2006年大阪新歌舞伎座&名古屋御園座公演 原作・脚本:マキノノゾミ/脚本:鈴木哲也 演出:宮田慶子 与謝野晶子と鉄幹を巡る、明治の文学者を中心にした群像劇 与謝野晶子:藤山直美/与謝野鉄幹:香川照之 石川啄木:岡本健一/北原白秋:太川陽介 平野萬里:山田順大/佐藤春夫:木下政治 平塚雷鳥:田中美里/菅野須賀子:匠ひびき 蕪木刑事:横堀悦夫/そして特高警察の安土兵助は小宮孝泰です ほか子役も含めて総勢50余名の大所帯の座組み 「妻をめとらば」名古屋御園座日記 ※ ※ ※ ※ ※ 6月29日より、いよいよ御園座日記が始まります 皆さん、感想などを掲示板にどしどしどうぞ! ※ ※ ※ ※ ※ 7月25日(火) いつもと同じように楽屋入りする。今日は入り待ちの人が多い。 楽屋廊下には段ボール箱などが目立つ。帰り支度もそれぞれ始まっている。お互いの楽屋を”千秋楽おめでとうございます”と挨拶に回っている出演者の方もちらほらと。ちょうど暮れになると”良いお年を”という挨拶が恒例になるような慣習である。 最終日の幕が開く。私らの仲間内でよく”台詞を成仏させる”といって千秋楽の舞台に立つ。お世話になった台詞とさよならする心の儀式みたいなもんである。3ヶ月を共にした安土の言葉を全うしよう。 余談だが、明石家さんまさんが星屑の会の楽日を観に来たときにこの話をしたら”わしら成仏させてない台詞がいっぱいあるなあ”と言っていたのを思い出した。 明治時代の暮らしを一所懸命に過ごした人々の生き方を、皆さんそれぞれの思いで演じている。直美さんも今日はアドリブが多めである。大阪の時のように、寛美や猿之助の名前も飛び出す。私は2幕の冒頭で光くんに金平糖の飴を袋ごと全部あげた。 リピーターのお客さんが多いのだろう。いつもと違うことに全て反応が返ってくる。 特別企画。安土が小宮にインタビュー! 安土「3ヶ月ご苦労様でした」 小宮「同じ芝居で2ヶ月の旅は初めてですね」 安土「この日記もご苦労様でした」 小宮「ロンドン日記以来の長編でしたね。今回は読者が多いと実感していたので、独りよがりにならないように注意してました。でも結局僕の主観ですからね。ご容赦ください」 安土「恒例の質問です。気になっていた台詞は?」 小宮「台本を初めて読んだ時に意識していたのは、最後の台詞”ご愁傷様”ですね。同じ警察でも蕪木刑事とは違う思いで与謝野家と接していたことを表現しようかと」 安土「なるほど」 小宮「でも時々何故かそこで笑うお客さんがいたりして、どうしてだろうと思いましたけど。難しいですね」 安土「舞台で困ってしまったことは?」 小宮「2幕冒頭の子供たちは、やはり時々はらはらしましたね。何せ大人は一人でしたから」 安土「共演者の方ともっと絡みたかったのでは?」 小宮「そうですね。直美さんとは目線が合いこそすれ、言葉は交わしてないですからね。やっぱりもうちょっと大人の共演者と絡みたかったですね。安土さんも同じでしょ」 安土「はい(^0^)」 小宮「困ったと言えば、安土の眼鏡は私の自前なんですよ」 安土「そうなんですか?」 小宮「ちゃんと度が入ってるんですけど、今はないような古い形なのでレンズと眼の焦点が少しずれてるんですよ」 安土「というと」 小宮「まだ舞台が始まったばかりの頃、1幕3場で与謝野家の人たちを真剣に睨んでいたクラクラッときたんですね。その日は調子が悪いんだと思っていたら、それが何日も続いたんです」 安土「人知れずそんなことがあったんだ」 小宮「結局分かったのはレンズと目の焦点だと気づいたんですよ」 安土「それで」 小宮「それからあんまり睨まなくなりました(^0^)」 安土の小道具2点セット。 下がその眼鏡。あるドラマに出演した時に役作りのために探しました。この形はなかなかなかったですね。 こんな風に溜まった眼鏡が30個くらい手元にあります。MCコミヤも含めてね。これも古いか?! 安土「英語は続けるんですか?」 小宮「あと2本くらいは英語の一人芝居をやりたいですね。まあ、その前に日本語でやりますけど(^0^)」 安土「12月に東京でやるんですか?」 小宮「12月4日〜10日まで下北沢で一人芝居フェスティバルをやります。詳しくは今後のこのHPの近況欄とか掲示板を参照あれ」 安土「星屑の会は」 小宮「昨日書いたとおりです。一人芝居「接見」は呼んでもらえればどこでもやりますよ」 安土「大阪、名古屋の公演予定は?」 小宮「まだ決まってないですけど、是非呼んでください」 安土「『妻をめとらば』の再演は?」 小宮「是非東京で再演して欲しいですよね。その時は安土さんもよろしく!」 安土「ハイ!」 小宮「どうも応援してくれた方々、長い間ありがとうございました」 7月24日(月)梅雨は明けず そろそろ楽屋の整理などをしだす。段ボール箱をもらってきて荷物を詰めていると、大阪・名古屋での2ヶ月もあっという間のような気がしてくる。 楽屋の冷蔵庫の整理のために、フルーツゼリーや栄養ドリンクを無理やり飲んだり食べたりして貧乏性が抜けない。 どんなものでも始まれば終わる。 長かった80ステージも79ステージを終えた。 直美さんの”かぶれクイズ”は微妙に形を変えて続いている。純大さんが、時にとんちんかんな答えをしたりして飽きない。 終演後の出待ちのお客さんの数が増えている。皆さん名残惜しいのであろう。 実はこれを書き上げている時点で7月26日である。 昨日一昨日と当然ながらの雑用があり、更新できなかった。 千秋楽の思い出などを明日更新する予定です。悪しからず。 そして千秋楽に来てくださったファンの方々、この日記を愛読していただいた方々、皆さんありがとうございます! ちなみに私の所属する星屑の会の9月公演は下北沢本多劇場(9月14日〜24日)シアター1010(9月28日〜10月1日です。 ゲストに戸田恵子さんを迎え、ラサール石井君らと共にムード歌謡コーラスグループの物語の第5弾をお送りします。私は泣き虫のバンドリーダーの役です。 関東方面の方々は是非足をお運びください!もちろん名古屋・大阪のお客さんも大歓迎です。 では明日! 7月23日(日)曇り時々雨 子役Aチームは元気満々。自由を謳歌している。特に次男と末っ子は自由主義である。末っ子役の悠太くんは観客席に勝手に手を振って大サービス。喜びの表現にくるくる何度も回って私の話なんか聞いちゃいない。それでもお客さんは私の困っている姿に大喜び。まあ仕方がないか(^0^) インタビューの主任(トリ)はもちろん座長の藤山直美さんです。 座長部屋でのインタビューは、さすがに私も緊張気味でした。 小宮「お邪魔します(正座する)」 藤山「どうぞ足を崩して下さい」 小宮「ハイ(胡坐に)。よろしくお願いいたします」 藤山「何なりと」 小宮「まず、これは皆さんに聞いているんですが、ご自分の台詞で気に入っている台詞や、いつも気にしている台詞はありますか?」 藤山「気に入っている…何やろなあ。気にしてるのは全体的に差別や区別的な表現ですね。伝わり方が難しいでしょう」 小宮「具体的には?」 藤山「恋に”狂ってる”とか。人道的な問題もありますが、気になる人はなるでしょ。お客さんにスッと入ればいいですけど」 小宮「稽古場でも台詞はしっかりチェックしてらっしゃいましたね」 藤山「本当に必要な台詞かどうかですね」 小宮「どの台詞が良いとかは?」 藤山「あんまり意識しないですね」 小宮「初めて台本を読んだ感想は?」 藤山「舞台で、どないなるのか分からなかったですねえ。お化けは出てくるし」 小宮「晶子像は?」 藤山「晶子は狂言回しですよね。立ち寄る先々で、啄木さんでもお母さんでも、我が家でも、その人に反映されますね」 小宮「狂言回しですか」 藤山「この芝居に出てる人は、皆本当は良い人だと思うんですよ。蕪木さんも安土さんも情のある人ですよ。ただその時の社会情勢の被害者だと思うんですよ。加害者ではない」 小宮「2ヶ月後の今の出来は?」 藤山「それはお客さんの判断でしょ。いつもそう」 小宮「お客さんの手応えは?」 藤山「どうなんでしょ。私ねえ、”今日はよう出来たなあ”なんて思えるのは1年に3回くらいですよ。3公演違いますよ。3日間だけ」 小宮「役と自分との距離は?」 藤山「晶子とは対照的ですからねえ。全部想像ですよ。子供のおしめぐらいのことは分かりますけど」 小宮「姪御さんがいらっしゃるから分かり易いのでは?」 藤山「我が子とは違うでしょ」 小宮「子役の子達とはスキンシップを取るようにしてますよね」 藤山「ある一定の距離をおいてですね」 小宮「それ分かります。香川さんも時々叱ったりしてますね。あれは役者としてよりも、親のような感じですね」 藤山「でしょ」 小宮「アドリブは用意したりしてるんですか?」 藤山「全然してません。その時の咄嗟の感覚ですね」 小宮「まるでHDDのように、アドリブの文章の出し入れが凄いと思うんですが」 藤山「お客さんの反応を見て、早く本筋に行った方がいいなと思ったりするからですね」 小宮「へえー」 藤山「でもお客さんは大事にしますけど、媚びは売らないですよ。それは反対に失礼なんと違うかな。我が家(寛美さんの代から)は”お客様は大事”の方針ですよ。お客様の入場料でご飯食べさせてもらってるわけですから」 小宮「”かぶれクイズ”、私はそう呼んでるんですけど、ああいうのはお好きなんですか?」 藤山「その時の感覚なんですけど、でも相手(純大さん)が見当違いになったら止めますね」 小宮「純大さんのツッコミが時々現代人になったりしますもんね」 藤山「アドリブは役のまま。素には戻らないです。急なことでも役で処理せなあかんと思ってます」 写真は、この振袖姿しかないでしょ! 3幕1場の衣装です。 出番前に艶やかな姿で撮らせていただきました。 小宮「先日の事故は驚かれましたよね?」 藤山「あんなんは初めてでした」 小宮「酔っ払ったお客さんとかはいるでしょ?」 藤山「それはしょっちゅう(^0^)客席で夫婦喧嘩もあったし」 小宮「そういう時はどうするんですか?」 藤山「客席の係りの方がいますから、そのままお任せしますね」 話しているうちに気づいたが、直美さんの答えは明快で端的である。大変そうなこともあっさり答えてくれる。 小宮「夫として共演者として、香川さんをどう思われますか?」 藤山「素材が真っ直ぐな人ですよね。顔から歩き方からお父さんそっくりです」 小宮「直美さんは意外と体柔らかいですよね。1幕1場の最後で座ったまま倒れる時にかなり反りますもんね」 藤山「普通にジムとか行ってますし、元々柔らかいのかなあ」 小宮「喜劇人には体の柔らかさも必要では?」 藤山「喜劇人に必要なのはリズム感ですね。絶対」 小宮「最後に入院中の王監督に一言激励を」 藤山「うーん、人の生き方はそれぞれですもんね。 普通に治療に専念して10年生きるのと、舞台に出続けて1年で亡くなるのとは、本人の価値観ですよ」 小宮「はい」 藤山「うちの父は舞台の1年を選んだ人です」 小宮「ええ」 藤山「監督を続ける方が幸せなのか、どうなのか 私は王さんが選んだ生き方を”外野から応援させてもらいます”」 それまではポンポンと答えてもらえましたが、さすがに王監督へは言葉を慎重に選びながらメッセージを残してくれました。 