お待たせしました、ロンドン日記です
これはその前半3日間の出来事
かなり細かく書いてしまったので長くなりました。そのぶんロンドンに行こ うと思っている方のためになる情報も混じっているでしょう。まあ、気楽に 読んでみてください

2002年2月22日 (金曜日、ここロンドンでも金曜日、当たり前か?)

ハーイ、私は今ロンドンにいます。本当にイギリスのロンドンにいます。 場所はスローンストリート(以下Sloan St.と略)とキングスロード (King's Rd.と略、他も同様)の交叉したSloan Square(以下Sloan Sq.) にある、その名もSloan Square Moat House Hotelの317号室。昨晩より ここに泊まっています。目の前にバスロータリーのような広場があって、ホ テルの正面入り口を出ると
Peter.J 右手にピータージョーンズのデパート。右の写真のデパートですねえ。その左を走る道がKing's Rd.です。ここは大きなデパートのようです。
ちなみにこのSloan St.の近所ではハロッズのデパートが有名です。
RoyalCourt そして左手にフリンジ(小劇場系)では大御所のロイヤルコートシアターが見えます。 日本の小劇場の親玉みたいな存在らしいです。下北沢の本多劇場をもっと 格上げしたみたいな感じでしょうか。昨日の夕方このホテルに着いた時に 目に飛び込んできた「ROYAL COURT THEATRE」の赤くて渋いネオンが実に カッコ良かったです。
ロンドン経験者ならすでにお気づきかもしれませんが、私は立地条件とし てはかなり良い場所にあるホテルに泊まっているんです。
でも正直言ってここはスタンダードクラスのホテルですので、お値段はリー ズナブルです。そして設備はそれに比例して、というより私の想像以上に 芳しくありません。外観では分かりませんでしたが、内装はかなり古いで す。ま、それがロンドンらしいのでしょうか?

Bed&D
狭いツィンの部屋を無理に広めのシングルの部屋にしたようなので、 なんか家具の配置が不自然です。これがベッドと小さな机に鏡

ChairR そして、机の右手に小さなクローゼットのような物置があって、そのさらに横に、ご覧のような椅子があります。うーん、この映像で分かってもらえるかどうか?写ってない所に変な空き空間があり、鏡の向かい側の壁上方にTVがくくり付けられているのです。

一番驚いたのはバスルームにはバスタブがありません。洗面所とトイレの 奥にガラスのドアで仕切られた電話ボックスのようなシャワールームがあ るだけです。
ShowerR ほれ、こんな感じ。これじゃ昨日全日空のガイドさんが言っていたように”バス タブの水を溢れさせて、ホテルに高額な弁償クリーニング代を請求されな いように”なんてことをしたくても出来ません。やっぱり簡単な旅行パン フレットだけじゃここまでは分かりませんが、値段が安いぶん我慢です。


でもそんなことは全然気にならないほどロンドンの町は魅力的です。 ヒースロー空港を降りてバスから初めて観たロンドンの街の印象は、まる で絵に描いたようなヨーロッパでした。陳腐な言い方ですが、ディズニー ランドのお土産売り場のようでもありました。高層ビルはほとんどなくて、 レンガと石造りの伝統的で美しい町並みです。嬉しい興奮で思わず叫びそ うになりました。いやきっと小さな声になっていたはずです。一瞬にして 私はロンドンが好きになりました。こんなところにちょっとでも住んでみ たい。それがロンドンの第一印象です。

焦らずに話を戻しましょう。この日記は昨日、日本を離れたところから始め なくてはいけません。ついでにこの”ですます調”もやめます。やめるよ。


2月21日(木)
昨日2月21日に成田を離陸。ほとんど初めてに近い海外の一人旅。かなり 不安ではある。最近イギリスがアメリカとの地下核実験の協力に賛成したの も不安の種の一つである。無時に飛んでくれ!帰りもな!
私の心配をよそに全日空機はあっという間に日本海を抜けて、寝ている間に 凍てつくシベリアを超え、2度目の食事を終えたらスカンジナビア半島の 雪原上空を飛び、ドーバー海峡を渡ってはるばるというか、もうというか 12時間の空の旅は過ぎた。日本の昼前に成田を飛び立って、ロンドン時間の 午後2時過ぎにこちらに到着した。
機内では結婚した娘さんがロンドンで待つらしい初老の夫婦と隣り合わせる。 この人たちは、特にだんなさんが時間を持て余して酒を飲んで陽気になった り、足の痺れを切らして後部座席の方でうろうろしたり忙しい。その人を観 察しているだけで結構気が紛れた。
背は小さいが、優しくて可愛いフランス人のスチュワーデスさんがいて、彼女 が機内サービスに来るたびに声をかけたりかけられたりしてこれも気が紛れた。 それにしても機内で2度も食事は多くないか。なんてぼやきながら、「チキン オアビーフ」と言われると、貧乏人根性でついビーフばかり頼んでパクパク食 べてしまう。俺は養殖の豚か!

機内の退屈を紛れさせてくれたのは、ほかに「地球の歩き方/ロンドン篇」と 電子辞書。昨日買ったばかりの電子辞書を空の上で使い始めた。新機能・新デ ザインのキャノンの製品。ちょっと高かったが、今後の使い方を考えて奮発した。 これがゲーム感覚で面白い辞書だ。単語テストは遊べて役に立つ。

さあ、半日の空の旅を終えてロンドンの表玄関ヒースロー空港に到着。ここの 入国チェックは厳しいと「地球の歩き方」に書いてあった。ただでさえ 英語を使うだけのことでも緊張しているのに、どうしよう。だが以外に も、パスポートと私の顔を見比べて2つ質問されただけで、あっけなく入国審査はパ スした。そんなに安全な顔に見えるのだろうか。もっと質問してくれ!実はドキドキも したいんだ。下手な英語も使いたいんだ。「Sight seeing」と 「4days」だけじゃイヤだ。物足りない。駄々をこねようにも後に並ぶ人に 押し出されて、荷物受け取り場所まで表示に従って通路を歩き始めることになった。
途中小銭をくずすのに免税店でワインを買っていたら集合に遅れた。お出迎えの全日空 ハローツアーのガイド女性が待ちくたびれた顔をしていた。こういう私流の時間の使い方を人は”小宮の身勝手”と呼ぶのだろうか?

