鉄を乗り継ぎ、楠原さん宅まで帰って飲む。
TVをつけたら日本のNHKで「全日本学生落語選手権」なるものをやっていた。思わず全部見てしまった。童話を繋ぎ合わせた新作落語を作った筑波大学の大学院生と「天災」を演じた関西の学生が良かった。

安心して飲んでいるので、こうなると当然お泊りである


イラクで民間日本人が武装勢力に誘拐された。由々しきことである。これが恐らくこの旅の期間中の最大ニュースであろう



4月9日(金)イースター初日
本日は1日中すっかり快晴。
すっかりよく寝た。楠原さんの家に泊まるとよく眠れる。

さて街は休みになってしまった。休んでいる店や公共機関が多い。慣れていないだけに調子が狂う
CAMDENの教会に入ってみる。駅前の1等地に立派な教会があった。扉が開いているので誰でも入ってよさそうだった。
集まった人々が賛美歌を歌っている。天井の高い建物、正面奥にはステンドグラスの壁、見学用の椅子の前には十字架に貼り付けにされたキリストの復活の姿が飾られ、多くの蝋燭に火が灯されていた。無宗教の私も少しばかり心が静かに洗われたような気になって蝋燭を買って火をつける。これ日本の神社やお寺と同じだ



教会の写真の予定



単1乾電池を購入。今まで聞かなかったラジカセにスイッチを入れる。BBSのラジオを聴くためだ。眼に頼ってしまうTVより、耳だけが頼りのラジオの方が英語の勉強になると先日のオペラ歌手の方に教わった。中でもこのチャンネルはきれいな英語で聞き易く、ニュースもたっぷりあるので情報のためにも良いらしい。
当然分からない言葉が多いのだが、聞き取れる単語やフレーズも随分ある。何だか少しは耳が英語に慣れたような気になった。気のせいかな。

3月の日記一気に更新。HPに公開。画像処理に相当時間がかかり、パソコンのやり過ぎで肩がこる

追伸
今日Sains Burryで液状スープの素がたくさん並んでいるのを発見した。早速フランス風オニオンスープを買ってみる。これが一番無難な気がした。で、味はかなりいける。値段も安い。ちょっと薄めて暖めるだけ。これで欧風料理の気分が一気に増す。もっと前に見つけておけば良かった。今度は別なスープを試そう!
皆さん、これはお買い得です。



4月10日
朝から出かけて、楠原さん宅で日本のプロ野球観戦
試合はもちろんヤクルトVS巨人戦。放送開始30分遅れで楠原さんの家に着いたら、試合はすでに7回を終えようとしていた。馬鹿に早い展開だ。しかもヤクルトが3対1で負けていた。せっかくの今日の私の楽しみがあっという間に消えようとしている

ところが9回表に稲葉の2ランホームランで同点に追いついた。ここでぐっと飲み干すビールが美味くなる。今日は昼間からビールで野球観戦だ。日本のおじさんだ。
ところがところが、チャンスの後にピンチ有り。高橋、ペタジーニと連続ヒット。ローズ敬遠。清原の押し出しフォアボールで幕切れでした。
この打線じゃ仕方ないか。石井も責められまい。
日本の野球を生で観て、一度でも盛り上がったのだからよしとしよう

楠原さんのiMacで文化庁の月報の原稿を書く。楠原さんはほとんどメールだけを使っているようで、色々聞いたがあまり要領を得ずに自力で使い方を探りながら作業した

夜、楠原さんのお誘いであの「ミスサイゴン」本場ロンドン公演に大抜擢されたという女優さんたちと会食。お名前は森尚子さん。彼女は子供の頃からイギリスで暮らしていたので、それこそ英語はペラペラであった。
今日はイタ飯である。そう毎日日本食ばかり食べていてはいけない
この店は美味かった。まずスープが美味い。ミネストローネなのだが、トマト味ではない初めての味。お通しのような存在で、パンの上に乗せたトマト風味の食べ物、これがまた美味い。シーフードリングイネもいける。麺は固ゆで(アルデンテだったっけ?)で、食感も良い。ただ量があまりに多いので、結局これはTake awayにすることにした。チキンのシーザーサラダも美味しい。とにかくほとんどのもが美味しかった。