前述したことと重複しますが、全体の印象として普通の人が大変だろうと思うことや意味が大きそうなことにはあっさりと、簡単に考えてしまいそうなことには繊細に意識していらっしゃる様子でした。その辺の気配りも、さすがだと思わざるを得ないインタビューでした。 7月22日(土) いよいよ御園座も千秋楽まであと4日。 というわけで本日は夜の部の終演後に打ち上げがありました。場所は御園座のご近所の英吉利西屋(えげれすや)本店。イギリスのパブ風のカウンターやシャーロック・ホームズの壁飾りがあり、正に英国風。近場にこんな店があるとは知らなかった。しかも食べ物もなかなか美味しい。 さて総勢60名以上の飲み会となると賑やかだった。稽古から始まって3ヶ月近くの間に色んな仲良しグループも出来ている。2時間がっと飲んで食べて、ワーッと喋って盛り上がる。 後は4ステージを残すのみだ。 最近楽屋宛で私にお手紙を何通か頂きました。岐阜の純大さんファンの方はこの日記をかかさず読んでいただいているそうで、誠にありがとうございます。 子役Bチームの末っ子役の祖父の方からもお礼のお手紙を頂きました。ご丁寧にありがとうございます。 この欄をお借りしてお礼をさせていただきます。他の皆様も日記愛読ありがとうございます。 いよいよ日記も残りわずかです。 まだ藤山直美さんのインタビューも残っておりますので、お楽しみに! 7月21日(金) 今日は青年座のお二人、蕪木刑事役の横堀悦夫さんと啄木の妻の節子役の加茂美穂子さんに座談会形式でお話を伺いました。横堀さんは加茂さんにとっては大先輩に当たります。その辺が面白そうですね。 小宮「お互いの印象を聞きましょうか。加茂さん、今回の横堀さんの芝居で良いなと思うところはどこですか?」 加茂「私”東京朝日の石川君が今日の夕方亡くなりました”と蕪木さんが言うのを聞くと、いつも涙が出るんです」 小宮「それは節子としてですね?」 加茂「はい」 小宮「先輩に気を使わなくていいですよ(^0^)横堀さんの芝居はどうですか?」 加茂「カーテンコールで晶子さんと挨拶する”ヨッ”が普段の蕪木さんらしくないのが良いですねえ。それと1幕の終わりで去り際に”失敬”というのが印象に残りますね。プライドが高い人が部下の前で相手の人を褒めた後ですから。どちらもギャップが良いです」 横堀「以前はその辺は皮肉っぽく言ってたんですけど、最近は鉄幹を尊敬できる。前は侮蔑してたのが、今は違う。何しろ香川さんにじっと見られてますからね」 小宮「確かに香川さんは相手役から目線を切らないですね」 小宮「では横堀さんから見て、加茂さんの良いところは?」 横堀「ないですね」 加茂「えーっ?!」 小宮「あるでしょ」 横堀「晶子先生と毎日笑い合って楽しそうだなあと思いますね。直美さんが柱に頭をぶつける場面を”ハプニングですか?”って、お客さんに聞かれるたびに”いえ、毎日なんですよ”なんて言える居住まいがいい」 小宮「それはただ羨ましいだけじゃないんですか?」 横堀「そりゃ、羨ましいですよ」 小宮「どうして?もしかしてお客さんに好かれたい?」 横堀「好かれる役やりたいですねえ」 加茂「でも普段から少ないんですよねえ(^0^)」 横堀「安土刑事も子供に好かれてるし(^0^)」 小宮「大人げない。そんなことより後輩の加茂さんの良いところは?」 横堀「空き時間でも舞台袖でずっと芝居を見ているのは偉いと思います。本番中は役を終えていない」 加茂「岡本さんが(啄木として)消えないと、私も終われないんですよ。だから最後になると泣けちゃうんですね」 小宮「劇団の先輩としてはどうですか?横堀さんは?」 加茂「クールで怖い人だと思ってました」 横堀「共演したのも1回だけで、絡みもなかったし。接点が少ないね」 加茂「でも今回は”可愛い”って思いました。皆(他の出演者)にいじられてるし」 小宮「1幕3場の後の楽屋廊下の出待ちの女優さんも多いですよね。これは私が羨ましい(^0^) 横堀さんは加茂さんをどう思ってました?」 横堀「あばずれだと思ってました」 小宮「ひどいなあ。どの辺が?」 横堀「見た目ですか」 小宮「無茶苦茶だ(^0^)」 横堀「でも今回それは違っていることに気づきました」 加茂「そうですよ」 横堀「一応常識はありますね」 加茂「ハハハ(センパイ、キツイナア)」 三つ揃いのスーツで、頭髪もビシッと決めたこの姿と、普段の可愛いおじさんの横堀さんとでは大分違いがあるんですよね(^0^) 出番前の暗いセット裏でじっと節子の思いを溜めている加茂さん。 実は加茂さんとは2年前にロンドンで会っています。その模様はロンドン日記の4月16日辺りをご参照ください 小宮「青年座でこの作品を以前にやってますよね」 横堀「2回」 小宮「横堀さんも出ていた?」 横堀「大杉栄と北原白秋の役をやりました」 小宮「今回との違いは」 横堀「前は青春群像劇だったことですね。だから大杉栄も出ていたし、他にも同時代の出演者がいた。誰かがはっきりとした主役ということはなかったですね」 小宮「今回はもちろん」 横堀「晶子と鉄幹の物語になっている」 小宮「ですね。今回の長所というと?」 横堀「与謝野晶子も家庭人だったということで、身近で分かり易くなっている」 加茂「今回は”妻をめとらば”を晶子や萬里が歌うシーンで、お客さんも一緒に歌ってくれたりしますよね。青年座の公演の時には考えられなかったそうです」 小宮「実はお二人とも、出番以外の空き時間が多いですよね」 加茂「昼夜公演があっても15分の出番が2回だけ。そこが勝負なんで、私は1時と6時の女って自分を呼んでます」 小宮「それ、可笑しいね。空いている時間は?」 加茂「1日必ず1回は床山さん(かつらの係りのこと)の部屋に行って、任天堂の脳トレーニングのチェックをしてます。後は縫い物ですね。自分の襦袢や部屋着を縫ってます」 小宮「繕ってるってこと?」 加茂「いえ、新品です。田中美里さんの部屋着も縫ったんですよ」 小宮「そういえば加茂さんが今着ているのと同じのを着てましたね。すごいね!」 加茂「好きなんですよ」 小宮「横堀さんは何を?」 横堀「何してるかなあ。楽屋のTVモニターで本番を見てたり、雑誌を読んだり」 加茂「『るるぶ』を読んで名古屋の達人になってるじゃないですか」 小宮「美味しいお店とか行きました?」 横堀「『わっしょ』という日本料理屋の”名古屋コーチンあぶりたたき握り”が美味かったですねえ」 小宮「長くて分かり難い名前ですけど、結局寿司ですか?」 横堀「ええ。大阪ではオムライスの美味しい店がありましたね」 小宮「何ていう店ですか?」 横堀「何か数字のついた名前なんですよね」 小宮「当てになんないなあ(^0^)」 小宮「例の事故の時はビックリしましたよね」 横堀「今のこと(事故)をなしにして芝居を続けることにドキドキしましたね」 加茂「Show must go on!って感じでしたね。でも直美さんカッコ良かったあ」 横堀「顔が大きいと言われたのが、どうもね」 小宮「そこ気にしてたんだ(^0^)」 横堀「そんなこと言われたことないんですけど。そしたら他の女優さんに”顔じゃなくて、おでこが広いのよねえ”と言われて、余計に気になるじゃないですか」 小宮「人は受け止め方がそれぞれですねえ。でも大事が丸く収まったということで水に流してください」 7月20日(木)また雨 昨日のことが新聞やTVでもニュースになっていた。 劇場の館内放送では、お客様のご注意も促している。 舞台の上にも、まだ緊張が少し残っていた。 もちろん昼夜共に無事公演は終了したのだが、昼の部が終わった後で直美さんが「なんか冷や冷やしたなあ」と言っていたのが印象的だった。 さあ、今日は与謝野鉄幹を演じる香川さんにインタビュー! 昼夜公演の間に楽屋に伺うと、香川さんは丁度食事を始めるところだった。 小宮「大丈夫ですか?お食事中?」 香川「どうぞ、食べながら話すのは平気です」 小宮「そうなんですか?」 香川「慣れてます」 小宮「では最初に、ご自分の台詞で気に入っているのは?でなければ意識している台詞は?」 香川「やはり最後ですよね。3幕で晶子に言う”パリの安宿の硬い寝台で・・・”からの一連ですね。喧嘩の後にあんなことを言える夫婦はなかなかいないですよ。思っていても言えないし、そもそも思えないかもしれない。あんな良い台詞を80回も言わせてもらえるのは幸せですね」 小宮「うんうん」 香川「2幕4場でカツとのやり取りの後に晶子が”空が明るうなってきましたねえ”と言うのも好きですねえ。景色と心情が重なってる。台詞で言わずに景色で語ってるところがいいですね。それと」 小宮「まだありますか?」 香川「最近改めて気づいたんですけど、3幕の啄木の最後の台詞”今夜がこんなに素敵だったことを僕は忘れないでしょう”。自分の死んだ日を素敵と言えるのは凄い。自分が死んだことを自覚した上で言っていると僕は解釈してるんですけど、そこが凄い。岡本さんの芝居がまたいいんだよね。自分の息子の死を語り始める時の感情を抑えた喋り出し”あれは僕の息子の…”。好きだなあ」 小宮「岡本さん本人も分かって演じてますよね」 小宮「初めて台本を読んだ時の鉄幹の印象はどうですか?」 香川「最初は、さらっといければ大丈夫かなと思っていました。ところが稽古が始まって晶子の、つまりは直美さんの大きさにたじろぎました」 小宮「特に立ち稽古からですね?」 香川「台詞としては鉄幹の言葉は茫洋としていて、晶子とは色々と差がある。そこに何を詰めるかなんですが、夫婦として対等にいての差にしたかったんですよ」 小宮「ほー」 香川「幸い実生活でも妻子があることで、そこは助かりました」 小宮「なるほど」 香川「僕、役はまず自分からしか始まらないんですよ。何とか自分と繋げようとするのが僕の役作りですね」 小宮「で、約2ヵ月の長丁場を超えての鉄幹はどうですか?」 香川「僕自身が役と繋がるためには、長いことが損にはならないと思うんです。役と100繋がりたい、それが僕の新鮮さですね。60から80へ、さらに100へ加速度をつけたい。その思いは誰にも負けないと思ってます」 香川「和田憲明(ウォーキングスタッフの演出家。香川さんは”ソリッド”という作品に参加)さんが、ある役者に言ったんですよ。”台詞じゃない台詞を言ってくれよ”って。で、僕は”それは理屈としておかしい。台詞というのは、ある箱の中にあるもので、それを表現するのが役者の仕事なわけで、台詞は台詞でしょ”って反論したんですよ。そしたら憲明さんが帽子を深くかぶり直して”でも人生で1回、そういう芝居を見てみたいんだ”って小声で言ったんですよ。それが好きでねえ。 別の監督からは”理屈でやるな、本能でやれ”って言われた。そういうことが積み重なってるんでしょうねえ。 台詞が100飛び立つ(自分から)のをやりたいんですよ。 僕にとって芝居じゃない部分が売りだと思うんですよ」 小宮「どういう意味ですか?」 