ロンドンの町は前にも書いたようにまるでアミューズメントパークを思わせて、 他の近代都市には見られない魅力に溢れていた。ホテルの部屋が思ったのとは様子が 違ったことなどちっとも気にならず、ハイな気分で荷物を解き短いロンドン生活を 快適にするためのMY ROOM作り。
それから無事ロンドンに到着したことを家族や事務所に知らせたりしていたら日が暮れていた。

※ちょっと電話情報 私は今回旅行パンフレットに宣伝されてた無料貸し出しの国際携帯電話を借りてきたの だが、はっきり言ってこれは駄目だ。日本に電話しようがロンドン市内にかけよ うが一律360円/分である。これでは高い。後で知ったことだがロンドン在住の日 本人の間ではインターナショナルテレホンカードが注目らしい。これはアメリカの 電信を経由する格安な方法だそうだ。私はそのカードを今回は試すことは出来なかった が、安いうえに街角の公衆電話でも便利なのでロンドンではクレジットカードを含めてカードがおすすめである。

そして夜。日本人女性で、ロンドンで芝居の情報収集しているWさんが午後7時に迎えに来てくれた。彼女はロンドン歴の長い芝居製作会社の人である。私がイギリス留学を考えているのを知った明治座「居残り佐平次」のプロデューサーからWさんを紹介された。 今回の旅行が出来たのも、そもそもロンドンに下見に来ようと思ったのも、全てはこ の方のお陰である。

彼女の案内で地下鉄でピカデリーサーカス駅へ向かう。
S.Subway これが地下鉄歴100年以上を誇るロンドンの地下鉄。Subway じゃなくて Under Ground とか Tube と呼ばれている。地下鉄の坑内は Tube と言われるように本当に筒状で、日本よりかなり狭い印象だった
車内の吊り革が面白い。棒の先に玉の付いた肩叩きのようなのがいくつかぶら下がっている。これに捉まるらしい。”吊り玉”とでも言おうか。やってみたがどうも変な感触だった。
S.Syani この画像の車両には吊り玉はない。でも日本の地下鉄より狭いことは分かってもらえると思うんだけど。とにかく車内は白人・黒人・黄色人種と人種のるつぼだ(街へ出てイスラムやインド系の人も多いことを知った。)。
初めて乗るロンドンの地下鉄に興奮してキョロキョロしている間もなくWさんは足早に進む。行く先は劇場街があるウェストエンドの近くに住んでいるイギリス人の 女性演出家の家である。名前はグレン・ウォルフォード(Glen Walford)。 8年程前サンシャイン劇場でやった「ヴェニスの商人(私の舞台歴参照)」に出演 したときの演出家である。イギリスで伝がある人と考えたらグレンしか思いつかなか った。逆に言えば彼女の存在を思い出せなかったら留学するぞという意思が萎えてい たかもしれない。一応その舞台では私は印象的な演技が出来たと思う。平幹二郎さん 扮するシャイロックのたった一人の召使いラーンスロット・ゴボーというのが私の役 だった。単なる道化で終わらないようにシェークスピアの戯曲にはない登場場面も増やしてもらい、随分と役得をした思い出がある。日本ではいわゆる悪役に近い印象のある金貸しシャイロックの数少ない味方となって演出効果にも貢献できた役だった。そのぶん稽古場ではどの俳優よりも実験的に色んなことをやらされた。途中何度も『俺はあんたのオモチャか』と言いたくなったが、あのときの苦労がその本番でも、そして今回も役に立つことになったのである。

Wさんに連れられてピカデリーサーカス周辺を歩く。Wさんの言によれば「渋谷って 感じかな」ということらしい。確かにネオンも人通りも賑やかだし、若者も多い。芝居 のハーフプライスチケット売り場のあるレスタースクエア辺りもざっと案内される。 ニューヨークにもある販売方法だ。
そしてほとんど繁華街のど真ん中、インド料理屋の隣に彼女の家(マンション?)は あった。セキュリティのしっかりした大きくて古い1階のドアを開けて中へ入ると、 昔のアメリカ映画に登場するような半らせん階段の2階にグレンの金髪が見えた。8年ぶりぐらいだろうか。”It's been a long time.(久しぶり)”と挨拶して中に入る。 Glen&Me 広いワンルームの部屋に柔らかそうなソファがいくつも並び、暖炉には暖かそうな火 が燃えていた(実はこの暖炉はガス式なんだけど)。こんな写真の感じですねえ。らせん階段、ソファに 暖炉とくるとやっぱり異国情緒が増してくる。グレンが赤くて温かい飲み物を薦めてくれる。ホットワインだそうだ。一口飲んでイギリス気分がさらに高まる。 Wさんの通訳を介して、今年の文化庁の在外研修の試験を受けて来年イギリスで演劇 の勉強をしたい旨を伝える。Wさんから事前に説明しておいてもらったのだが、改め て「どうしてイギリスで勉強したいのか?」と聞かれる。これについては私も多少の 迷いはあった。英語圏の国に行きたい事は間違いない。今から全く新しい外国語を覚えようなんて怠け者の私には大それたことだ。そこでニューヨークにするかロンドンにするか考えた。実はニューヨークにはコント赤信号の付き人をやっていた後輩が、あの有名なアクターズスタジオにいるのでそこなら勉強場所も伝も見つけ易い。でもニューヨークで教わるとなると、やはり映像的な勉強の方が向いている。そもそも今回の留学を思い立ったのは、舞台人としての自分を見つめ直したいからである。
私はTVの仕事もやっていくが、やはり舞台の役者の仕事を主にしていきたい。それには、より演劇的でphysicalな勉強をしたいのでイギリスで学ぶ方を選んだと伝える。
3人でその後も色々と話し合う。RADA(王立演劇アカデミー)やその他の演劇学校は入学がかなりハイレベルのようだ。それに英語力も問題になる。インターネットで調べたRADAのサマースクールの入学案内ガイドには”Fluent,confident knowledge of the Enlish language is essential”(流暢で確かな英語の知識が必須である)と書かれていた。これでは実際問題はほとんど無理に近い。校長先生が日本贔屓ということもあって、 RADAには日本人向けの短期コースもあるのでそこなら受講は可能だ。 そのほかにもGlen はプロの俳優のための民間レッスンを開講しているアクターズセンターという学校も紹介してくれた。ホットワインを飲みながら、夢を実現させるための話し合いが続いた。
途中で突然グレンがパソコンを叩きだした。私への推薦状を書き始めてくれたのだ。 それを添えて、各演劇学校に私自身で書いた入学希望の手紙を送りなさいという。 今回の旅の大きな目的の一つはこの推薦状をもらうことにあった。初日の夜にいきなり こんな物をもらえて、嬉しいやら信じられないやらだった。

