「アリゲーターダンス」2

劇団ウォーキングスタッフに客演。作・演出は和田憲明
在日外国人たちと吹き溜まりのような場所で暮らす日本人の、 どちらかと言えば社会の底辺で蠢く人たちのハードでパワフルで ホットな物語。
演劇関係者の中ではこの年の話題に結構なった芝居。
事実この約2年後に和田憲明は読売演劇大賞を受賞している

私の役どころは哀しい中国人教師。生真面目さが災いして 中国人マフィアに殺される羽目になってしまう。日本にさ え来なければこんなことにならなかったのにと、物語の前 半部分で喜劇的な面も見せるだけに、余計に可愛そうにな ってしまう人物だった。私は外国人をやると割りと評判が 良いようだ。このときも水谷さんに「おまえの哀しい中国 人は似合ってるな」とリアクションに少し困るような誉め られ方をしました。

でもそれにしても、和田憲明の稽古の仕方はハードですよ。肉体的にも 精神的にも。”ギリギリ”とか”生”とかいう世界が好きな演出家なの で、毎日新鮮さやエネルギーの要求は高くなっていきます。相当本気の テンションで芝居しても「今日は良かったですよ。でも明日はもっとい けますよね」とか平気で言ってくるので大変ですわな。しかしその辺の リアルな芝居作りと骨太な物語世界に信奉している男優陣がかなりいて 、結構男気のある縦社会を作ってたりするんだよね
このときの共演者で黒沢清監督の映画「ニンゲン合格」で主演している西島 秀俊くんなんかもその一人だ。稽古場でも楽屋でもクールでストイック なのに眼は静かに燃えてるってタイプの役者だった。(急に思いついた が、アメリカ映画で言えばエドワード・ノートンって感じだろうか。楽 屋ではいつもゲイリー・オールドマンのことばかり誉めてましたが)
このときちょっと困ったのは裕木奈江ちゃんだった。その日の感情で芝 居がガラッと変わってしまうので、本来性質の良い中国人女性の役であ るべき筈なのに、どう見ても悪女にしか見えないので、お人好しの哀し い中国人教師役の僕としては本番中に対処に困ってしまったりしたので あります
TVドラマ「ポケベルが鳴らなくて」で緒方拳さんと揉めたらしい噂も 納得がいったような気がしました
でもですよ。自分の意見を軽くひっくり返しますが、どんなに演出家の 罵声のようなダメ出しを受けても、その場は落ち込んで、次の日にはあ っけらかんと楽屋入りして来る(少なくとも僕にはそう見えた)のには ある種の女優根性を見た気もしましたけど。でもって、また意見をひっ くり返しますが、私にはそれが空恐ろしいことなんですよ

付け加えますと、このウォーキングスタッフの中心俳優の平良政幸くん は、現在石井光三オフィスの役者仲間であります


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↑左から西島秀俊。私。裕木奈江。3人とも家族のために出稼ぎに来た中国人。寄る辺ない日本で中国人同士仲良くすればいいのに、若い2人は喧嘩ばかりしている。困ってオロオロするオッサン教師。今この写真を見ると、この情けない髪型がいいですね。それとこのときの衣装は実家の父の昔の服を借りました。


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