香川「日常の生活でも嫌な相手のために芝居していることはあるでしょ。演技でも無理して芝居している、つまり香川が芝居している。その部分ではなくて本心で(役が)やっている、芝居していない時のことを本当の芝居と言いたいんです」 小宮「映画やTVの演技と舞台の芝居は違いますか?」 香川「今回は使い分けを感じましたね。顔の向き一つでお客さんに伝わるものが変わる。それと台詞の壁パス。例えば直美さんと松金さんの場面で顕著なんですけど、相手役にさらにお客さんを入れた三角パスもありだってことを感じました」 小宮「というと」 香川「ワンツーの後に客にパスみたいな」 小宮「ハハハ」 きりっとした鉄幹メイクをする香川さん。男性楽屋にしては化粧前がかなり明るいです。 世が世ならば、この鏡の前で歌舞伎の隈取りをしていたのかも。 小宮「ところで直美さんの存在はどうですか?」 香川「怪物ですね。日本サッカーチームの中にブラジル人がいるようなもんですね。ノールックでも来るし、ヒールでも来る。センターラインの後からでも蹴ってくる」 小宮「大変ですね」 香川「常に緊張ですよ。でも最近我々チームもロナウ・ジーニョのパスを少しは受けられるようになったかなという自負はありますね」 小宮「この日記にも書きましたが、直美さんのアドリブの塊は凄いですよね」 香川「そうなんですよ。単なる付け足しじゃない。何行かの台詞のやり取りを、ごっそり入れたり出したりする。それでも芝居は繋がってる。ほとんどハードディスクの作業ですね」 小宮「確かにアナログじゃない(^0^)」 香川「だから終幕で”お前の歌を読んで…呆然としちまうんだ”の台詞は素直に言えますね。助かりますよ」 小宮「逆に、困ったりすることはないですか?」 香川「直美さんが笑ってるともう駄目なんですよね。」 小宮「最近の1幕3場で啄木が鼻血を出した後は、直美さんは何故だか笑ってますね」 香川「以前笑ってしまった残像が残ってるみたいですね」 小宮「そういうことか」 香川「それを見て松金さんが後ろ向きで笑いを堪えているんですけど、客には後ろ向きだけど僕には正面なんで困りますね(^0^)」 小宮「笑いが伝染してるんですね」 香川「でも1幕1場から盆の上は温まっている感じがしますねえ」 小宮「というと?」 香川「始まる前から舞台の上は昨日の余熱で温まっている。だからやり易いですねえ」 小宮「今評判になっている公開中の映画「ゆれる」のこともお聞きしたいんですけど」 香川「あの役は、もう僕自身のことですね」 小宮「はまりましたか?」 香川「ええ、監督の夢が原作なんですけど、初めて脚本を読ませてもらったときに”この人はどうして僕の隠してきた闇の部分を知ってるんだ”って思いました。だから突拍子もないような台詞も無理はありませんでした」 小宮「『嫌われ松子』にも出てますよね」 香川「最近カメラと同じ高さでばかり芝居するのが少し嫌になってきて、「嫌われ松子」ではずっと伏せ眼で芝居してみたら、これが意外に面白かった」 小宮「それも見たいなあ」 この後も映画の話は続きました。そうこうしているうちに食事はすっかり終了。芝居の話のよどみない量にも感心したが、その間にしっかり飯を食っていたことにも私は感心してしまった次第です。 小宮「よく食べられましたね?」 香川「慣れてますから。僕、撮影やなんかで出てきた消えもの(食べ物)は全部食うんです」 小宮「全部?」 香川「作ってくれた人に申し訳ないってのもあるんだけど。残さないですね。特技といってもいい」 小宮「エライ!」 香川「食べながらでも一番台詞の言える役者とは僕のことでしょうね」 小宮「最後に花道のお話を聞きます」 香川「どうぞ」 小宮「大阪の日記でも触れたんですが、新歌舞伎座の舞台稽古の日に花道にしばらくじっと立っていらしたそうですね」 香川「花道を見て、特に提灯を見て感じたのは”両親の離婚がなければ、歌舞伎俳優としてここに立っていたであろう”ということですね。劇場の名前も新歌舞伎座ですし。あれはちょっとグッと来るものがありました」 7月19日(水) 朝降っていた雨が午後には上がり、梅雨明けを思わせるような夏空になる。白川公園では今年初めてのセミの鳴き声も聞こえた。 季節は確実に動いている。 一部報道でご存知の方も多いと思うが、今日は御園座客席で事故が起きた。幸いお客様の怪我も大事には至らず、劇場側の対応も適切だったので騒動は無事収まった。再発防止のために全ては進んでいる。 私が心に留めておきたいのは座長:藤山直美さんの迅速な対応である。 1幕3場に事故は起きた。蕪木刑事の侮辱的な言葉に怒って晶子が平手打ちを加えようとしている時に、上手側の客席から異様な悲鳴が聞こえた。私には何が起きているのか分からなかった。しかし悲鳴は収まらない。舞台上の役者も動揺を隠せなくなった。直美さんが小声で『これは続けられへんな』と合図を送り、芝居を急遽中断して緞帳を下ろさせた。 舞台監督の報告によれば、転落事故がありお客様が怪我をした。幸い意識もしっかりしていて、救急の手配も出来たようだった。お客様の安否を確認した上で直美さんはすぐに行動を開始していた。 『芝居を巻き戻そう。蕪木刑事の登場からまたやるよ』と言うなり、スタッフにマイクを用意させて緞帳前の舞台に立った。 『皆様、ご心配をおかけしております。ただ今事故がございましたが、お怪我は大事には至らなかったようでございます。病院の方にも連絡は取れました。こんな時ではございますが、せっかく大勢のお客様にいらっしゃっていただいております。この後のお芝居を続けさせてもらってよろしいでしょうか?(客席から了解の大きな拍手)ありがとうございます。それではお芝居を少し前に戻しまして、ビデオの巻き戻しをご想像ください。あの”顔の大きな蕪木刑事”の登場場面から再び始めさせていただきます』 舞台セット上に戻ってきた直美さんは、各出演者のスタンバイを促し『私が”ハイ”って言うたら芝居を始めてね』と言って緞帳を上げさせた。舞台にはまだストップモーションの出演者たち。 直美さんが大きな声で一言『ここで刑事の登場です。ハイ』。演者が動き出し、私たち特高警察のグループが上手から庭に入ってきた。 直美さんは横堀さんを指して『さあ顔の大きな蕪木刑事さんです』とアピール。客席から笑いがこぼれて緊張した舞台が和んだ。 ここからの出演者皆さんの気迫が凄かった。ただ同じ芝居を2度やるのとは全く違った興奮と緊張が溢れている。当然私のアドレナリンも上がる。香川さんを見ると、蕪木の侮辱的な言葉に顔の血管は浮き立ち口から泡を飛ばしている。 私は、こんな瞬間に立ち会っていることに高揚している自分を抑えられなかった。奇麗ごとだけではない何か、生の舞台の出演者でなければ味わえない何かがあった。 人間の真価はいざと言う時に分かるというが、この時の直美さんは正しく座長:藤山直美であった。芝居を使命にした大きな女優であった。 判断の早さ、共演者に伝える安心感、そして喜劇を楽しみにしているお客様への気配り。どれもが的確で暖かかった。 刑事の台詞を終えて舞台裏に戻ると、不安と安堵の混じった他の共演者やスタッフが迎えてくれた。 私はふと御園座の歴史のことを思っていた。戦争や災害を超えて、この劇場は今ここに有る。どんな時にも娯楽を求めて止まない観客がいて、何を乗り越えてもそれに答えようとする役者やスタッフがいて劇場が生き続けたのだ。一つ一つがその連続なのだと改めて思わされた。 舞台は滞りなく3幕まで終え、今日も緞帳が無事下りた。 楽屋に戻る直美さんの背中を見ながら『あそこで”顔の大きな蕪木さん”と言える女優は2人といない』と香川さんがつぶやいていた。 7月18日(火)今日も1日中雨 緞帳の話をする。 他の劇場でもそういう例はあるので不思議に思う方がおかしいのかも知れない。それでもずっと前から私には何だか面白くて仕方がなかった。 この御園座では、芝居が始まる前に緞帳の紹介がある。劇場に役者が登場するより前に、舞台道具がお客様に見えてくるより前に、まず緞帳が紹介される。ショーの前に幕が紹介されるのである。 スポンサーさんのこともあるし、相当豪華な品物であり、それ自体立派な作者の手によるものだということも充分理解できる。 それでも舞台の主役が出る前に、重厚な張物を何枚も紹介するのは可笑しい。引き続いて花道や飾りの提灯も紹介してくれたら私は爆笑してしまうだろう。 不謹慎な話はここまで! その緞帳の裏。大抵どの劇場でも、このように火の用心と書いてある。 うん千万する代物であり、生身の役者よりもずっとこの劇場を長年見てきた立役者であることは確かではある。 太川さんお薦めの東野圭吾「容疑者Xの献身」を借りて読み始める。面白くてあっという間に半分くらい読んでしまった。 今日は雑事も重なったので一日が過ぎるのが早かった。 夜は東海TVの方と食事。 7月17日(月)朝からかなり強い雨 公演もすでに60ステージ以上が過ぎ、それぞれに舞台、舞台裏、楽屋、廊下でのルーティーンの日々のお約束事や新感覚を楽しんでいいる様子。 夜の部は本日もJA貸し切り。こんなに何回も貸し切れるとはJAの集客力は恐るべし。今日のカーテンコールでは、僕が最後に担いで逃げようとする米俵(実際は、そんなに重くない)を運んでくる係りの方が、実に重そうな演技をしているのが可笑しかった。一所懸命なんですね。 それでは山田純大さんに英語でお話を聞きましょう。 Ladies and gentleman. This is it! I'll start to interview with Mr. Jundai Yamada. (皆様いよいよです。純大さんのインタビューを始めましょう) Komiya: May I come in? (小宮:入ってもいいですか?) Yamada: OK! Come in. DOUZO! (山田:はい、どうぞ!) Komiya: Today I'll try to interview with you in English. (小宮:今日は英語でインタビューします) Yamada: Oh, really? But you should speak Japanese. NIHONGO DE IIJA NAI DESUKA? (山田:本当に?でも日本語の方が。『日本語で、いいじゃないですか』) Komiya: Thank you, but I'll try to speak English as much as I can. (小宮:どうも、でも何とか英語で話してみます) Yamada: WAKARI MASHITA. (山田:『わかりました』) Komiya: First of all, in this play what's the most favorit line of yours? (小宮:まず、ご自分の台詞で一番気に入ってるのは?) Yamada: UH... When I say "sensei!" When Akiko sensei is not feeling well. She is vomiting. When I see that I go and I'm yelling "Sensei!" SOKO GA SUKI DESUNE. (山田:うーん、「先生」って言うとこですね。