html> 小宮孝泰の展覧会のえ!?
 



「黒帯 kuro-obi」撮影日記

10月4日。私のロケ入り初日である。でも撮影は始まって2日目。
先月のうちに監督の立会いの下にリハーサルはあったが、久々の本格的な映画なので緊張の初日である。
いきなり眼の前で、憲兵隊の一人が主役の大観(中達也さん)の顔面正拳突きで口から血を吹き倒れた。本当に失神していた。どうやら倒れた人は中さんの空手道場の弟子らしい。だから再び起き上がった彼はケロッとしていた。驚きの連続。
夕方から明日のアクションの段取り稽古。道場の中で大観に次々と倒されていく憲兵隊たちの場面。ところが予定にない稽古だったので、しかもこの方々は弟子ではなくアクションの得意とされる俳優さん達だった。彼らは防護用具も着けていなかった。かなり本気のアクションになり痛そうだった。今日は驚きっぱなしである。

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これが今回の私のイメージ写真。
将校に弱く、一兵卒に強い。いわゆる下士官根性丸出しの大文字という役である。
凛々しくも見えるが、実は太め(^0^)



10月5日。私の撮影は2日目。
天気予報が少しずれて雨が遅れたので、午前中は撮影可
若き空手の達人、義竜と白竜さんの闘い。剣の使い手の谷原(白竜)も歯が立たない
閉め切った神社で軍服を着たままの白竜さんは汗だくであった

午後雨脚が強くなる。雨音が気になると監督が注文を付けると、神社の屋根にかけた照明用のシートに雨だれよけの雨樋をすぐに作るスタッフたち。映画作りの現場はまさに臨機応変な手作業である。きっとこれが日本流の映画作りであろう

日が傾き始めた頃から境内は暗くなり、10月初旬とは思えない冷え込みになる。出番待ちの俳優部は軍服の上に毛布を着込んで待機する時間が長く続く
昨日、突きと蹴りを入れられた憲兵隊の2人は朝から夕方まで出番がなかった。
その昔、田中絹代が出番の待ち時間に気を使ったスタッフに“田中は今営業中です”と言ったという逸話が頭に浮かぶ。高倉健さんも待ち時間でも絶対にだれないそうである。

そして雨のためシーン13、私の台詞の場面も後日の撮影となる。
午後7時撤収。雨の中を、送迎バスが夜の東名高速を渋谷に向かって走り出した。


10月12日(木)私は撮影3日目、全体では撮休も含めて10日目
前回の寒さとは打って変わって暖かい。日中は汗ばむほど。
軍服の下には汗取りのシャツしか着なかった。

大和田伸也さんの撮影初日。リハーサルではお会いしていたが、やはり緊張する。
今日は捕まえて来た娘たちに逃げられて、憲兵隊長の大和田さんに殴られるところから開始。といっても主人公の空手の達人たちのように本気で殴るわけではない。そんなことしたら慣れない私らは壊れてしまう。
それでも博打場の賭場の上で殴られて転びまくる。アクションアドバイザーの方から指示があり、殴られた直後にカメラ向きに大きくの振り返ることにする。本番は上手くいったと思う。
賭場を仕切るヤクザ役の阿南健二さんとも初顔合わせ。他の組の方たちとも。中に昔タケシさんの物真似をやっていた”ミートたけし”がいた。懐かしかった。道劇時代によく一緒に遊んでいた。
昼飯時に大和田さんらと英語の芝居の話で盛り上がる。
大和田さんは昨日まで別の撮影(昼ドラかな?)が入っていたそうで、まだこの映画のモードに成り切れていないそうだ。と言いながら役作りには力が入っていた。
今日は午後早めに私の撮影が終わる。自分のところがその日のうちに撮り終えたのは始めてである。
何だかウキウキと帰宅。

英会話学校。読書。HPの掲示板のレスなどをこなす。


10月14日(土)私の撮影5日目(全体は12日目)
静岡県小山町の和田邸という旧豪邸でロケ。本日も好天。
でも今日は下着1枚で空手の組み手をやっている人もいたので、彼らは寒かったろうなあ。

そんな訳で、本日は憲兵隊の空手訓練を隊長の大和田さんが視察に現れる場面の撮影。
物語の中では大和田さんの初登場の場面である。かなり性悪そうな人物だ。
腰巾着のような役柄の私は、隊長のタバコを差し出したり火を点けたり忙しい。手間の素早さが要求される上に、リハーサルではライターの火がうまく点かなかったりして焦る。今回の撮影で一番緊張した。でも何故か本番は、ほぼOK!大和田さんから”さすがベテラン”とおだてられる。うーん、どこがベテランなんだか?!