そのあとは、グレンが明日の朝早くから地方へ出かけるという話を聞いていたので 早めに遠慮して彼女の家を出る。
昨日まで東京にいた自分が、今ロンドンの中心街にある女性演出家の家にいたのも、 彼女の推薦状を手にしているのもなんだか現実に思えない。不思議な興奮である。 そのまま真っ直ぐホテルに戻りたくない気分に加えてお腹も空いていたので、Wさんと中華街の店に入る。酒と食事をしながら、明日の打ち合わせなどを話す。Wさんは 明日は仕事である。それぞれの学校に電話連絡だけは取ってくれるというが、行動は私一人でしなくてはならない。頑張ろう!

食事の後、ロンドンのタクシーは安心だとWさんが言うので、お言葉通りにタクシーに乗って帰る。それにいきなり初日に一人だけで深夜の地下鉄に乗るのも怖かった。ホテルまで20分ぐらい、ロンドンの街は東京のネオン街ほど明るくはなかった。きっと公園なのだろうと思われる辺りは真っ暗で、「スリーピーホロウ」の映画のような光景だった。 タクシーはチップも入れて10ポンド。Wさんに言われた通りの値段。ホテルに着くと、ちょっとのビールで今日はもうぐったり。12時前に床に入る。
ちなみに中華料理屋ではビールと水割り、スープにチャーハン、炒め物、後1品。こ れで一人20ポンドというのはけっして安くはない値段だ。この日のレートは1ポンドが202円ぐらい。ロンドンの物価を想像してみてください。


2月22日(金)
これも時差ボケでしょうか?えらく早起きしてしまいました。6時前から 眼は覚めていたんですが、7時まではベッドでまどろみ早々に朝食。トー ストや卵料理のイングリッシュブレックファースト。同じパックツアーの 男性に会って初対面ながら日本人同士ということで一緒に食事。彼も一人 旅で美術に興味があるらしく、ナショナルギャラリーを絶対見たいと言っ てました。部屋がツインじゃないのは約束違反だとも言ってました。
部屋に戻ってシャワーを浴びる。シャワールームが電話ボックスみたいに 狭いのと天井に固定式のシャワーがあまりに高いのとで、お湯の温度調節、 出し加減、浴び加減が難しい。ホース式にしてくれよ!こんなのを使うの が初めてなので今朝はかなり苦戦した。
いきなり冷やっこい水をかぶったりして叫び声をあげている裸の私の姿を 想像してみてください(^0^) 9時を回って買い物とトラベラーズチェックの両替(EXCHANGE)買い物は 電話のモジュラージャックのアダプター。イギリスと日本は形が違うのだ。 こっちのは日本のジャックを押しつぶしたような感じ。ちなみにアメリカ と日本は同じだそうで、ピータージョーンズデパートの電気製品売り場で UK⇒USの物を購入した。店内は日本に比べると実に簡素。ゴチャゴチ ャしてないので分かり易い。
トラベラーズチェックの両替はこのホテルだと手数料が馬鹿にならない。 50ポンドが47.5ポンドぐらいになっちゃいます(実は確かめ 損なっちゃいました。お恥ずかしい)そこで今日はホテルの真向かいにあ る銀行のような(これも近くの小さな銀行に行ったら、ここでは両替でき ないからそこへ行けというような事を言われたので)ところへ行ったら、 50ポンドは50ポンドのままでした。しかもコインにも分けてくれまし た。 CashCこれで地下鉄にも乗り易いし、公衆電話もOKだ。

ちなみにロンドンでは左写真のようなキャッシュコーナーが街角のいたるところにあって、大勢の人が利用してました。相当な数がありましたから、これも一つのカード社会の表れと言っていいのではないでしょうか
一度ホテルに戻ってWさんの電話連絡待ち。アクティングのレッスンなど が見学が出来るかどうか調べてくれてました。
その待ち時間にノートパソコンを取り出しロンドン日記をつけ始める。イ ヤー、たった1日で書くことあり過ぎる。

※ いやいや、やっとここで冒頭の書き出しに戻るわけである。
でもって

Wさんから電話が入り俳優教室を開講している2つの会場を紹介された。プロの俳優用のアクターズセンターと、日本でいうカルチャーセンターにも似たシティリットという場所。2つとも昨晩歩いた場所に近い。
アポも何もないが、とりあえずはそこを目指してGO!今日は完全なる単独行動である。大丈夫だろうか、と思うより行動が先に出ていた。ここまではるばるきたのだからと思えば、日本では考えられない積極性も出るというものである。
ホテルを出て、間近のSLOAN SQUARE駅から地下鉄へ。 S.wicket 便利でお得な1DAYトラベルカードを購入。ロンドンではこれ絶対お得で便利!
そしてこれが地下鉄の改札口。日本と違うのはカードの取り出し口がずっと手前にあること。つまり挿入口のすぐ近くに取り出し口があるので日本の改札のようなスピードで歩くと出てきたカードを取り損ねてしまうので注意!
昨日とは違う路線乗換えでピカデリサーカス駅へ向かう。最初は不安だったが案外スムーズに乗り換えも出来た。
S.yokokan 表示をよく見て、地下鉄路線図で電車の行き先とかをしっかり確かめれば間違いはない。例えばこんな表示看板

S.tatekan それからこんな表示もあるよ。さらにこの地下鉄の快適さについて言えば、 ほとんど時間をあけずに次の電車が来てくれるので待ち時間でイライラすることもなくて早い。本数が多いからか、ラッシュの時間帯でも日本のあの状態とは雲泥の差である。さすが地下鉄歴100年。ロンドンの地下鉄は使い易い。