晶子先生が具合が悪くて、吐きそうになる。それを見て僕が駆け寄って「先生」って叫びます。『そこが好きですね』) Komiya: At the end of 3rd scene of the 1st Act, right? Why? (小宮:1幕3場の終わりですね。何故?) Yamada: I worry about her. I put my full emotion in that line. IPPAI TSUMATTERU JA NAI DESUKA. I like that line the most. (山田:僕は彼女のことを心配して、その台詞に気持ちを込めます。『いっぱい詰まってるじゃないですか』。そこが一番好きですね) Komiya: Who is more important for you? Akiko sensei or Tekkan sensei? (小宮:晶子先生と鉄幹先生と、どちらが大事ですか?) Yamada: Same. Without Akiko, Tekkan sensei would be just a normal poet. They both work together. That makes them wonderful poets. (山田:同じですね。晶子がいなければ、鉄幹先生はただの普通の詩人だったでしょう。一緒に仕事をする。それが二人を素敵な詩人にしたんです) Komiya: Nice couple and wonderful poets, right? (小宮:良い夫婦で、良い詩人ですね) Yamada: Yeah. (山田:そうです) Komiya: What makes you laugh? (小宮:何か、笑っちゃうようなことは?) Yamada: At the act 1st scene 3rd. When I see Akiko is talking with Tekkan, they say lines in little voice. Audience cann not hear, but I can hear it. (山田:1幕3場。晶子が鉄幹と小さな声で話しているんです。お客さんには聞こえないんですけど、私には聞こえるんです) Komiya: Matsukane and Tanaka said same thing. (小宮:松金さんや田中さんも同じこと言ってました) Yamada: It's very funny. (山田:それが、とても可笑しいんです) Komiya: How do you feel like the "KABURE" quiz show? (小宮:”かぶれ”クイズはどうですか?) Yamada: I'm very afraid. At the same time, I'm very happy to be in that scene. It's exciting. It's very interesting because I can' t prepare for Naomi san's adlib. So I have to be concentrated. Naomi san is a department store of tricks. 山田:とても怖いですね。でも同時に、あの場面はとても楽しいです。ワクワクします。直美さんのアドリブに準備はできません。それが面白い。だから集中しなくちゃならない。直美さんは技のデパートですね) Komiya: How about your voice condition? (小宮:声の調子は如何ですか?) Yamada: Good. (山田:いいですよ) Komiya: Recently your voice was in bad condition. What was wrong? (小宮:以前、調子が良くなかったですよね。どうしたんですか?) Yamada: Air conditioner in my hotel. I turned it off. It was off, but air was still coming out a little bit. So I was not feeling well. (山田:ホテルのエアコンです。スウィッチを切ったんですけど、風が少し来てたんですよ。それで具合が良くなかった) Komiya: What do youn think about this play? (小宮:この芝居については、どう思いますか?) Yamada: It's a great experience for me. It's my first time to perform in such big theatre. I can learn a lot from different actors. I think everybody is a department store of tricks. You, Komiya san is also great in handling kids. (山田:素晴らしい経験ですね。こんな大きな舞台は初めてなんです。色んな役者さんから、学ぶことがたくさんあります。皆さん技のデパートですね。小宮さんも子供の扱いが素晴らしい) 小宮「伝言ゲームでは内緒の言葉が飛び交ってるとか?」 山田「ちょっと言えないようなことも」 小宮「下ネタかな?(^0^)」 山田「(^0^)」 小宮「純大さんのところで止まってしまうという話も聞きましたが」 山田「そんなことないですよ。太川さんが気を使って止めたりしてますね。(匠さんが)笑っちゃうから。He is very thougtful.(太川さんは思いやりがあります)」 小宮「なるほど」 山田「We're like little kids while we're whispering.」 (山田:ささやき合っているところは、子供みたいですよね) これは虐めではありません。グレーシー柔術をやっていた純大さんは、休憩時間中にも付き人の竹成くんを相手に武道の型の稽古で遊んでいるんだそうです。 これはご存知の”コブラツイスト”です。 1幕1場で密偵の私に突き飛ばされる場面の純大さんの回転受身は、さすがに迫力があります。 お互いの体躯からして私が投げるのは難しいいですよね(^0^) Komiya: Whtat's the most important thing to improve English? Could you tell me your own secret to learn English? (小宮:何が英語上達に大切だと思いますか?純大さんの秘訣を教えてもらえますか) Yamada: Uh,listen to CD. Any CD, like Michael Jackson, Frank sinatra… (山田:CDを聞いてください。どんなのでも、例えばマイケル・ジャクソン、フランク・シナトラ…) Komiya: Music? (小宮:音楽ですか?) Yamada: That's very good. Especially oldies. (山田:とても良いですよ。特にオールディーズ) Komiya: Why? (小宮:何故?) Yamada: Because they are very simple. And you can use it in everyday conversation.Listen and read. KASHI WO YONDE KUDASAI. (山田:とても分かり易いですし、日々の会話に使えます。歌詞を読んでください) Komiya: I listen to NHK radio English program. (小宮:私はNHKのラジオ英会話を聞いてるんですが) Yamada: Good! But listen and read. Both are important. (山田:いいですね。でも聞くのと読むのと両方大事です) Komiya: Thank you. (小宮:ありがとうございます) Yamada: You are welcome. (山田:どういたしまして) 終演後に先週お邪魔した従兄弟の店へ集合がかかる。行ってみると名古屋在住の従兄弟や家族が何人も集まっていて、さながら親戚会や地元のお祭りのようになっていた。早速我が実家の母に電話して、皆に携帯に出てもらう。しばし囲んだテーブルや電話で懐かしい話に盛り上がる。 地は水よりも濃しというのは、こういうことだろうか。 7月16日(日) 最近終幕での香川さんの芝居が微妙に変わってきたと、他の演者の方から評判だった。今日は楽屋モニターで注目していたら、確かに声のトーン、芝居のニュアンスが進化している。数十回の舞台を経て、まだまだ自分なりの発見があるのだろう。 その上に新しく公開した映画「ゆれる」での演技も評判が高い。ただただ感服! 名古屋市民会館で中国京劇院の「三国志」を観る。有名な軍師”諸葛孔明”の一代記。”三顧の礼”とか”赤壁の戦い”とか、NHKの「その時歴史が動いた」で覚えた場面が多いので分かり易かった。合戦場面のアクロバティックな演技も凄いが、歌が素晴らしい。京劇とは私の思った以上に歌舞劇であった。 しかし日本と中国とで同じような様式美を持った伝統演劇があることに改めて不思議な思いがする。 この公演に興味を持ったのは、ある新聞記事である。この京劇に日本人の俳優が参加しているというではないか。 石山雄太というその青年は、子供の頃に見たTV中継の京劇に憧れを抱いたまま単身中国に渡り、超難関の国立京劇学院に入学して現在は座員になっている。外国人が京劇院の座員になった例は初めてだそうだ。どれだけ難しかったかは想像に難くない。その純粋なエネルギーにも感服するばかりである。 本日の石山さんは日本語での狂言回しの役だった。京劇らしい日本語の狂言回しに腐心したらしい。どんな思いで祖国の舞台に立っているのだろうか。 7月15日(土)暑い暑いとTVの中でも騒いでいる 本日もJAの貸し切り。 昼の部の公演1幕で直美さんの笑いが止まらなくなった。啄木が鼻血を出したのを見た後の、リアクションの顔が凄かった。それから直美さんが笑い出して、息継ぎが出来ずに台詞が言えなかったのである。しかし、まあそんなことでは大過なし。 本日のカーテンコールも、安土刑事の泥棒ショーのサービス有り。 本日インタビュー欄にご登場願うのは平塚雷鳥役の田中美里さんです。 小宮「意外にシンプルな楽屋ですね」 田中「飾りっ気がないでしょ」 小宮「いや、すっきりしてますよ(^0^)」 田中「なるべく荷物を少なくしたかったんですよ(^0^)」 小宮「確か同じマンスリーマンションなんですよね?」 