引き続きパブ。ここはロック系の音楽が大音量で流れているので、声量もでかくなる。ミスサイゴンがのってくる。どうやら彼女はお酒も話も随分弾む方らしい。

そして3軒目のSOHO JAPANまで流れる。すでに閉店時間だったのだが、マスターが快く入れてくれた。おまけに刺身の盛り合わせまで、ご馳走になってしまった。主席の話題は日本のプロ野球の話に始まって、何故だか私の一人芝居「接見」を英国流に変えるべきかどうかの話になった。ここでミスサイゴンが俄然自説を主張し出して盛り上がる。どちらかというと静かだった私も黙っていられなくなり、暫し国際演劇論。

帰りは、全員楠原さんに送ってもらってしまった。


4月11日(日)自宅で心行くまで寝る
昨日のパスタをレンジでチンして食べる。固めに茹でられていたパスタが、すっかりぶよぶよになっていた。

今日は一日中パソコンと向かっていた。文化庁月報、各種メール。そして日記。
家を出たのは夕方Tescoに買い物に行ったきり。
その帰り道に、ふと思った。
今このロンドンにいる自分は非日常の自分である。長い人生の中で4ヶ月は小旅行に過ぎない。だが何だか今が日常で、日本にいた自分が非日常に思えてきた。そう感じられるくらいの時間をここで過ごしている。
午後7時半とは思えないくらい日の明るい道を歩きながら、ぼんやりそんなことを考えていた。
そもそも日本とロンドンはさほど遠くないのではないか?現に嫁さんもSUTOUさんもあっという間にロンドンに来て、帰るとなったら飛行機に乗って12時間後には日本に着いていた。嫁さんを送った日、夜寝て朝起きたら彼女は東京の人だった。
日本も恋しいが、まだまだこの国にもいてみたい



家の前の通りの何気ない写真の予定



張り詰めていたものが抜けてきている。イースターがそれに拍車をかけている
一息つくのはいいが、ロンドン滞在もあと1ヶ月余りだ。時間を有効に使って有意義に過ごさねば。自分に鞭を入れよう



4月12日(月)とても良い陽気
今日は”バンクホリデイ”というらしい。銀行は休みってこと?

街が休みだと思うと、どこにも出かける気がしない
今日も日がな1日パソコンに向かっていた
お陰で溜まっていた日記はほとんど片付いた
英語で出すべきお礼のメールや、日本の皆様へのRADAの報告メールなどもかなり片付いた

昼間に一度ベランダに出て、椅子に腰掛け煙草を吸ってのんびりした。鳥がさえずり、よく見れば蜂も飛び交い、春である。お隣では庭にテーブルや椅子を出してお友達を呼んで小パーティーのようだ。
もう少しで木々の緑が一斉に吹き出すのだろう。



ベランダの写真の予定





4月13日(火)
活動再会!

早起きしてイースターで出来なかったことをする
英国国際教育研究所に連絡。5月のワークショップの件を確認。そしてRegent Park校に座布団を返しに行く。駅はBakerloo。シャーロックホームズの住んでいたとされる町だ
いつもとは違う27番のバスに乗る。こういうことが新鮮だ

Camdenで書類のコピーをとって、写真を現像に出して、途中で中華の安いランチ。ダックの肉と野菜入りNoodle Soup(これがいわゆるラーメン)が£3.80。銀行でトラベラーズチェックを現金化する。
払っていなかった家賃の支払いのためである。
家に戻って早速大家さんに支払いを済ます。”忘れていたの?”と言われたが、笑っていたので怒ってはいないだろう

Actors Centreに行って、先週のClassical Comedyの続き。都合で私は大分送れて着いたが、着いた途端に休憩になった。先週相手役をしてくれた金髪の長髪青年が寄って来て、すぐに練習に付き合ってくれた。助かる。私は台詞こそ覚えてはいなかったが、今日は内容をほぼ理解している。台詞あわせもスムーズにいった。
休憩後いきなり私たちの出番。焦ってやったが、そこそこいけた。特に台詞を忘れた時の”間”ははまった。ヨシヨシ!
他のメンバーはさすがに長い台詞を暗記して台本を話して練習している。もうほとんど発表会だった。特にナーバスな男女の喧嘩の芝居を演じた二人が相当上手い。迫力も凄かった。
他の人たちもさすがにベテランらしさを感じる。
先生が何度も何度も助言をして、同じ発表に3回も4回も時間をかけている。レッスンとはいえ丁寧な作業だ。プロ俳優のための、こういうレッスンがあることはこの国の演劇の魅力である