ピカデリーサーカス駅に到着。まずは広場のエロス像をカメラでパチリ。これは普通の観光客と同じだ。それから地図で方向性を確かめる。この街の東西南北を早く理解したい。
ざっと把握したつもりになって歩き始めた。最初に昨日行ったレスタースクエア(Leicester Sq.)のハーフプライスチケット売り場を確認。
「ノイゼズオフ」をやっている。これは何年か前に私もやったことのある芝居だ(舞台歴参照)。これなら英語がちゃんと聞き取れなくても台詞は分かってる。是非ともこれを見たいなあ。チケットはまだ買えそうだったので、先に俳優教室を目指す。
ところがこれがなかなか見つからなかった。ロンドンという街の道路は碁盤の目のようになっているわけではない。全ての路に名前はついているが、交差の仕方はかなり複雑である。慣れない地図と首っ引きで行ったり来たりした。 lemize それでもなんとかシャフツベリー・アベニュー(Shatesbury Av.)とチャリング・クロス・ロード(Charing・Cross・Rd.)の交叉点というのを見つけ、「レミゼラブル」の見知った看板をようやく捜し当てる。そこを左手に見て、ちょっと(この”ちょっと”という感覚を地図上で掴むまでに随分とかかった)曲がってTower St.があった。ここにあるはずのアクターズセンターを捜すがこれが全然見つからない。まるで場違いな感じの高級感溢れるビルのロビーでジョニー・デップによく似たお兄さんに場所を聞くがさっぱりである。何度もそこらをウロウロしたが皆目見当がつかない。こうなると今の私にはWさんに電話するしか方法がない。公衆電話をかけようとしたが、さあ、今度はコインの使い方が分からなかったり、やっと相手が出たと思ったら留守番電話だったりで七転八倒である。自力で捜すべく元のTower Street.に戻ってみる。さっきから何かの裏口だとばかり思っていた場所に、かなり目的場所に近いらしいとても小さな住所表示をやっと発見した。重たいそのドアを恐る恐る開けてみると、どうやらそこはどこかの劇場の舞台袖の通用口らしかった。いかにも舞台スタッフらしき人にアクターズセンターの場所を聞く。するとあっさり「Next closed door. 」と答えられる。確かめると、言われた通り頑丈なドアがすでに閉まっている。もちろん住所表示なんかない。 これじゃ捜せないわけである。
ActorsC1
これは別の日に撮ったその場の写真。右側の白い英文字のペイントがあるのが劇場楽屋袖搬入口。左側の大きなガラスドアがアクターズセンターの入り口。そこに番地が書かれてなくて、そのうえ頑丈な黒扉で覆われていたのだから分かりっこない。
そうか、今日の授業は終わってしまったのかと多少めげたが、気を取り直して、もう1つの学校シティリットを探す。

さっきより土地感覚に慣れてきて、Stukeley st.にあるCity Litは割と簡単に発見できた。大きな古いビルにCity Litの縦看板が出ていた。 CityLit
窓口でパンフレット(イギリスではbrochureという)受け取る。これで帰ってもよかったのだが、どうしても中を覗いてみたくなり2階入り口からビル内に入る。福祉的な講座もあるのだろうか、障害を持つ人がロビーに多い。何かの講座を覗き見たくて地下に下りる。パソコンやら美術の教室をやっていた。でも覗き窓からしか見ることは出来ない。
ロビーに戻って喫茶室で紅茶を飲む。1杯60ペンスぐらい。たぶん公共の施設なんだな、食べ物も飲み物もかなり安い。普通のパスタ類もメニューにあった。ただ味も素っ気もないがらんとした喫茶室なのが難点だ。
ここではトイレにも入った。欧米の小便器の常であるが、イギリスでもかなり便器が高い位置にある。小さな日本人の私たちはちょっとやりにくい事が多いが、ここのトイレはそれが極端で、もう少しでおチンチンが便器にくっ付きそうだった。きっと有薗にはここでオシッコは出来ないだろうとどうでもいいことを考える。
ここまでで諦めて帰ろうかと思った私の目線の先に、案内コーナーの表示があった。もしかしてと思って部屋に入る。何か演技レッスンの教室が見学できるかもしれない。電話の応対に忙しそうな中年おばさんがいた。それが終わるのを待って「I'm from Japan. I'm Japanese actor. Can you show me any acting lesson?」と聞いてみる。彼女は”へえ”という顔をして、”夕方5時過ぎの演技のレッスンなら先生が許可してくれるかもしれないからその先生に直接聞いてみなさい”とそんなことを教えてくれた。もちろん他の色んなことを喋りかけてきたのだが、結論として聞き取れたのはその程度である。でもこれだけで充分な収穫だ。日本にいたら出せないような勇気がちょっとだけ未知の扉を開けてくれた。こういう経験にはワクワクさせられる。やっぱりイギリスまで空を越えて来たんだという実感が、私の背中を押すのだろう。


さて5時半に戻ってくるための時間を潰すにはと考えて、すぐ近くに大英博物館があるのを思い出す。ロンドンといったら何はともあれ一度はおいでの場所である。気分も新たに意気揚揚と大英博物館を目指す。歩いて10分ほどのところにそれはあった。とにかくデカーイ!博物館もエジプトの石造りの展示物もデカーイ。
ActorsC1
写真にするとこんな小さいけど、本当は馬鹿でかい
というわけで、時間の制限もあるから有名なエジプトのコレクションに焦点を絞って見て回った。このコレクションは噂通り数もでかさもさすがである。ピラミッドの中や側にあったであろう建造物が目白押しだ。どでかい石の門もある。こんなものどうやって運んだのだろうかという思いと、そんなことまでしてよかったのかなあという当時のイギリスの破竹の勢いにも考えが及ぶ。
映画「ハンナプトラ」で棺の中に生き埋めにされる刑があって、その中に放り込まれる人食い昆虫の大きな石像もあった。説明書きを電子辞書の助けを借りて読むと、当然架空の虫ではあるが、これは当時のエジプトではかなりポイントの高い虫だったようである。

電子辞書はこういう場合に役に立つ。展示物や表示の情報を正確に知るには重宝だ。旅先で歩き回って使うことも多いだけに、出来れば軽くてコンパクトで内容の濃い辞書がおすすめだ。私もちょっと無理して最新式のものを買って良かったと思っている。

1階の展示コーナーで、王家のお墓に飾られていただろう黒石の動物の台座の上に、記念写真を撮ろうと子供が平気で座りだした。親も平気で写真を撮っている。これには呆れた。それはきっと神のお使いの動物である。まさか21世紀の子供の半ズボンの尻の下になるとは誰も思ってなかっただろうに。 2階にはミイラがいっぱいあった。クレオパトラのミイラもあった。王様や女王様だけでなく、何でもミイラにするんだな。

CatM
猫もワニも牛もミイラになっていた。どれもこれもひっそりと王家の墓で眠っていたのに、今は衆目の眼に晒されている。生きている猫だったら「見てんじゃねえよ」とばかりに「ニャーオ」と鳴くことだろう。じゃあクレオパトラは何と言うのだろうか?