田中「御園座出演で、マンスリーを借りるのは2回目なんです」 小宮「名古屋はマンスリーマンションが充実してますよね」 田中「ええ」 小宮「さて、ご自分の台詞で好きなのは?」 田中「3幕で言う”恋愛とは、男と女が命をかけてお互いを奪い合おうという戦です”。雷鳥らしい説得力があって好きです」 小宮「だろうと思いました。傷心の白秋に浴びせる台詞ですね」 田中「気持ちで言えるので、言い易いです」 小宮「言い難かった台詞もあるんですか?」 田中「2幕の行進の演説台詞はやり辛かったです」 小宮「そうだったんですか」 田中「出て、すぐに引っ込むし。これは何のためにあるのだろうって」 小宮「ハハハ」 田中「演説口調が多いので、真面目に”雷鳥”に拘り過ぎたのかも。晶子の登場の直美さんのスキップをを見てから考え方が変わりました。私の役は”雷鳥”ではなくて”雷ちゃん”ぐらいでいいかなって」 小宮「それで声を引っくり返したり」 田中「ヒステリックな感じでいこうと思って」 小宮「しっかり安土として受け止めてます」 田中「ありがとうございます」 小宮「本番で吹きそうになったことは?」 田中「2幕2場。青鞜の女性たちが先に帰るときに、出ている役者にしか聞こえない程度の声で”通れるかしら?”とか直美さんがアドリブで言うんです。 そこが危ないですね(^0^)」 小宮「それ松金さんも同じようなこと言ってました」 小宮「本番で困ったことは?」 田中「自分が早口じゃないんで、演説口調の台詞は今でもかんだりしますね(^0^)」 小宮「1幕1場で去り際に”フンッ”と言って出て行きますね。あれは稽古場ではやってなかったでしょ?」 田中「須賀子に対して最初からライバル心をめらめら燃やしてるんです。そしたら自然にああなりました」 小宮「今は、あれが芝居のツカミになってますもんね(^0^)」 小宮「和田憲明さん演出のウォーキングスタッフの芝居に出てますよね」 田中「はい。2年前」 <注>演劇プロデュース公演のウォーキングスタッフは私の舞台歴「A2」を参照あれ。ちなみに香川さんも出演経験があり、「ソリッド」というその作品は読売演劇賞を受賞しました。 小宮「憲明さんと宮田さんの演出の違いを端的に言うと?まず憲明さんは?」 田中「厳しいのはもちろんなんですが、感情を大切にします。冷静な演技を嫌いますし、微妙な差を見抜かれますね」 小宮「私は舞台初日に最高のテンションでやったら”良い感じですねえ。で、もっとテンション上がりますよね”と言われて倒れそうになったことがあります(^0^)」 田中「毎日新鮮でないと駄目なんです。ハプニングも喜びますね。それを大事にしようとします」 小宮「宮田さんは?」 田中「今回は自由にやらせてもらっています」 小宮「何か宮田さんからアドバイスは?」 田中「私、感情が繋がらないと進めないタイプなんですよ。最初の場面で森田草平との心中事件を暴露された気持ちをどうしようかと迷っていたんです。」 小宮「フンフン」 田中「そしたら宮田さんが、”あーら伝わっちゃったの”という気持ちで、笑いながら大人の対応したらどうでしょうと言ってくれたんです」 小宮「なるほど」 田中「それから楽になりました」 いつでも洋装の雷鳥さん。鏡の前でふと振り返ってもらったら、これがベストショットになりました。 ウォーキングスタッフの芝居では、この日記の新歌舞伎座篇に登場した石井オフィスの後輩の鈴木省吾くんを相手に妖艶な場面も演じてました。 7月14日(金)全国的に青空の猛暑。今夏一番の暑さ 昨日の夕方は夏らしい入道雲を見た。そして今日は朝から陽射しが強い。劇場までの道のりに木陰を選んで自転車のペダルをこいだ。御園座近くの白川公園には緑が多い。木陰を吹く風の何と涼しいことであろう。でも一旦、日なたに出ると溶けたアイスクリームみたいな気分になる。 子役Aチームの御園座初日。なかなか元気である。元気が良過ぎて手に負えないこともあるが、”小宮さんが本当に困っているようで、そんな感じが面白い”と野々村のんさんに言われた。 1幕1場では直美さんが鉄幹の部屋まで乗り込んだりして大暴れ。香川さんを始めとして、皆さん笑いを堪えながら熱演。 直美さんのこの頃のアドリブは、役者のアドリブの域を超えて、まるで作家のようである。単なるワンフレーズ:文節ではなく、文章:ワンセンテンスになっている。例えば終幕で鉄幹に力説する夫婦の隠し事のない絆の件では、”私は馬鹿正直ですから嘘がつけません。口が嘘を言っても、顔に正直に出てしまいます”とか、同じ3幕1場で啄木のお香と煙草の煙の件の”これは言えんわ。こういう時はもう煙に巻いてしまいましょう”とかである。そういうのが用意した台詞でないとしたら、やはり天賦の才の持ち主なのだろう。 終演後にプライベート英会話レッスンに行く。前回と同じ先生。夏休みに何をするかなんて話題から始まる。私は先生に沖縄でのスキューバ・ダイビングを薦める。こう見えても、私は結構経験豊富なダイバーであります。 こんな英語の格言(Proverb)も習いました。 Every penny makes a pound. ”1円が集まって100円になる”つまりは”塵も積もれば山となる”というような意味。 An apple a day keeps the doctor away. ”1日1個のリンゴで医者要らず”つまりは野菜や果物(ビタミン)は健康には大切の意味。 7月13日(木)今日は午後から久しぶりに晴れた。でも夜は雨 今日は内容がとても長いです。悪しからず。まあ、心して読んでください。 今日で御園座の中日。 そして子役Bチームの千秋楽である。色々どぎまぎもさせられたが、今日はなかなかの出来でラストを締めてくれた。 休憩中に長男の光君が楽屋に来て”このDVDを見てください”と言う。昨日の日記で紹介した助六踊りの自作のDVDらしい。後できちんと返すからねと約束して預かった。可愛いいプレゼントだった。彼は今小学2年生だが、いつまでもこの夏のことは覚えていて欲しい。 そして終演後は休む間もなく、もう子役Aチームの舞台稽古である。 久しぶりに大阪からやってきた彼らは元気そのものだった。 2幕の花道登場の場面では思いっきり私の服を引っ張られた。 そうだ、このチームは加減を知らないのだった。 それはそれとして舞台稽古は元気そのものに立派に終わった。明日からまた新しい風が吹くわけである。 さあ、そしていよいよです。今回のW杯に釘付けだった岡本健一さんにインタビュー! 小宮「フランス対イタリア決勝戦は生で観てたんでしょ?」 岡本「もちろん、イタリアが勝つと思ってましたよ」 小宮「予想通りですか」 岡本「注目してたポルトガルも準決勝まで残ってたでしょ」 小宮「ええ、決勝戦はお互いカウンター攻撃が多かったですね」 岡本「良い試合は、早送りシーンのような感じがするんですよ」 小宮「なるほどねえ」 岡本「イタリアが勝ってよかったんですけど、後味が悪いよね」 小宮「頭突きですか?」 岡本「闘志をむき出しにするのはいいんだけど、僕はサッカーは良いチーム同士は尊敬しながらやるべきだと思ってるんですよ」 小宮「悪口雑言はいけないと」 岡本「イタリアが挑発してレッドカードを出させたようなもんですね。暴力さえ使わなけりゃ何を言ってもいいのかと。 MVPの投票もちょっとおかしいよね。決勝戦をやる前に結果が出したんじゃ意味がない。僕はイタリアのカンナバロが獲るべきだったと思う。」 岡本さんの話は止まらない。 ※このインタビューをした時点ではジダンの頭突き騒動は、まだそんなに大事件ではなかった。この後、岡本さんの不安を象徴するように事件はただの暴言と暴行から、ヨーロッパの移民問題にまで発展。簡単に収まりそうにない態である。 話はインタビューに戻る。 小宮「日本はどうでした?」 岡本「サッカーって国柄が出ちゃうんですよね。それぞれ主張がないといけないのに、日本人選手には意志がないというか」 小宮「中田選手の引退は?」 岡本「可哀想だったよね・・・」 と一言。その後は言葉を選ぶように語ってくれました。ただ、話が先日の松金さんとのアジアの話に引き続いて日本人論になりそうな気配になったので、私も話題を変えることにしました。 小宮「お芝居の話に移ります。自分の台詞で好きなのは?」 岡本「これまで色んな役をやってきましたが、いつでも自分にふりかかってくるんですよね。どんな役も自分に響いてくる。例えば白秋をやったとしても、鉄幹だったとしても同じでしょう。今回は啄木の台詞が言ってる台詞に自分を見るんです。だから、どれって決めにくいんですけど 今日芝居をやりながら”ああやっぱりこれは良い台詞だなあ”って思ったのは、3幕で晶子が白秋に言う”それでも人間は恋をすることをやめたり、ためらったりしてはいけないんです”とか”あなたの才能を、この地上から消し去ってしまう以上に深い罪はないのですよ”とか。いいよねえ」 段々話にエンジンがかかってくる。 岡本「雷鳥が言う”恋愛とは、男と女が命をかけてお互いを奪い合おうという戦です”もいいですし、1幕で須賀子が言う”男の戦争や学問より、女が子供を産むという大役に勝るものはない”とか”釈迦もキリストも、これすべて女が産んだのですよ”も良い。僕は昔から女性はすごいと思ってましたから、女性は尊敬してますよ。こういうのフェミニストって言います?」 小宮「うーん、この場合はどうだろう(^0^)」 小宮「ところで1幕3場で世の不平等に激昂する場面がありますよね。あそこはエネルギーが要ると思うんですが、体力維持は?」 岡本「あのくらいは平気です。2時間全場面あのくらいのテンションの芝居もやったことありますから」 小宮「蜷川の芝居?」 岡本「タイタスアンドロニカスはそうでした。例えば、僕こう見えて結構肩幅とか広いんですよ。啄木の印象で華奢だと思っているお客さんもいるんですけど、実はあれ肩を体の内側に入れて幽霊らしい印象にしたりしてるんですよ」 小宮「さすがですねえ」 小宮「直美さんが障子にぶつかる体当たりネタは毎回笑っちゃいますか?」 岡本「あそこ本当は笑うような場面じゃないんだよね。その後すぐに大事な台詞もあるし。でも悲劇を笑いに変えちゃう直美さんの力は凄いですよね」 小宮「喜劇と悲劇の関係はそういうのはよくありますよね。例えばぶつかるのは当人にとっては悲劇でしょ」 岡本「お客さんは、それを見てよろこんでるんだから。本当は笑う立場じゃないけど笑っちゃいますね」 小宮「なるほど」 岡本「でもあの場面は前後合わせて家族像が見える良い場面ですよ。晶子も自分より年下の夫婦を見て心変わりするするところですから。そういうのって年齢とかキャリアって関係ないと思うんですよ」 小宮「同じ土俵に立ったら、役者でも同じことが言えますもんね」 岡本「で、失敗とか全て有りだと思うんですよ。成功しなくてもいい。サッカーのように結果がはっきりするわけじゃないから、お客さんが喜んでくれればいい。 1ヶ月稽古して、1ヶ月舞台をやってきたんだから基本的に大崩れするわけがない。信じられる。 だからといって毎回安心感はないですよ。」 