最後に、もう一度私に順番が回ってきた。思いっきりやることに決めていた。
あわてて舞台に登場する場面を部屋のドアの外から始めた。この役は自分の出番を間違え、着替えもままならぬうちに登場してしまうというお馬鹿役者の設定だ。
つまりこれは笑劇(ファルス)である。繊細な演技より、はっきり笑いだ
ドア外から息を切らして走り込んで来た。一気にみんなの注目を集めた。ゼイゼイしながらも威厳を保とうとして台詞を朗々と語りだすが、肝心の台詞に詰まる。
さっきよりも受けた。ヨーシ!
この役の味噌は、プロンプターに台詞を聞いたり、相手役に突っ込まれたりしてオロオロする役回りなのに、恥ずべき時に変に堂々としたりしている落差が面白さである。つまり空威張りをどう面白く表現するかである。
私は”間”を取ったり、気取ってみたり落ち込んだりと色々とやってみた。ドカンドカン受けた。ワーイ!
笑いだけだったら誰よりも一番だった。先週よりも大きな拍手がきた。先生が”Thank you. Well done.”と嬉しそうに握手をしてくれた。
ヤッター。日本の喜劇人の面目躍如である
見知らぬ国の稽古場でこれだけ思いっきりやって、笑いも取れれば言うことなしである。自分でも嬉しくなってしまった



Actors Centreの写真の予定



Leicester Squareで「Complete History of America」のチケットを手に入れた
ロンドンで8年位前からヒットしている小芝居に、3人のトリオだけでシェイクスピアの全作品をあっという間にやってしまうという作品がある。
その人気シリーズにあやかって、アメリカの全歴史と聖書の世界全てをあれっという間にやってしまえという芝居もあるのである。出来ればアメリカの歴史の日を観たいなと思っていたら、丁度今日火曜日に上演しているのを知り飛びついた

芝居の開演まで時間つなぎ。まずはキートンの写真集を映画専門店で2冊注文した。水谷さんとラサール石井くんのリクエストである
Actors Centreに戻って、春巻き(こちらでもSpring Rollと言う)とピザで軽食。夜はBar TimeなのでBeerを1本。
さらに余った時間でSOHOや劇場外を徘徊する。先日のイタリアンレストランも確認したし新しく変わった劇場の上演作も確認した。
そういえば「レ・ミゼラブル」は長年上演していたパレス劇場から移動した。私としては目印になっていたので、急にレパートリーが変わっていたのには驚いた。

夜8時、空はまだ薄明るいが「Complete History of America」が開演。
トリオ漫才のようなこの芝居は、圧倒的に言葉が分からない。スタンダップコメディとほぼ同じ。情けないが私の選択ミスだった。
しかしお客さんは大爆笑の連続だ。
1幕。コロンブスがやってきたり、インディアンがいたり、ワシントンが大統領になってリンカーンが暗殺されてと簡単な英語と見た目で分かることだけしか理解できなかった。つまりここにもほとんど書きようがない

2幕。色々あったがお客さん質問コーナーが一番受けていた。本当に客いじりが好きな国だ。また客が積極的だ。どんどん質問がくる。”どの大統領が1番良いですか?”という質問には答えられないらしく、怒っているのが可笑しかった。現在のイギリスがアメリカ寄りだというような質問には”あんたはフランス人か?!”と際どい答えも。でも受けるんだけど。質問コーナーになったら突然リーダー格の人が黙って、若い2人が喋りを受け持っていた。”得手・不得手はあるもんなのだなあ”と自分にも置き換えて考えていた。



まだ写真なし!予定は・・・これがPicadilly Circusの駅のまん前にある本日観たCRITERION THEATRE。客席数は若干少なめの中劇場。だからマイクなしでも役者の声は通る。オケピがないように思ったので、ここもストレートプレイ専門なのだろう



夜メールをごっそり片付ける
送受信したら、迷惑メールもごっそり届いていた



4月14日(水)快晴。気温も上昇
各方面に電話。
今週末の教会のパフォーマンスのことも準備しなくては

そしてアカデミックなNational Theatreに明日のマチネの予約を、小劇場の雄Gate Theatreに日曜日のチケットの予約を電話でした。
当たり前のことのようだが、これは進歩である。ロンドンに来たときには電話での会話は全く出来なかったに等しい。顔が見えないから、とにかく緊張してしまうのだ。必ず”日本人ですのでゆっくり分かりやすい英語でお願いします”と前置きするものの、なんとか目的は達することが出来る。劇場までの行き方なんかも簡単なことなら聞ける。
子供のような進歩だが、まあ自分を認めよう