ぐるぐる展示を回っているうちに、何故か近世の画家の作品で、風呂場の裸の男のおチンチンがやたら強調されているデッサンコーナーに紛れ込んだりした。最後はこれも何故か日本の秋田のねぶた祭りの大飾りを見て博物館に別れを告げる。
腹が減ってきたなあと思っているころへ、美味そうな匂いが鼻を突いた。玉葱をソースで炒めたようなその匂いの元はホットドッグの屋台だった。辛抱たまらず、買い食いする。2ポンド50。博物館の石のベンチに腰掛けて、ロンドンの寒空を眺めながら食う温かいホットドッグはそれなりに美味かった。遠いところまで来てるんだよなあという味がした。

予定の時間より早く5時少し過ぎにCity Litに戻り、3階のacting classの受け付けに行く。このCity Litでは本当に色んな授業を開講している。大きな科目分けで階が違うが、およそ習い事の類は何でもあるのではなかろうか。
順番待ちが二人。私は今すぐにでも女優になれそうな美人の次に受付に通される。長髪のウッディ・アレンのような男性が応対してくれた。私はさっきのように「I'm from Japan. I'm japanese actor...... Next year I am going to learn stage acting in London. But this time I stay only 4 days. Can you show me your acting class today? Even only 5 or 10minutes OK?」などと強引に話し出す。色々話したが結局ウッディ・アレンは責任者じゃなかったようで、黒人の女性と代わる。拙い英語で最初からやり直し。でも彼女は直接今日の授業の先生に交渉できるようにと優しく段取りをつけてくれた。ありがとう。今日の授業は”マスク”つまりは仮面である。
テーブルのないがらんとした広いビルの一室に案内される。窓際や壁際にパイプ椅子が数個。その一つにライオンみたいな髪の毛のおじさんが一人。先生だ。顔をよく見ると髪の量は多いが、ジャック・ニコルソンにも似ている。これまでと同じように見学の交渉をすると、OKの返事。ただし、7時過ぎくらいまではウォーミングアップしかやらないよという。今夜は芝居も見に行きたいのでそんなに長くはここにはいられないが仕方ない。 三々五々に生徒が集まってきた。中に日本人の女性がいた。彼女はロンドンで大道パフォーマンスをやっているそうで、もう10年近くイギリスに住んでいるという。クラシックマイムなどの素養もあるらしい。もう一人日本人の青年がいると思ったら、彼は英語しか話さない。どうやら韓国の若者のようだった。知らない外国で活躍しようとしている人がこんなところにも大勢いた。小さな興奮!
かなり遅れて授業が始まる。ゲームのようなエチュードをいくつか見た。例えば、生徒全員と先生(合わせて7人ぐらい)が小さな円の中を思いのままに歩き回る。誰でもいいから突然自分の名前を叫んで倒れこむ。そばにいた誰でも、複数の人間でもいいから倒れたその人を助け起こす。名前を叫んだ倒れてしまったら失敗というゲームがあった。とっさの瞬発力や信頼性を遊び感覚で呼び覚ます訓練とでもいうのだろうか。イギリスには近代俳優術の中で体系的に教えている標準訓練がいくつもあるようだ。どこの俳優学校に行っても基礎訓練の中に同じ伝統を受け継ぐものが多く含まれているということだ。私も日本でイギリス流のレッスンをわずかながらでも受けたことはある。そしてこういうことこそがイギリスで私が学びたいことの一つの目標である。日本にはプロの俳優が修理したり、再確認したり、息を吸い直したりする場所がまだまだ少ない。それが欲しければ自分で積極的に捜すしかないのが日本の現状である。でも市場経済の原則にのっとれば、当然の結果でもある。他の職業と同じような理由で、これからの日本の俳優も厳しい状況なのである。
たっぷり見ていたかったが、まさに後ろ髪を引かれる思いでCity Litを後にする。また来年ここに来ることもあるかもしれない。「レッスン見学ありがとう」心の中で声にして、静かに教室を出た。

すっかり日が暮れた道を地下鉄のコベントガーデンの駅に向かう。ここは改札を入るとホームまでは大きなエレベーターで降りる。エレベーター式のに駅は他にもあるそうだ。深夜の利用客のの少なくなった時間にこのエレベーターに乗るのは勇気が要りそうだ。 1駅だけ乗ってレスタースクエア駅で降りる。とにかく地下鉄カードを使いたかったのだ。「ノイゼズオフ(NOISES OFF)」のチケットを捜すが売切れ。気に入ったミュージカルのチケットももうない。読みが甘かった。チケットセンターも閉まりかけたので、ホテルの前のRoyal Court Theaterの芝居の残りチケットがまだあるであろうことに賭けて帰路に着く。
途中ピカデリーサーカスの駅側にある可愛い靴下専門店で猫柄の靴下を買う。大の猫好きの嫁さんへのお土産である。ここは日中に確認しておいた店だったが、私は女の子向けのお土産売り場としては穴場ではないかと思う。偶然見つけたキティちゃんの顔パックも買う。ちなみにキティちゃんは世界を席巻しているようだ。先日行った上海にも、このロンドンにもキティちゃんは輸出されていた。