小宮「その辺は僕もよく分かります」 岡本「考えてみたら役者なんて、人前に出て行くおかしな商売ですよ。そういう意味では僕は客は意識しないです。 だから僕のやっている啄木は、御園座でやっても小劇場でやっても変わらないと思います」 今回の大阪&名古屋の旅の岡本健一必須アイテム。ニットの帽子、ベルト、サングラスの3点セット。普段着の岡本さんは、やはりミュージシャンらしき格好をしています。 舞台稽古終了後、私の一人芝居「接見」の岐阜公演のためにタウン誌の取材あり。 そして昼1回公演の今日は名古屋の食べ歩き。 今日のこの日記は、盛りだくさんの内容だ。 今日出かけたのは錦にある手打ち蕎麦の老舗”えびすや”さん。時間によっては手打ちの実演も見せてくれる。ここで私がお薦めするのは”海老おろし蕎麦” 写真が小さくて申し訳ないが、これがその”海老おろし蕎麦”。冷たいお蕎麦は、細くて”こし”があり、その上にドカッと大根おろしや鰹節がかかった大きな海老の天麩羅が乗っている。これは美味しい! 実は私が注文した蕎麦を待っている間に、私の後ろに強烈な客がやってきた。 背後の客は2人組。声から察すると、かなり年配のおっさんと若い女である。2人は”ほろ酔いセット”なんかを注文している。 男の方は、どえりゃあ名古屋弁である。 そして、どえりゃあ助平である。 どうしても耳がダンボになってしまう。 後に眼はないので顔は見えないが、おそらくクラブ同伴出勤の2人連れであろう。 まだ宵の口なのに、男は下ネタを言い出した。 挙句には”お前の時にはバイアグラを使うでよ”とか言っている。 女も女で”先生は、そんなもの要らないでしょう”と標準語だが下品に答える。 『そうか、先生なのか。議員関係だろうか?学校関係だろうか?それとも?!』と私の興味はますます膨らむ。疎蕎麦どころではなくなってきた。 話が半ば予想通り選挙関係の流れになってきた。ところがそこで向こうに注文の品が出てきて会話が途切れ、私も集中力を欠いてしまった。 ”海老おろし蕎麦”を食べ終わって、レジで勘定を済ませながら振り返ってみると、つるっぱげの爺さんと和服姿の30代のホステスだった。今ちょうど三島由紀夫の「金閣寺」を読んでいるところなので、小説の登場人物の老師を思い浮かべてしまう。しかし男の本当の仕事は何!?ホステスの狙いは何!?と、およそ蕎麦屋では考えられないような妄想に取りつかれて店を出た。 外は突然の雨が降り出し、夜の街を洗い流していた。 7月12日(水)今日も曇り空で蒸し暑い 今日は先月触れた駐車禁止の道交法の改正の話から。 週刊文春で愛読している山本一力さんの「にこにこ貧乏」の中に、こんな話を発見した。 東京の夜の銀座通りには、最近黒塗りのクルマがずらりと駐車しているそうだ。どのクルマにもドライバーが乗っており、偉い人らしき方を待っている。時々店の仲居さんらしき女性がお客様を誘導して乗車させている。 たとえドライバーが乗っていても、一車線分をクルマがふさいでいることには変わりがない。その車線はもはや道路ではない。 通りから下々の車を追い払い、空きが出来た場所を、”偉い人”の黒塗りが占拠する。ハイヤーのドライバーの方には申し訳ないが、今回の法律はこんなことをさせようとして改正されたのか。 要約するとこんな内容である。 予想していたことではないが、私の不安は的中した。物事の本質を見抜かぬ策を弄するとこんな弊害が起きるのであろう。ずるい奴はいるもんだ。 さて御園座の舞台はピュアに進んでいます。 今日は面白い事実を発見しました。 純大さんが出番の待ち時間に長男の光君を相手に、不思議な動きををやらせていました。何だろうと思ってみていたら、純大さんが”彼は歌舞伎の見得が得意なんです”と教えてくれました。お願いしたら、僕にも見せてくれましたた。なるほど上手い。人には隠された芸などがあるもんなんですねえ。絶好の被写体は、すかさず撮影! これが長男光君の得意の見得。これは助六という踊りの中にあるそうです。 そう彼は日舞を習っていたのです。 他の見得も得意そうに色々見せてくれました。そんな時に、いつもより元気度がアップしているのがとても可愛かった。 デジカメ撮影なので、シャープでしっかりした歌舞伎らしき動きがお見せできないのが残念です。 でも歌舞伎役者らしく、しっかり寄り目になっているでしょう。 7月11日(火)今にも泣き出しそうな空 本日もJA貸し切り。 昼のカーテンコールでは、お約束通り手拭でほお被りの泥棒姿になって米俵を持ち去ろうとしました。松金さんが気を利かして引っ張って止めてくれたので、私は舞台袖まで引っ込まずに済みました。 夜の部。”直美さんが壊れそうだ”と舞台監督の赤塚さんが舞台袖で一言。どういう意味だろうかと思ったら赤塚さんはニコニコと笑いを堪えている。舞台上では直美さんが笑いを堪えながら元気で舞台を努めている。お客さんは大喜びだ。皆さん気分は上々なのだろう。 夜の部では松金さんにご協力を頂いて、米俵泥棒捕り物帖風にまとめてみました。逃げようとした私は、最後は私が縄で縛られてしまうという小さなアトラクションです。 今日は北原白秋役の太川さんにお話を伺いました。 楽屋に入るとすぐに挽きたてのコーヒーでおもてなしを受ける。香ばしい香りの中でゆったりとインタビュー。 小宮「自分でポイントだと思う台詞は?」 太川「1幕、晶子と鉄幹の喧嘩の理由を白秋が問い質す台詞”日本の詩壇を代表する両先生の・・・(中略)・・・深い芸術の軋轢が・・・”云々」 小宮「僕も少し相談を受けたところですね」 太川「商業演劇としては喧嘩の理由の答えを、お客さんに期待させなけりゃという思いが大きくて、なかなか白秋の本心として台詞が喋れなかった」 小宮「演出の宮田さんも伝言ゲームの馬鹿馬鹿しさの後に、師匠鉄幹への弟子たちの真摯な思いを表す切り替えのポイントだと言ってましたね」 太川「今はお客さんと自分のための両方の意味で言えるようになりました」 小宮「本番で吹いてしまうことは?」 太川「僕あんまり吹かないんですよ。でも本当は弱いんですよ。自分でアドリブを仕掛けようとして、失敗して墓穴を掘ることもありますし(^0^)」 小宮「伝言ゲームで直美さんが新聞を丸めて”アーアー”とやったら、同じようにやり返してますよね」 太川「突然本番であんな風にきたんで思わず返したんですけど、直美さんもビックリした顔してましたね」 小宮「あの伝言ゲームでは本当に何か話したりしてるんですか?」 太川「香川さんは実際に言ってますね。でも純大さんで途切れちゃうんです。」 小宮「一番目じゃないですか。早過ぎる(^0^)」 太川「伝わってきたのでは”菅野須賀子の3サイズを教えろ”というのがありましたね」 小宮「匠さんに言ったんですか?」 太川「ええ。彼女は笑い出しました」 小宮「アドリブには慣れてるようですが」 太川「大地真央さんが意外にアドリブ好きなんですよ。大地さんがアドリブを言う時は”今からいくぞ”というような眼をするんですね。それに答えるわけです」 小宮「本番中に困ったことは?」 太川「先に本棚が倒れていたことですね」 小宮「先月の記事でした」 太川「結構打ち身とかはあるんですよ。棚が1枚おでこに当たったこともありました」 小宮「気をつけてください」 太川「大丈夫です!」 小宮「ところで読書好きのようですが」 太川「大阪公演中に10冊読みました」 小宮「どんな本を読んでるんですか?」 太川「今は東野圭吾のミステリー。『容疑者Xの献身』がお薦めです」 小宮「普段もミステリーを?」 太川「いえ。舞台の本番中には本も全然読めなかったんですよ。ずっと芝居のことを考えて読めなかったんです」 小宮「なるほど」 太川「この頃、やっと心の切り替えが出来るようになりました」 小宮「じゃあ北原白秋の役は自分のものになってきたという感じですか?」 太川「きちんと描けてるかどうかは別として、大阪公演の後半から分かってきたことがあるんです」 小宮「何ですか?」 太川「すごく基本的なところをそれまで分かっていなかったのが”あー、そうか”って感じで」 小宮「何?」 太川「ヒミツです」 小宮「聞きたいな」 太川「言うと”そんなこと分かってなかったのか”て言われそうなんで」 小宮「じゃあ秘密で」 太川「お願いします」 3幕の傷のメイクをする太川さん。リアルな傷を作る映像用のかなり凝ったメイク道具である。 もちろん最初は専門のメイクさんがやってくれていたが、今では自分で出来るようになったそうだ。 ところでご家族が名古屋に来ているそうだ。長男のひろき君(5才)が楽屋を走り回っていた。子役の子達とも仲良くなったようだ。 昨日はひろき君のたっての希望で名古屋場所の相撲を砂被りで見たそうだが、その迫力に圧倒されて、ひろき君は相撲が途端に嫌いになってしまったらしい(^0^) 7月10日(月)曇り空の蒸し暑い日が続いている。 サッカーW杯終了。イタリアがPK戦でフランスを破りチャンピオンに。朝4時頃起きて生で見続けようと思ったが、眠気に勝てず後半1対1のところで再び床に入る。 結果は9時のニュースで知った。もちろん岡本さんは観戦していたのだろう。その辺もいずれインタビューだ。 舞台は大きなハプニングもなく続いています。 本日もJAの貸し切り。 カーテンコールで私が米俵を担いで”泥棒!”と直美さんに発見されるパターンが定着してしまった。直美さんは、こういう観客サービスが好きなので”小宮さん。明日は本当の泥棒の格好になって”と指示される。さて、どうしたものやら? 昨日辺りから名古屋の新聞に劇評が載り始める。もちろん好評。私のこともチラッと書いてあったりして、やっぱり嬉しい。 これは大阪の画像なのだが、こうやって楽屋裏の廊下に劇評が張り出されたりして、出演者が読むわけである。 本日も昼の部1回公演。 今日は名古屋に住む従兄弟の店に遊びに行く。従兄弟は桜山という駅の近くで居酒屋さんをやっている。名古屋には私の母方の親戚が多く、子供の頃からお互い行き来をよくしていた。久しぶりに会って、40年ほど前の夏休みの記憶などが蘇る。 7月9日(日) 朝から劇場前に大勢お客さんが並んでるなあと思ったら、今日は昼夜ともJAの貸し切り公演だった。客席はいつもに増して満員。 それだけに香川さんが、じゃが芋の”芽”と”目”を勘違いするギャグに反応が大きかったように思えたのは私の気のせいだろうか。 もちろん直美さんも、JAギャグのアドリブでサービス。 カーテンコールでは花束と一緒に米俵のプレゼントもあった。丁度今日から始まった大相撲の優勝式のようになる。 私がその米俵を担いで雰囲気を盛り上げようとしたら、すかさず直美さんに”泥棒!”と叫ばれてしまう。思わぬ展開に、私も本気になって”私は警察だ!”と反論してしまった。それが実に微笑ましい幕切れとなりました。 さて今日は、与謝野家のお手伝いさん”お千代”役の野々村のんさんにインタビュー。 小宮「本番中に着替えの回数が多いですよね」 野々村「着替えが7回。