空手の達人に大和田さんが口に咥えたタバコを蹴り飛ばされるシーンはカッコ良かった。顔面間近で前蹴りが炸裂!もちろん大和田さんは微動だにせず対峙!
そんな大和田さんも、リハーサルではスゴイ言い間違いをしていた。
”膝と膝を突き合わせ、男と男の話をしようじゃないか”と言うべきところを、”腰と腰を突き合わせ、男と男の話をしよう”とおっしゃったのだ。全然意味が違う。危な過ぎる。
音声さんが大笑いしていた。

午後からは大和田さんと私だけの密談の場面。悪同士の内緒話である。
演技過多にならないように、かといってステレオタイプの芝居にならないように2人で相談しながら現場に臨む。案外良い場面が撮れたように思う。監督もチーフカメラマンも満足そうに見えたから。
空き時間には大和田さんの劇団四季時代の話から、私のテアトルエコーの話、コント赤信号の結成話など、お互いの話をたくさんした。

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今日はデジカメで大和田さんとの2ショットやら撮影風景を撮りました。こんな具合です。




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こちらは密談風景。煙草ばかり吸ってますね。
旧邸宅を公共施設に改良した、こちらのお屋敷は豪華でした。

10月16日(月) 私の撮影6日目(全体は14日目)
茨城県の水街道の武道館でロケ。

本日は空手の達人同士の死闘。この作品の一方の主役の大観(この世の清濁を併せ飲もうとする負のヒーロー、すごく強い)と、それを許さんとする同流派系の別の道場主との対決。物語り中盤のクライマックスである。
朝から凄まじい迫力に道場が包まれていた。前から書いているように、今回の映画では技はほとんど本気で相手に入れる。蹴りも正拳の突きもマジ。俳優部にも、撮影スタッフにもずっと緊張が走りっぱなしである。
午前中のリハーサルでアクションアドバイザーも兼ねていた道場主役(実はプロデューサーの一人でもある)のNさんのあばらに大観の突きが決まった。本当に痛そうである。すぐに監督から“次、本番!”の声がかかる。
今日はテスト1回で本番の撮りが続く。そりゃそうだ、あんな本気は何度も出来ない。
同じアクションをアングルを変えて何度か撮る。リアルさを求めるために、闘っている二人はアクションの段取りをわざときっちりとは決めていないらしい。正面蹴りや、回し蹴り、後ろ回し蹴りと技が入るたびにお互いが思わずのけぞる。物語の中で、初めて大観が相手に翻弄される場面である。互角の戦いが続くが、遂に決着がつく。ここは上映をお楽しみに!
私も大和田さんも含めて我々憲兵隊は、今日は見守るばかりである。

今回オーディション等で選ばれた主役級の武道家たちは、主に松涛流と沖縄の剛柔流。私は門外漢であるが、どうやら寸止めの2大派閥らしい。格闘技好きには、たまらない映画になっている筈である。
それに、今回は寸止めじゃないのである!

ところで今日は、今回の脚本担当している映画監督の飯田譲二さんが撮影現場を覗きに来ていた。私も旧知の間柄なので久しぶりにお話をする。現場でどうしてもこだわってしまう監督心理や、役者への要求などを聞くことが出来た。

さて閑話休題。ここで軽い話を。ロケの食事について。
今日のお昼はビーフシチュウ、またはあさりのクリームシチュウの選択制だった。揚げ物ばかりの出来合いのお弁当ではなく、こういう手作りの温かい食事はとても嬉しい。更に副食の串カツや、みかんとバナナのデザートもついていたのに感激!

撮影の空き時間に、私の一人芝居「接見」の英語版「JAIL TALK」の台詞も再稽古し始める。12月の初旬に私がプロデュースして出演もする一人芝居のフェスティバルがあるのだ。


10月18日(水) 私の撮影7日目(全体は16日目)
今日は栃木県鹿沼市でのロケ(鹿沼はずっと茨城だと思っていました)

憲兵隊長の大和田さんと私が芸者を揚げてどんちゃん騒ぎする場面。そこに俗世の世界に溺れさせるために大観を誘い込むという件だ。
撮影会場は日本庭園が立派な「屋台のまち中央公園」という、ちょっとした観光名所。
芸者役の吉野公佳さんと初顔合わせ。実は彼女とは全く同郷の出身だ。小田原市国府津である(昔からの鉄道マニアならご存知かも)。小学校や中学校の校歌など、ごく狭い話題で暫し盛り上がる。しかし町の変遷に関しては世代のギャップがあり、話がずれてしまう(^0^)
他に芸者さん役が4人、今までにない雰囲気に演技も興奮気味だ。下ネタ満載の芸者遊びに舞い上がっていたのかも(^0^)
かなり真面目な場面が多いこの映画の中で、リズムを変える派手な仕上がりになっていると嬉しいなあ!