ロイヤルコートシアターでは「PUSH UP」という芝居をキャンセル待ちでどうにか見ることが出来た。ここには大小2つの劇場があって私が見たのは小劇場の芝居。客席キャパは180人ぐらいだろうか。スズナリを少し大きくした感じ。客席の作り方も含めて、本当に雰囲気はスズナリに似ていた。外観の超カッコ良さに比べると、内装は親しみ易い居酒屋といった感じであった。
さてこの日のお芝居は同じビルのオフィスで展開される「女と女」「男と女」「男と男」の2人ずつのオムニバスの会話劇。プロローグとエピローグに男性管理人と女性事務員のモノローグ語りもある。「女と女」はOL2人の衝突。自分の亭主と浮気しているらしい後輩のOLに喧嘩を売っている先輩OL。「男と女」は新企画を持ち込んだ若手の女性社員とその企画をぼろ糞に言うやり手の青年の話。「男と男」は、ごめんなさい、内容を忘れました。というか、あまり理解できなかったんだと思う。本火で煙草を吸っていたことと、その小道具の使い方に感心しなかったことは憶えている。
それで結論であるが、総括的に言うとあまり面白いとは思えなかった。それぞれたった2人だけの登場人物なのに会話が不自然だった。正面向き独白が多い私は正面独白が好きじゃないんで。おそらく目的はナチュラルな会話劇じゃないんだろうが、それにしても私にはピンとこなかった。さらに場面転換のBGM的な音楽の使い方、プロローグとエピローグの2人の着替え場面で繋がせる趣向の凡庸さがいただけなかった。
これならはっきり言って、日本人小劇場のの演技・演出の方が上である。これだけを見た限りではそう断言できる。ただし、日本の劇団系小劇場と違ってこれを1ヶ月近く連続上演しているのである。しかもその芝居を観て週末を過ごそうという一般の老若男女で客席が埋まっているのである。その文化的な土壌の違いは思わざるを得ない。

芝居を見終えて、ホテルの隣のパブでギネスの黒ビール半パイント飲む。美味い。1パイントは大ジョッキ1杯ぐらい。半パイントはその半分。値段は1ポンド40ペンス、280円ぐらい。まあまあの値段でしょうか。カウンターに座って、歩き通しだった今日1日の行動を思い出して煙草に火を点ける。窓の外にまだROYAK COURT THEATERの赤いネオンが灯っている。側で若者たちがさっきから賑やかに騒いでいる。うーん、イギリスだあー。それにしても、こっちの人はつまみもなしにビールだけ飲んでよくあれだけ大騒ぎできるなと思い始めたころには半パイント飲み干していた。

部屋に帰ってノートパソコンで日記を少し書く。簡単には書き切れないほどのことをした1日だった。そうだ、せっかくだからインターネットの接続にチャレンジしようと思い立つ。このホテルには接続できる設備が整っていないと断られていたが、物は試しである。プロバイダーのイギリス接続電話に色々手を出してみるが、これは徒労に終わった。 なんだかすかっりっくたびれて、缶ビール開けて半分も飲まないうちに寝る。

※豆辞典
実はこのホテルの部屋には冷蔵庫がなかった。つまりそのままでは冷たいビールを飲むことが出来ない。こんな時どうするか。洗面所の蛇口をひねり、流れる水の下に缶ビールを置く。しばらくすれば冷えたビールがいただける。水の気化熱を利用した方法である。何かの芝居の旅の折に教わった方法である。感を濡れタオルに包んでおくとなお冷える。


2月23日(土)

Today also, I went to many place in Rondon. I tried to speak in English by my poor English everywhere. So I've got very tired.
以上のような具合でくたくたです。

昨日と今日で5万歩近く歩きました。これは普段の3倍以上です。何かに 憑かれたように歩いていたんでしょうねえ、きっと。
今日印象に残ったことを。
朝はEnglish breakfast。今日は洋風にシリアルにチャレンジしてみまし た。コーンフレークタイプじゃなくてベビーラーメンに似た形状のシリア ルがあったので試してみましたが、私には甘くてやっぱり駄目でした。 今朝は昨日の男性には会えませんでした。
土曜日なので銀行が休みだと思ってがっかりしてたら、ロイドは休みでし たが隣の銀行は午前中はやっているそうなので両替に駆け込む。手数料は 全部まとめてで3ポンドだったからやむを得ないでしょう。

※教訓!外国では土日の銀行の休みには気をつけていること!でないと、 現金が使えなくて困ったことになる可能性大。

ホテルの部屋でインターネットに再度手を変えてトライするが「応答があ りません」の表示。使えないホテルだなあ
Wさんからアクターズセンターの新情報が入る。今日もレッスンがあるそうなのでこれも再トライに出発。
ピカデリーサーカス駅のそばにあるジャパンセンターでインターネットできる情報をつかんでいた。インターネットカフェみたいなもんである。ここから何とか自分のHPに書き込みだけする。ロンドンから書いた書き込みの詳細は以下の通り
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俺だ。小宮でーす 投稿者:小宮孝泰  投稿日: 2月23日(土)21時41分56秒
ちょっと失敗した。前に使った人の名前がそのままになっていた。当然下記の書き込みは私です。ロンドン滞在中の小宮です。kazushiじゃありませんよ。誰だそれ?!使用時間ぎりぎりになってしまったので焦ってしまいました。結局追加料金取られてる始末であります。
とにかくこの滞在模様は日記で書いてますから、帰国後に発表します。
昨日はくたくたになるくらい歩きました。StreetやAvenueやLaneの名前も地理感覚もわからないので苦労しました。目的地もいわゆる観光地じゃないから捜すのが一苦労。でもその分刺激的でもあります。大英博物館にも行きましたよ。ミイラをいっぱい見ました。 今日の夜はできれば「ノイゼズオフ」を見たいのですが。どうでしょうかねえ? とにかく今から色々と出かけます。タワーブリッジやマーケットも行きたいよ。今日も足腰クタクタだぞー!
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ロンドンにいるぞ!!! 投稿者:kazushi  投稿日: 2月23日(土)21時26分33秒
やっとロンドンから書き込めます。おーいみんなー!俺は今ロンドンにいるぞー!今の場所はピカデリーサーカス駅のそばのJAPAN CENTERで書き込みしてます
結局ホテルから自分のノートパソコンで発信することは出来ないようです。もともと出来ませんて言われてたんですが、無理やりモジュラーの変換コードなんかも購入して試しましたが、無理でした。でもってここを調べてインタネットカフェみたいなところから書き込みしてます。皆さんお元気ですか?私は快調です。
こちらの演出家に会ったり、俳優養成学校みたいなのを飛び込みで覗いて、拙いを英語をものともせず見学させてもらったりしてます。普通の観光旅行のような過ごし方はしてないですが、とにかくロンドンは魅力的です。やはりこの町には伝統がある。
あつかいにくい女さん>私は元気でロンドンの地下鉄に乗ったりしてます。石井の芝居で会いましょう。
ガルシアさん>1DAYトラベルカードは使ってますが、Fish&chipsは食べてません。パブには一人で一度行きました。半パイントだけ黒ビールを飲みました。
マスター阿部さん>もし留学できたとしてもこの年ですからそんなに長いことは滞在する訳にも行きませんが、数ヶ月を視野に入れてます。
てな訳で、今からある俳優スタジオに飛び込みで行って来ます。夜の「ノイゼズオフ(私の舞台歴参照)」のハーフプライスチケットがレスタースクエアで手に入るといいなあ(^0^)ではこの模様はまた