フランセスキング英語学校に来週の予約に行く。来週1週だけ少人数のクラスを受けたいのだが、どうも以前のレベルのクラスが満員らしい。
顔見知りの受付担当の先生が来て、一番最初に受けた一ランク上のクラスを受けろと言う。あの時の恐ろしい場面が浮かんで遠慮したのだが、”今の君なら大丈夫だ”と、まるでこちらのことを分からずに勧める。でも実に親身な感じで説明してくれる。実は私が通っていたランクのクラスが、現在レベルが低いのだそうだ。分かったような、分からないような。ランクに変化があるのだろうか?
結局”来週月曜日の1時間目のランク上の授業を受けて駄目だと思ったら、やめなさい。料金は取らないから”と良心的なことを言われたので、納得してそうすることにした。出来たら、もう1週間だけ英語の授業を受けたい。

Fotnaum & Masonで紅茶を買う。明治座5月公演の楽屋見舞い用だ。
日系の英国内バスツアーの斡旋会社に行く。猫好きなら知っている”ウィスキーキャット”の地を訪ねたいのだが、”うちでは扱ってません”と慇懃無礼に断られる。ちょっと嫌な感じだった。
National Gallery辺りを散策。2年前の記憶だけを頼りに歩いたが何とかなった。さらにLeicester Squareの辺りまで足を伸ばす。市の中心部の地理に一つ詳しくなった

Camden Townの一つ手前のMornington Crescentで降りて散歩がてら一駅歩いてみる。ところが馬鹿に近い。いつもCamdenの町で書類のコピーをしに来ていた店や雑貨屋はほとんどMornington Crescentの駅の側だったのだ。
昨日今日と、ロンドン滞在3ヶ月目にして遅ればせながら市内地理を学習している
何度か通った大衆食堂で、例のチキンカレーを食べる。大衆的に美味い。チキンの多いこと。値段も安い。ただ、いつもスプーンが出てこない。フォークで食べているのだが、今度食べる時には勇気を出してスプーンを頼んでみよう。安い料理を注文しているので、どうも気が引けてしまう

また一つ電球が壊れた。これで引っ越してから4個目。
日本のように回転ねじ式ではない。小さな突起を独自のコツではめるのだが、それが分からず汗が出る。間接照明の電球だったので高い位置にあって、手探りだけで処理しようとしたが結局無理だと判断。梯子を使ってやっとはめた。
電話といい、電球といい、こういう普通の生活のことが苦手だったりするのが、異国生活なのである。

ところで、写真屋が写真の焼き増しを間違えているのに気づく。全然違う写真を3枚も焼き増している。焼き増し代は安くない。明日交渉してどうなるだろう。こういうのも生活だ。まあ、悪気でないことは分かっているのでほどほどにいこう

Actors Centreでやっていたコメディショウを観る。
インプロ(即興)と聞いていたので悪い予感はしたのだが、果たして予想は的中した
芝居ではなく、客のリクエストを聞いたりして展開を決めていくスタイル。といっても客が身内らしき人が多いようで半分馴れ合いになっている。
まず始まってすぐにスタンダップコメディ並みのスピードで進行役が喋ってくるので参った。最初は4人組の装置も何もほとんどない即興コントのようなものなのだが、出来上がりがお粗末である。マイムや演技の変わり目も雑。お笑いに憧れている勉強したての役者さんといった感じ。ジブリッシュ(でたらめ語)も出てきたが、私が見た授業の時の方が上手だった。
次にソロパフォーマンスの男。動きや喋りに落ち着きがない。客にお代を頂戴するのはいいが、いくらなんでも頂戴し過ぎである。結局決めがないから芸が雑である。客いじりした後の処理が計算されていないから笑いが散漫になる。
熱中してやってはいるようだった。多少上がっていたのかもしれない。汗をかいているところは清水宏をちょっと思い出すが、芸のレベルが違い過ぎる。
結局イギリスでも下手は下手である。
パンタロン同盟ではアドリブのように見せて、ほとんど計算された展開が多い。特に石井はそういう演出が得意だ。さんまさん譲りかな。
星屑の会の水谷龍二さんは昔から”アドリブは台詞のように、台詞はアドリブのように”というのが口癖だった。
彼らにもそのことを知ってほしいくらいだった
お題頂戴の途中でよせばいいのに私にも指名してきた。正直、その前の人たちの言っていることが全然分からなかったので”I have no idea. I don't understand.”と答えたら、最初は彼もビックリしていたが、すぐに”素晴らしい。彼は神だ”とか何とか言って誤魔化していた。お客もそれで笑っていたから不思議だった。
別に恥ずかしくはなかったが、ちょっと困った。

結局1時間の休憩で帰ってきた。£4の会員料金だったから、勿体なくはないでしょう

写真の整理。階段の踊り場の額にも数枚さらに貼り付ける


大変だ!メールのス受信が出来なくなった。ユーザー名とパスワードが突然使えなくなったようだ。原因が分からない。さあどうしよう!?