今まで寡黙だった監督からも、この頃注文が多く出るようになった。今日も扇子を使ったアイディアを頂いたので、更にこなして演技で答える。それを見て大和田さんも楽しそうだった。

帰りは東武線で帰京。しかし栃木は遠い!


10月19日(木) 私の撮影8日目(全体は17日目)
珍しく午後ゆっくり発の送迎バスでロケ地へ。お陰で朝から散髪やら歯医者やらと諸事を片付けることが出来た。

本日も鹿沼ロケ。今日はナイトシーンの撮影!
憲兵隊長の大和田さんが人力車に乗って登場(夜道の撮影の絵柄はカッコ良かったと思う)。売られてきた可哀想な少女たちを品定めにやってくる場面。出迎えるのは憲兵隊曹長の私とヤクザの阿南健二さん。悪役の勢ぞろいである。
この映画では戦前の日本がまだ貧しかった頃の、こういう世相も反映されている。

さてロケ地のお屋敷を貸してくれた古い農家の家が素晴らしい。門構え、玄関、蔵、広い庭、裏の林、どれを撮っても絵になる。栃木のフィルムコミッションの方々の協力のお陰だろう。最近は各地の町おこしで、こういう撮影協力が多い。私が城下町大使を努める小田原でも活動が盛んだ。有難い限りである。
そんな訳で、家の内外にロケ見物の人が鈴なりである。お屋敷の中には親戚縁者・老若男女が集まって、お祭り騒ぎである。大和田さんを中心として記念写真大会やサイン会が、そこここで繰り広げられた。庭からは“水戸黄門よ!”の声が聞こえてくる。中には”助さん格さんよ”よく分かっていない人の騒ぎ声も。どっちも言われてもねえ。
さらに可笑しかったのは、着替え用に使わせていただいた部屋のカレンダーの本日欄に“映画さつえい”と記されてあり、その下に“大わだしんや”と書いてあったことだ。せめて“大和田”までは漢字で書いてほしかったなあ。

そして我々悪役の退治に正義のヒーロー義龍がやって来る。今回の主役(本物の沖縄空手の若師範)の一人だ。彼が門番を倒して屋敷に忍び込んでくるシーンは、「必殺仕置き人」みたいですごくカッコ良かった。役者臭くない空手家の彼らの演技も新鮮で実に良い。それに義龍くんは相当なイケメンでもある。

本日は順調に撮影終了。夜が早かったので、初めてキャスト同士で飲む。
参加者は大和田さん、阿南さん、義龍くん、そして私である。
今回の撮影について、特に俳優ではない義龍くんの演技の秘密などを和気あいあいと語り合った。義龍くんや大観さん達は半年以上前にオーディションで選ばれ、準備段階で演技の基礎レッスンも積んでいたらしい。その教え方が上手かったのだろう。実に素直な演技を披露する良い結果を残している。
義龍くんは沖縄ではロックバンドのギタリストでもあり、夢は空手の出来るミュージシャンとしてライブを続けたいらしい。有名になって儲けたいという欲はあまりないそうだ。バンド仲間のことを大事に思っている話も聞いた。おじさんたち3名は、心が洗われた夜だった(^0^)

余談だが、飲みに行った居酒屋さんで収穫したばかりの新米をどっさり頂いた。本業は農家なんだそうで、精米機で玄米をあっという間に白いお米に変えてくれた。
鹿沼の皆さん、何から何まで“ありがとう!”


10月20日(金) 私の撮影9日目(全体は18日目)
今日も鹿沼でロケ。本日は“屋台のまち中央公園”の庵で撮影。ちなみに屋台とはお祭りで使う山車のことを指し、ここには展示博物館もある。

いよいよ大和田さんと一緒に座敷牢に入る場面。部屋の中には、いたいけな少女が数人。普段着の時はみんな元気な現代っ子だったが、ボロの野良着を着ると途端に薄幸の貧しい少女に見えるから不思議だ。
ところが、よだれを垂らしそうな憲兵隊長の大和田さんが振り返ると、牢屋の入り口には阿南さんと私がすでに義龍にやられて気絶している。さあ少女たちの運命は如何に・・・