着てる着物は5枚です」 小宮「主役級の量ですね(^0^)」 野々村「演出意図としては、千代の着物の違いで季節や時代が変わったのを現してるみたいです」 小宮「では、これは皆さんに聞いてますが、自分の台詞で好きなのは?」 野々村「えー!?鉄幹の台詞なら」 小宮「どれ?」 野々村「3幕の”平野君だけだよ。そう言ってくれるのは”」 小宮「どうして?」 野々村「その台詞を聞くと優しい気持ちになれるんです」 小宮「でもパリのサロンでは鉄幹は平野の名前はおくびにも出さないんですよ」 野々村「そんな鉄幹が平野に優しい言葉をかけるのがいいんです」 小宮「自分の台詞で気になってるのは?」 野々村「2幕の行商さんたちとの場面で、鉄幹に”返事”というところがちゃんとは腑に落ちてないんですよ」 小宮「そこですか」 野々村「”間”とか言い方とか」 小宮「2つとも意外なところだなあ」 小宮「今回の本番中で一番笑ったのは?」 野々村「私は出てなかったんですけど、純大さんが”あんたあんたあんた”と言った時には笑いました」 小宮「この日記でも大ヒット記事でした」 野々村「私、こんな風に(実際やってみせてくれる)こけましたから」 小宮「困ったことは?」 野々村「大阪の初日の幕開き。舞台の声より、お客さんのざわざわ声の方が大きくて困りました」 小宮「商業演劇では、始めはまだ客席が落ち着かないんだよね」 野々村「ちょっとカルチャーショックだったかも。御園座では静かに聞いてもらってますね」 小宮「共演者でショックを受けた人は?」 野々村「香川さん。以前から、どうやって芝居を作る方なんだろうと興味がありましたから」 小宮「どんな風に感じました?」 野々村「武器を持たずに、素手で闘っているイメージですね」 小宮「なるほど」 野々村「傷だらけになっても、内側から気持ちを立ち上げていく」 小宮「と言うと?」 野々村「(芝居を)作りこんでしまうと傷つかないじゃないですか」 小宮「これは深い」 舞台袖の階段にちょこんと座っている姿を、下からあおって撮影。 この着物が一番ピタッとくるので好きなんだそうです。 着替えで忙しい中の休憩時間は何してるの?という質問には”お菓子を食べてます”との答えでした。 ちなみに相当な芝居好きで、休みはほとんど芝居を観ているみたいですね。私も初台の新国立劇場でよく会いました。 階段の下から寝っ転がって野々村さんを激写していたら、周りの人に”盗撮男よ!”と騒がれて、挙句に衣装さんからご覧のように私が盗撮されてしまいました。 7月8日(土)朝から暑い 数日前から出演者用のエレベーターのドアに”あなたの未来を占います。黒塚のペンライト占い”なるチラシが貼られている。”25歳以下の女性は無料”とも書かれているが、そもそもペンライト占いとは何だろうか? 怪文書の主の正体は舞台監督チーフの赤塚さんだった。本格レベルの手相見の趣味を持つ赤塚さんが、飲み会で居合わせた出演者やスタッフの手相を見ているうちに大々的になったらしい。聞けば申込者が殺到しているという。公演が長くなるとこんなイベントもあるのか。こういうものには参加するっきゃない。早速私も見てもらった。 赤塚先生によれば、今回大勢の方の手相を見た中で極端に生命線の短い人には黙って内緒にしておいたという。またある若手男優さんの場合は、手相があまりに貧相なので”あまり手相など気にしない方がいいね”と言って、多くは説明しなかったそうだ(^0^) ちなみに私の時は左手(手相学的には右利きの場合は反対の左手が、その人の過去の運勢を示すらしい)を見て”小宮さん、素晴らしい強運の持ち主ですね”と感心された。確かに私の左手の運命線は長い。次に未来を示す右手を見て”自分で自分の運をつぶしてますね”と唸られた。ありゃりゃ! インチキ診療所ではありません。これが赤塚さんのペンライト占いです。 ペンライトは舞台監督の必需品。まさかこんな利用法があるとは?! 今回見てもらっているのは、餅屋役の I さん。私とかなり似た手相だったそうです。 7月7日(金) 七夕にインタビューするのは、この方です。 劇団テアトルエコーの先輩である松金よねこさん!どうぞ!。 小宮「猫がお好きなんですね(楽屋には猫グッズがちらほら)?」 松金「これは(吊るし雛のような和猫ぬいぐるみを指して)は、”るばる”の3人用に京都で買ったの」 <注>”るばる”とはよねこさんと岡本麗さん、田岡美也子さんの女3人の芝居のユニット。今年ですでに20周年の歴史がある。私もゲストで出たことありますよ。 松金「家ではトラという名前の猫を5代にわたって飼ってるの」 小宮「全部トラとはすごい」 小宮「で、ご自分の台詞で一番好きなのは?」 松金「それは3幕で幽霊になったカツが言う”暮らすていぐつうことは戦も同じだがら…んだども、今になっで見るど、ただ”暮らすていく”つうごとも、あれでながなが捨てたもんではねえ”。」 小宮「パンフレットにも書いてらっしゃいますよね」 松金「フツーに生きていられることの大切さを思い出させてくれます。北朝鮮がミサイルを7発も発射する時代よ」 小宮「あれは暴挙でしたね」 この後は竹島や尖閣諸島問題、日本のアジアでの危うい立場まで話は広がる。”強気に出られない日本、そんな日本は私たち自身かもしれないわね”と、よねこさん。私も思わず頷いてしまう。 小宮「さて、本番で笑いそうになったことは?」 松金「毎回、直美さんと絡むのが怖いの」 小宮「どういう意味ですか?」 松金「吹き出しそうで。でも吹きそうになった時は、私泣くんです」 小宮「え?!」 松金「笑うのと、泣くのは行為が似てるでしょ」 小宮「はあ」 松金「私が舞台で意味なく泣いている時は、笑いを堪えている時なのね」 小宮「面白いですね」 松金「私には必死の策なんですよ。でも知り合いには”また泣いてたね”とよく言われます」 小宮「へえー(^0^)」 松金「この技を使うのには、ちょっと年季が要るのよ。自慢にはならないけど(^0^)」 小宮「なるほど」 小宮「今回の舞台で困ったことは?」 松金「1幕でアンパンを見つけるところで、アンパンがちゃぶ台の上に無かったことがあって。”どこにあるんだろう?”とか”代わりに次に何の台詞を言おう”とか一瞬の内に考えたわね」 小宮「それは分かります。瞬間に色んなこと考えるんですよね」 松金「純大さんは絶対に置いたって言うから、謎なのよね」 小宮「どうだろう?」 松金「何日か前に、1幕の3場で純大さんが、めまいを起こした晶子に”暑気当たりですか”と言うべき台詞を言わなかった時も瞬間に言い方を変えようとか思ったわね」 経験豊富な松金さんからは野田秀樹、柄本明、樹木希林さんから、商業演劇まで色んな話を聞くことが出来ます。 2幕でカツさんが”ドブにはまって、犬に蹴られた”直後の舞台裏での写真。こんなところの写真でも快く撮らせてくれました。でも可愛いですね。 「るばる」は11月に本公演があります。作はラッパ屋の鈴木聡さん。演出は自転車キンクリートの鈴木裕美さん。この秋、注目の芝居です。 昼のマチネ1回公演の日は名古屋の街を食べ歩きです。 本日は名古屋名物”味噌カツ”! 味噌カツといえば、矢場町にある”矢場とん”が有名。行ってみたら、意外とマンションに近いので驚きました。5年ぶりくらいに来店しましたが、場所がちょっと移動して交差点の間近の綺麗なビルになってました。早速名物の”わらじとんかつ”を注文。やっぱり美味しい。他で食べた味噌串カツみたいに甘過ぎない。自分なりの味付け用にゴマや唐辛子に洋辛子もあって楽しい。心配していたボリウムも多過ぎずに食べ切りました。 以上、お店紹介!俺は食べ物レポーターか?! さらに今日は英会話教室へ。 一昨日見つけた学校で予約をしておいた1時間のプライベートレッスン。先生はシェークスピア生誕地ストラットフォード近辺出身のイギリス女性アンさん。自己紹介から始まって、イギリスで有名なTVコメディ「The Office」や「Little Britain」の話もする。日本でその番組を知っている人に出会ったのは私が初めてだそうである。 レベルチェックも済んだので、次のレッスンも彼女でお願いする。 帰り際に "See you again. Why don't we go for a drink together after next lesson?" 「今度はレッスンの後に飲みに行きましょう」と丁重にお誘いする。彼女も”OK”と言ってました。授業よりも、普段の会話で失敗を気にしないで喋る方が勉強になったりするのだ。純大さんを始めとして、今回の座組みには英会話に長じている人が何人かいるので誘ってみようかと思う。 7月6日(木) 喫茶店の店先に”かき氷”の暖簾を発見。夏だ! 御園座の舞台は平穏無事に続いています。 開演前の劇場入り口には「滋賀観光」のバスも到着します。動員の守備範囲の広さにちょっと驚き。その昔、うちの石井光三社長から”名古屋の御園座の営業はすごいでー”と教えられたのを思い出しました。 出演者の皆さんも慣れてきたので快調です。 数日前に喉の調子が良くなかった純大さんも回復しました。 直美さんの”かぶれ”クイズの変化にも純大さんは対応してます。 岡本さんのヨーロッパ勢のW杯観戦も続いているようです。 暑い名古屋で「妻をめとらば」は続いています。 そんな平穏とは裏腹な大事件が起きる。 彦星と織姫が七夕の天の川を渡る前に、日本海を北朝鮮のミサイルが渡らんとした。 この事件の新聞記事に目を奪われていたら、一瞬出トチリしそうになった。ミサイルの影響が劇場内にいる私にまで及ぶとは! 昨日劇場からの帰りがけに、小さな語学スクールを見つけた。色々聞いたら短期のレッスンもリーズナブルな値段で受講が可能だという。こいつは発見だ。 7月5日(水)どんより曇って雨模様 出演者インタビュー第2弾! 今日は佐藤春夫役の木下政治さんに直撃です。 小宮「男っぽい楽屋ですね」 木下「散らかってるということですか?」 小宮「僕も同じですけど、まあ、そういうことです(^0^)」 木下「ハハハ」 小宮「最初の質問は、一番好きな自分の台詞は?」 木下「どれかなあ、鉄幹の台詞には好きなのがいっぱいあるんですよね。終幕の”お前を妻にすることは、歌を妻にすることだった”とか」 小宮「それ、僕も好きです。自分の台詞で気に入ってるのは?」 木下「うーん、どれかの台詞というより、今回の役は一歩引いたところで周囲を見ながら客観性を持っていたいと思っています」 小宮「メインキャスト全員と絡む役ですものね」 小宮「舞台で困ってしまったことは?」 木下「子役の子達ですね。どこへ行くのか、どのタイミングなのか分かりませんから」 小宮「直美さんのアドリブで吹き出してしまうようなことは?」 木下「僕、基本的に吹きません。そういうもんだと思ってますから」 小宮「それ僕も似てます」 木下「でも1幕3場で”鉄幹がセミの死骸を持って引きこもっている”と言われた時には、舞台袖に引っ込んでから笑いましたね。」 小宮「この日記でも書きました」 小宮「ちょっと変わった質問です。出演者の方を一言で例えると。まず直美さんは何?」 木下「山ですね」 小宮「なるほど、じゃ香川さんは水かな?」 