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レスタースクエアで「ノイゼズオフ」の半額チケットを捜すが、ない!早めに時間に来たつもりだったが、他のめぼしいチケットもない。そうか、今日は週末の土曜日なので安いチケットは手に入りにくいのだ。でも今日はこんなことでは諦め切れずに、直接上演劇場のコメディシアターに行ってみた。そしたら劇場のBOX OFFICEに当日券があった。高いけど仕方ない。正規の値段35ポンドで夜の部の前の方の良い席のチケットを買う。

さてこれで今夜の予定が決まったところで、昨日場所を確認しておいたアクターズセンターに再び向かう。今日はドアが開いていた。大きなガラス扉の向うに金髪女性が座っている。受付の彼女を相手に、今日も出たとこ勝負で”レッスンを見せてもらえますか?”と始める。しかしこの日は甘くなかった。少人数制でプロを対象にしている学校だ。物腰は柔らかだが、はっきり断られた。お金を払ってメンバーにならなければ見学は出来ないとの結論。みんな1ポイントのレッスンでも授業料を払うようなシステムになっているらしい。来年の資料のために、パンフレットだけでも貰ってきた。ついでに「来年会いま しょう See you next year」と言い残してくる。
ActorsLady
これがその女性。なんだかんだと10分ぐらいは話したのだろうか?彼女には「あなたは日本でコメディをやっている俳優でしょう。」と見透かされる。私の言動や見た目にはっきりとそれが現れているんだろうなあ。これは良い事だと考えることにしよう(^0^)

※こんな場合の会話でも、電子辞書は役に立っている。何が何でも英語で押し通すなら携帯用の電子辞書は必需品ではなかろうか

さて、アクターズセンターの隣のイタリアン惣菜屋を覗いてみると、ベジタブルパスタ2ポンド50とある。これは安上がりだぞと思って店内の簡易カウンターで食べる。ほとんどファーストフードの感覚。トマトソース味の煮込み野菜とペンネだかリングイネだかのパスタ。味はまあまあ、量も頃合い。でも日本的と比べて考えたら、大して安くはないか。500円以上するわけだから。いや、やっぱり安いのかなあ?どっちだか分からなくなってきた。ロンドン市内では物価が高めらしいのは事実だ。ちょっとでも近郊に離れるとぐっと日常のお値段が変わるそうである。
さて腹ごなしがてらに歩いていたら、お腹が実に素直に反応して便意を催してきた。レスタースクエに見つけておいた有料トイレに急ぐ。繁華街の人通りの中に昔のポストを大きくしたみたいのが一つだけ忽然と建っている。
Toilet これこれ、これがその有料トイレだ。この中で用を足すのは勇気が要るなと躊躇したが、何でも経験だ。でも、いざ入ってみるとやっぱり間近に聞こえる人通りの声が気になって落ち着かないこと落ち着かないこと!だって鉄板一枚隔てただけの掘っ立て小屋の中で、つまりは人ごみの中でウンチしてるわけだから。おまけに水を流すレバーがないので驚いた。どうしよう、もうしちゃったよ。流せないよーと半分泣きそうな気分になったが、エーイどうとでもなれと覚悟を決めてドアを閉めて出てきたら中で水の流れる音がして一安心した。結局無事用を足せたわけであるが、ロンドンで郵便ポスト型の有料トイレ(安いけど)を使う際には注意が必要だ。

でもって、落ち着いたところで、地下鉄に乗ってタワーヒル駅に向かう。
ここでのお目当てはタワーブリッジとロンドン塔。 LondonTower1 タワーヒルの駅の改札を抜け地上に出るとすぐ近くに城と川が見えてくる。 ロンドン塔とテムズ川だ。まずはこの画像のようにロンドン塔。お城だけどロンドン塔という。川べりまで行こうと歩き出したところに急に雪が降ってきた。噂に違わずロンドンの冬の天気は変わり易い。昨日は厚着していたのだが、今日は油断して一枚脱いできてしまった。思わずコートの前ボタンを閉めて歩く。みぞれ模様の中を、生まれて始めてテムズ川のほとりに佇む。空はどんよりと曇り、不吉な歴史を持つロンドン塔はその空の下でじとっと湿っている。きっとこれがロンドンの陰鬱な冬の表情の典型だろう。川下の反対側にはただいま建築中の近代的なベイエリアが、川上にはほぼ目の前に大きな跳ね橋タワーブリッジが見える。
Tower1brdge こちらはロンドンのすっきりした表情とでも言おうか。ほとんどの観光客が塔や橋の中に吸い込まれる中を、時間がないのでロンドン塔もタワーブリッジも概観だけを見て歩くことにした。タワーブリッジは橋の袂に行くとなおさらその大きさを感じる。 LondonTower2 変わり易い天気のお陰で歩き出して30分もしないうちに青空も見え出したが、先入観のせいかロンドン塔からはやはり因縁めいた過去のような空気を感じてしまうのは私だけだろうか。

あっという間の小観光を終えて、ビッグベンとウエストミンスター寺院に向かう。
もちろん地下鉄を利用する。District Lineで1本。乗り換えなし。トラベルカードも持っているから何度乗ってもお金の心配もない。ロンドンの便利な一面である。