4月15日(木)今日も良い陽気
メールはまだ回復せず。また日本と電話とFAXのやり取りが始まった

WaterlooのNational theatreに「The permanent way」のマチネを観に行く。どうやらイギリスの鉄道の話らしい。情報誌Metroでは三ツ星最上ランクの作品だ
平日の昼間だけに劇場はお年寄りで溢れている。日本の商業演劇と似ているが、決して団体さんではなく、それぞれ皆さんお芝居が好きなことが伝わってくる。
日本の新国立劇場の中ホールぐらいの規模の劇場。造りは非常にモダンである。私の席は前から7番目のど真ん中。素晴らしいくらいに良い席だ。
2時半舞台開演。スライドか絵だと思っていたスクリーンの中の汽車が突然煙を出して走り出した。精巧なCGアニメのストップモーションだったのである。素敵な滑り出した。ここまでは良かった。

さあ舞台が始まってみると言葉の洪水だった。登場人物全員が正面芝居で喋る喋る。会話劇のスタイルではなく、客席に訴えかけるモノローグの連続。朝のラッシュアワーに新聞を読んでいる人達だということは見た目で分かるが、内容は10%も理解できない。
単語はそれぞれ聞き取れたりするのだが、文章が分からない。動詞が聞き取れないのだろうか?
それにしてもほとんど朗読劇のような展開だ。
途中で分かり易い話し方をする女優さんがいた。彼女の息子は法律家で、ある日彼が列車の事故に巻き込まれた。電話があって病院に駆けつけたが、息子は死んでいたという内容だった。それから他の俳優さんからも何度も事故の具体的な話が出る。笑いも多かった前半に比べて話は深刻になり、これは鉄道の役割と責任を訴える芝居だということがやっと分かった。

話は少し変わるが、芝居の内容がほとんど分からない時に人は何を考えるのだろう?私はというと”これから何を食べよう”とか”日本に帰ったらどうしよう”とか、全然芝居と違うことを考えている。日本の芝居でもたまにそうなるのだから、ましてや言葉で勝負の英語の芝居となると思考が迷走する。さすがに眠くはならなかったが、本音で言うと全然舞台に集中できなかった時間がかなりあった。

また話は変わるが、今日初めてイギリスで芝居中に無音になるのを見た。先の息子が死んだお母さんが話の途中で嗚咽しかけて舞台奥に去る。悲しい場面だ。さすがに誰も何も言わない。10秒以上も沈黙が続いただろうか。やっと次の役者が静かに語りだした。この10数秒が私にはやけに驚きだった。他の観客は何を考えていたのだろう?

CGアニメで列車がクラッシュしたり、モノローグを細かくコラージュして変化を出したり、朝の場面ではフィジカル系の演劇を取り入れていたりと演出的には新感覚なのだと思う。
でも私が出演者だったら、仕事が単純過ぎて面白くないなと正直思った。台詞を語るだけならさほどの労力は要らない。でもこれが三ツ星なのである

終演後劇場の周りを探索してみる。この辺りは夜景スポットのお薦め場所だとガイドブックに書いてあった。


National Theatreの写真の予定


この劇場の隣はNFT(National film theatre)で、映画の看板やらがずらずらと飾られている。どうやらこの一角はロンドンの新しい芸術ゾーンなのであろう。「七人の侍」の三船敏郎の看板も、その勇姿を連ねている。NFTの前では古本市をやっていた。場所柄か芸術関係や写真集が多い。衝動的にチャーチルの伝記写真集を買ってしまった。
£5也。チャーチルなら知っている。字よりも写真が多かった。以上の2点が購入理由

帰路Mornington Crescentで途中下車。2ヶ月前に寄った中華のTake outを思い出し、五目チャーハンを注文。チキンとマッシュルームのスープも頼んだのだが、出てきたのはチキンとマッシュルーム炒めだった。私の”Soup”が聞き取れなかったのだ

大家さんに嫁さんが撮った、この家の猫アリスの写真を見せる。”Lovely”と眼を輝かせていた。すぐに焼き増しを約束した。彼女は息子さんに新しいカメラを買ってもらったが、使い方をまだ把握していないのだそうだ。




  [トップ][プロフィール][近況報告][舞台歴][海は友達][掲示板]
[こんなもの描きました][こんなもの書きました]