木下「そう、川ですね」 小宮「うまい!岡本さんは?」 木下「風」 小宮「太川さん」 木下「若葉。みずみずしい感じですね」 小宮「匠さん」 木下「百合」 小宮「田中美里さんは?」 木下「たんぽぽ。実は彼女とは2年前の御園座でも一緒でしたし、共演は3度目です」 小宮「出番前に話をしてたり、仲良いですもんね。純大さんは?」 木下「海」 小宮「松金さんは?」 木下「ある種、役者の理想形だと思っています。尊敬できる方ですね」 小宮「では聞きにくいんですけど、私は?」 木下「僕、MOPでのマキノノゾミと僕の関係、それに星屑の会での水谷龍二さんと小宮さんの関係は似てるんじゃないかと思っているんですよ」 小宮「なるほどね、実は僕も今回の佐藤春夫のような芝居のベース音を担っているポジションをやることが多いので共感を持ってたんですよ」 木下「そうでしょ」 小宮「だから木下くんが平塚明子に無視された時とか、須賀子の艶っぽい台詞に反応して股間を押さえたりするリアクションが実は好きなんですよ」 木下「ありがとうございます」 と、この後はお互いに度々頷きながら話は続いたのです・・・ この芝居では、ずっと大学生のままの木下政治さん。この芝居の脚本家であるマキノノゾミさん主催の劇団MOPの中心メンバーです。おそらく久しぶりに学生服を着たでしょう。余談ですが、その昔はコントと言えば学生服が定番でしたので、例えば石倉三郎さんはコントレオナルド時代には40歳過ぎても着てましたね(^0^) 最近、カーテンコールの時にお客さんが手拍子をしてくれることが多い。音楽に合わせて手を打とうとしているのだが、何せデキシーの曲が速い。お客さんの年齢層は高い。当然途中から手が間に合わなくなって、バラバラになってくる。それが妙に可笑しい。不謹慎ですが、可笑しい! 7月4日(火) 今日は舞台で使っている小道具を公開します これは行商の魚屋さんが使っている鰹。背びれも尾びれもピンとして、青い色やお腹の側線も活き活きとしている。良く出来た逸品。 ただしもう1匹、下の魚もご覧あれ。 これが駄目魚。これだと何の魚か分からない。 作者には申し訳ないが、下手な絵のようだ。魚屋役の工藤さんも、こっちは見せないそうです(^0^) それでは、今日は行商の方たちもご紹介しましょう! 舞台下手(客席から見て左)から 鋳掛け屋(いかけやと読む。壊れた鍋底などを直す鍛冶屋のようなもの。上方落語の「代書屋」でおなじみ。演じるのは最若手の秋山くん) 乾物屋(演じるのは商業演劇ベテランの植松さん。道具を組み立てて売り場を作るので、その扱いが難しいそうです) 豆腐屋(演じるのは姉御肌の藤吉さん。豆腐屋の品物が一番売れてるのに、実は芝居中でお金をもっらっていないと一言) 八百屋の八百源さん(演じるのは曾我廼家玉太呂さん。松竹新喜劇のベテランで直美さんとは仲良し) 肉屋(見た目で職業が分かり易い白い帽子をかぶっているのは松川さん。青年座の座員である。一度も肉を買ってもらっていないと愚痴っていた) 魚屋(大阪の達人の工藤さん。さっきも言ったように、良い姿の鰹しか見せないそうです) 餅屋(演じるのは料理の達人の一木さん。小道具を倒したり、餅の箱をひっくり返したり大変だそうです) 雑貨商(東京の若手劇団「ぺてかん」の座員の大治くんが、広いおでこを光らせながら演じています) 改めまして、これが行商のメンバー。一番左は餅屋さん。左の上は肉屋と雑貨屋さん。下に乾物屋さんと八百源の息子。中段左から豆腐屋、鋳掛屋、魚屋さん。ご確認ください。皆さん昨夜の宴会でリフレッシュして元気に舞台を努めていました。 本日は昼1回公演だったので、錦の鰻の名店「いば昇」で夕飯。定番の櫃まぶしを食べました。やはりここの櫃まぶしは美味しい。鰻は東京と違ってこんがり焼いてあります。それが櫃まぶしに丁度良い。この櫃まぶしには食べ方があって、3回に分けて食べます。1杯目はそのまま。2杯目は薬味のネギを混ぜて、3杯目はネギとわさびを混ぜてお茶漬けにします。今日は2杯目辺りで満腹気味でした。 ただし、うな重だったら東京のように蒸した方が私は好きです。 7月3日(月) 突然だが、名古屋は信号が長い! 交差点で信号待ちをしている時間がやたらに長い。道路が広いから仕方ないのだろうか?でも、さほど大きくない道の信号が変わるのにも時間がかかる。東京では、こんなことはないと思う。それに押しボタン式の信号もあるから、そんなに待たない。こちらに来てから何回も信号の側で押しボタンを探したが見当たらない。郷に入っては郷に従えであるが、せっかちな私は待ちきれない。 そして名古屋のどて焼きと味噌串カツは甘い! 本日、手羽先で有名な「山ちゃん」で興味本位で頼んでみたが、甘くて困った。 実は今日の夜はその「山ちゃん」でほとんど全出演者とスタッフの集まる大宴会があった。総勢50名近く。こんなに大勢集まったのは初めてである。 最初こそ普段仲の良い人同士で固まっていたが、酒が進むにつれて席が乱れてワイワイであった。私も普段はあまり話す機会の少ない直美さんのお付の方とか、行商の皆さんとかと楽しく盛り上がった。盛り上がり過ぎて細部は憶えていない(^0^) 鋳掛屋役の秋山君が蕪木刑事の横堀さんに熱心に演技の話を聞いていたような… とにかく楽しい夜でした。 口惜しいのは飲んだ後にラーメンを食べてしまったことです。酔った後の食欲は恐ろしい! 近日中に行商の方たちの紹介もしましょう! 7月2日(日) さあ、いよいよインタビューシリーズを始めます。 最初に登場願うのは匠ひびきさん。私の楽屋とは違って、元宝塚らしい素敵な花園のような楽屋で話を伺いしました 小宮「まず今回の芝居で一番好きな自分の台詞を教えてください」 匠「パンフレットにも書いた”七度生まれ変わっても、七度同じことをするわ”ですね。普通は”次に生まれ変わっても”でしょ。それを”七度”と言うところが須賀子の情念のようで好きです」 小宮「なるほど。稽古場から通して、今回一番気をつけてることは?」 匠「幽霊として、どう映っているのかが気になります。晶子を励ましに来ているんですから、あまり面白可笑しくなり過ぎないようにと」 小宮「台詞を時々間違えたりしてますが」 匠「”そんな女に惚れた女の身になって”と言ってしまったのは大失敗でしたね(^0^)」 小宮「知ってます(^0^)」(新歌舞伎座日記の6月17日を参照あれ) 小宮「本番中に困ったことはあります?」 匠「2幕で直美さんが青鞜の婦人たちに言う”別嬪さん”以後の色んなアドリブに笑ってしまいそうで、私は幽霊ですから」 小宮「でも楽しそうですね」 匠「色んな人と舞台で絡めるのが嬉しいです。とってもリラックスしてやらせてもらってます」 お芝居のように、きちんと質問に答えていただきました。芸は人なりですね ちなみに飲んでいたお茶はファンの方から頂いたという伊藤園の”極匠”。名は体を現すではなく、名はお茶をも現す徹底ぶり。 着替えを済ましたばかりの匠さん。鏡越しの姿もきちんと凛々しい。 もちろんこれは1幕1場の衣装。元気な時の菅野須賀子ですよ。 7月1日(土)じめっと暑い 名古屋御園座公演初日。 10時半から舞台で座内だけの初日の挨拶。香川さんの言葉「80回の公演をそれぞれ1年1年だと思ってやってきました。今ちょうど40ステージ、40年目。私も40歳。これからどんな未来が来るのか楽しみです」。うーん、良いこと言うねえ。 今日の公演だけでは計れないが、総じてお客様の年齢が若い。ただ客席が広いためか反応はやや渋めだったように思う。動きが変わった分、皆さんも丁寧に演じていたように感じた。 舞台はスムーズに進行し、その後を見守っていた新歌舞伎座の方も満足そうだった。 今日は舞台セットの一部をお見せします。 舞台上手セットの上方に大きく書かれた「妻をめとらば」の歌詞。舞台美術家の石井強司さんのデザイン。晶子の「みだれ髪」の本の装丁をあしらってある。これも不勉強だったが、私は”妻をめとらば才たけて”が鉄幹の作詞だとは知らなかった。でも若い出演者に至っては、どうもこの歌自体を知らなかったようだが。 この歌が実は20番ぐらいまであることは、ほとんどの人が知らなかったでしょう。 6月30日(金) ホテルと違って、朝の部屋が明るい。小雨模様なのに、窓が多いから明るいのだ。 11時半から劇場舞台でお祓い。 今日の神主さんは”声がよく通るわね。きっとどこかで訓練してるのよ”と女優陣に評判だった。確かに”おーーーーー”と一息の長い声に私も感心した。役者に感心されるとは、おそろしい神主さんである(^0^) 午後1時から舞台稽古。 基本的に芝居は全部通して、場面転換を繰り返してやる。御園座は盆回しの回転舞台なので、そこが新歌舞伎座と大きく違う。ここでは暗転つなぎの場面も出てきた。人や道具の流れも当然大きく変わっている。さらに舞台の奥行きが深くて、間口はやや新歌舞伎座より狭い。出演者の動きも変わらざるを得ない。 出番でない場面を久しぶりに生で見た。楽屋のTVモニターでは気づかなかった芝居の変化が多いのにちょっとビックリした。直美さんの客つかみのネタがいっぱいだ。 それに今日は本番ではないので、今日だけの気楽なアドリブも飛び交う。ちょっとだけお教えすると、例えば1幕の伝言ゲームの場面。直美さんはひそひそ話なのに大きな声で衣装さんの私生活を暴露していた。内容は・・・ヒミツ。 2幕の登場で何故だか女の子が舞台で泣き出した。飴を落としたのかな? 他の子も光るくん以外はちょっと集中力を欠いていた。ま、稽古のことだし、ご愛嬌。 そういえば花道も若干長い。一番下の子が私の側まで到着するのに時間がかかった。 御園座は何と明治時代に出来た劇場である。これは百年以上前の最初の劇場の写真、劇場廊下の壁に資料と一緒に展示されていた。その後戦災やら何やらで何度か作りかえらたらしい。由緒正しい劇場なのである。以上御園座豆知識。 稽古終了後は自転車で街を散策。色々物色して回る。初めての景色はなかなか楽しいもんだ。 6月29日(木)名古屋入り ここ数日久しぶりに東京で過ごし、雑事を幾つか済ませる。 1ヶ月ぶりの東京は木々の緑がすっかり深くなっていた。 5月の終わりの頃にはまだ若葉の色が残っていたが、今は近所のバス停の側に立っているすずかけの葉も青黒く重なり濃い影を落としていた。 それにしても東京も暑い。 夕方の新幹線で名古屋に向かう。 車中で、先日から読んでいた夏目漱石の「それから」をやっと読破。 鉄幹と晶子に続いて、明治の近代文学に親しむ。 明治の知識人の恋心を時に内に深く静かに、時に激しく描いて素晴らしい。後半は一気に読みきった。 6時過ぎに御園座に着くと香川さんや松金さんも楽屋作りに来ていた。 違った部屋で新たに模様替えだ。 さて、大阪ではホテル暮らしだったが。 名古屋ではマンスリーマンションを借りてみた。これは初めての体験である。入ってみると、なかなか広くてきれいな部屋だった。まだ新築のような匂いもする。インターネットも使えるし、劇場通いのために自転車も借りた。ちょっと名古屋暮らしが楽しみだ。 |