BigB
さて国会議事堂のビッグベンもウェストミンスター寺院も歴史のある見事なゴシック建築だ。ロンドンは石造りの古風な建築物の街だが、この辺りは特にそれが美しい。 駅の出口を地上に出たすぐのところに大時計台がある。 これがその恐ろしくでかい時計台。この時計台のギンゴンガンゴンという音がロンドン市内に響いている。相当離れているはずのスローンスクエアにある私のホテルの部屋にも毎日聞こえていた。<> BigB&Me
お互いに写真を撮っている白人の観光客おじさんたちを発見。見るからに絶対安全そうな人たちだったので、頼んで私も1枚撮ってもらう。一人旅の場合、こうしないと自分が写った写真がなかなか撮れない。ありがたかったので馬鹿に丁寧にお礼をしてしまう。
遠景から議事堂を眺めるために橋を渡る。こんな内陸の川の橋げたにもカモメはいる。 WestM
私もよく分かってなかったんだけど、ロンドンて海沿いの街じゃないんだよ。こういう川の上流に大都市が形成されることは少ないらしい。全てはテムズ川の地理的要因だということだ。橋の中ほどまで来て振り返ると、西に傾きかけた逆光に映えるビッグベンが美しい。川風を浴びながら、煙草を一服。 ウェストミンスター寺院を見ようとする頃には、そろそろ閉館の時間になっていた。今日はまだ予定がある。ここも外観だけぐるっとひと巡りして次に向かう。 一人旅の気ままさはこうやってどうとでも時間を使えることにある。ただ「きれいだねえ」なんて言い合える奴もいないけど。ま、そんなものは心で感じることにして。
今度は実にあわただしく、ノッティングヒル駅のポートベロマーケットに向かう。 有名なストリート・マーケットのある所だ。
道が分からないので可愛い女の子に道を聞く。どうせロンドンで道を聞くのなら、可愛い子に聞くに限る。みんな優しいし、ニコニコしてくれるから。一時でもウキウキするしね。念のために言うと、ロンドンでは総じて観光客には優しいんだけど。
彼女の言うなりに道を進むが、6時近くになっていたので人通りも少ない。遅すぎたか。
それでも、帰り道を歩く人の流れに逆行して暗くなった路をずんずんと行くが、ほとんどの出店が店閉まいの最中でそこらじゅうほとんどもうゴミの山だった。なんかまさにつわものどもが夢の後という感じで寂しくなりそうだったが、この辺にあるらしいフリンジ系の小劇場を捜して歩く。

こんな夕方の寂しさは昔味わったことがある。まだ大学生になりたての頃、「ぴあ」が発刊しての頃だった。その「ぴあ」を片手に2番館の映画館を捜して東京じゅうの見知らぬ街を歩き回った時期があった。200円前後で良い映画がいっぱい見られた時代だった。

薄暗くなった路に桜に似た花がいくつか咲いていた。まだこんなに寒い季節なのに、あそこに咲いていたあの花はなんという名前なのだろう。日本から持って来られた木なのだろうか?妙に郷愁が湧いた。
冷えてきた夜道を小1時間歩いたが、結局劇場も「地球の歩き方」おすすめの店も見つからなかった。ま、超有名なマーケットに一応来てみたということで良しとする。

こからまた行動開始。レスタースクエアに戻ってお目当ての「ノイゼズオフ」を見る。私はこの芝居をやったことがある。これなら英語の台詞が上手く聞き取れなくても、おおよその話はわかるはずだ。
1幕が始まる。ちょっとずつ過去の記憶が蘇る。南風洋子さんと石井の芝居、そして私が演じた気の弱い役者と浅田美代子さんの場面も思い出してきた。ついでにあの時の芝居で座組みの中で内紛があり、大喧嘩になったことまで思い出してきた。これは今日思い出す必要はない。1幕が終わって、イギリスのお客さんは大喜びしているが、日本人の私にとっては、まあこんなものかなあという感じ。
と思っていたら、2幕からこのコメディが驚異的にテンポアップしてきた。いわゆるバックステージ(楽屋物語)のお話で、舞台と楽屋の揉め事が入り組んで同時進行していくストーリーなのだが、その連携プレーが実に見事だ。まるで曲芸のようなスラップスティックな展開にお客さんは大爆笑である。
続いて3幕への転換も演出がしゃれている。舞台監督助手役の青年が本番のハプニングをしどろもどろに詫びるという台本上にはない設定で幕前を繋ぎ、気づくと3幕は始まっていた。大掛かりなセットチェンジもあっという間の出来事のように感じられる。上手い!
もちろんお客さんは続けて笑いの渦である。
マイケル・フレイン作のこの手の込んだコメディは、サッチャー首相の構造改革で変化を余儀なくされた80年代演劇の代表的なものだそうである。つまり市場原理の法則に従って、芸術的な価値より分かり易くて客の集まる芝居が主流になったのだそうである。
ロンドンの夜らしい良い気分になって、今日も地下鉄を乗り継ぎホテルに戻る。
さらにロンドン気分を盛り上げるために、パブでビール。夜の街を眺めながら一服。この店にはフィッシュ&チップスがないのが惜しい。このままいくとロンドンではそれしか口に入らないかと思っていたフィッシュ&チップスを食べずに終わってしまうぞ。

深夜に日記をつけ終えビールを飲みながらTVを見ていたら、部屋からだろうか廊下からだろうか物凄く大きなブザー音が鳴り響く。しばらくして鳴り止んだと思ったら、またけたたましく鳴り渡る。さすがに怖くなってドアから顔を出したら、困り果てた外人女性が「煙草の煙でこのざまよ」みたいなことを英語で言い放って消え去っていった。完全には聞き取れなかったが、あの顔つきは多分そんな言い分に違いない。
「地球の歩き方」にも似たような例が書いてあったから、イギリスではこういう騒ぎ は珍しくはないのかもしれない。
この一件は翌日こんな手紙がドアの下から差し込まれて落着しました。

24TH February 2002
Dear Guests,

I would like to apologize on behalf of the hotel for the disturbance last night with our fire alarm.
I hope that you are enjoying your stay at the Sloan Square and if you have any problems of queries please don't hesitate to contact our front desk were they will be happy to assist you.

Kind Regards,

Max Phillips
Operations Manager




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