今日は私の出番は少なかったので待ち時間が多かった。でも待つのも仕事!
お陰で一人芝居の英語版「JAIL TALK」の復習がたっぷり出来た。

午後早めに私の撮影終了。
下北沢の本多劇場に向かう。本日は青年座の十八番「ブンナよ木からおりてこい」を観劇。
お寺の池の生活では物足りなくなったカエルの体験記。登った木の上には、想像以上の弱肉強食の世界があったのだ。
思ったよりリアルな芝居だった。「妻をめとらば」で一緒だった横堀さんと野々村さんが、それぞれ怖い蛇と気弱なスズメを好演。「西遊記」で共演した山賀さんも、生と死のテーマを語るネズミを飄々と演じていて面白かった。知り合いが良い芝居をしていると嬉しい。


10月22日(日) 私の撮影10日目(全体は19日目)
一昨日は明け方近くまで撮影があったそうで昨日は撮休。少年役の子が最後まで一番元気だったそうです。

久しぶりに御殿場の二岡神社へ。
少女たちを座敷牢から誘拐した義龍を、憲兵隊が逮捕に向かおうとする場面から始まる。物語のクライマックスの導入部分である。
命令のために、私は朝から大きな声を出す。今回はこういう場面では、非人間的な軍人らしさを出すためにヒステリックな声を出すことにしている。

昼食をはさんで以前に撮り残した物語前半の場面の撮影。
分隊長代理として偉そうに私が訓辞をたれる場面だ。ここはトーンを落として、嫌味っぽく演じてみた。私の代わりに第三舞台の小須田さんが、ヒステリックな声で命令書を読み上げてくれた。
ここで明日の撮影の中止報告が出た。今日は泊りがけで山梨に直行のはずだったが、天気予報が確実に雨のために撮影は延期になった。ロケ場所とアクションが少々危険なためでもある。
憲兵隊一同は帰京。

お陰で日本シリーズを堪能できた。でも一応中日を応援しているので、ちょっと口惜しかったかな。なかでも山本昌がまた負け投手になってしまったのは可哀想だった。
それにしても新庄は派手なアピールだけでなく、大事なところでも良い仕事をする。やはりスターなのだなあと感心する。


10月24日(火) 私の撮影11日目(全体は20日目)
昨日からの雨が降り続いているが、今日は道場内のシーンなので心配なし。
埼玉県蕨市にある私設道場に集合。すでにほぼ悪役と化している大観が、私の命令で初めて道場破りをする場面。

もの凄い私の顔のアップの撮影で始まる。カメラのレンズに反射した自分の顔が見えるくらいの至近距離だった。これがスクリーンに映ると思うと嬉しいやら、恥ずかしいやら。
私的には芸者を揚げてのどんちゃん騒ぎの場面の後の繋がりなので、モノトーンの抑えた命令口調で演じてみた。敵対する道場主が“そんな理不尽な命令には従えない”と反論するや否や、“では試合で決着をつけよう”と不敵に笑いを浮かべながら答える。といっても闘うのは私ではなく、強い大観なんだけどね(^0^)
しかし中さん演じる大観は強い。相手の鋭いローキックにも回し蹴りのハイキックにも少しもひるまず、相手が更に蹴りを入れてきた瞬間に、カウンターの突き一発で倒してしまった。何度も書いたが、この映画ではアクションは寸止めされないのでスピードと迫力が満点だった。本当は相手の方は相当に恐かったらしいが・・・

一応監督からは芝居のOKはもらえたので、私としては満足。
本日は正午過ぎに撮影終了。帰宅してお勉強!
夜は春風亭昇太さんの落語会「ムードデラックス」に出かける。


10月25日(水) 私の撮影12日目(全体は21日目)
千葉外房線の誉田駅に朝集合。
田舎っぽい駅からロケバスに乗って発車すると、更に景色は田舎になる。竹林を抜けたところに目指すお寺があった。田舎だけに広い境内、そしてそこには五百羅漢のような石像群があった。それにしてもこういうロケ場所をよく捜すものだと感心する。

すでに早朝から義龍が少年を助け出す場面の撮影が始まっていた。石仏の中を少年を背負った義龍が歩いていく。それだけでも絵になる。

続いて憲兵隊が若き空手の達人3人を連行していく場面。物語としてはまだ前半部分である。これは近くの竹林の坂道で撮る。ここも竹が鬱蒼としていて雰囲気がなかなか良い。
実はこの行進には罠があり、分隊長の私の眼が冷ややかに3人を見ているという内容。 雨上がりのぬかるんだ坂道なので行進途中で滑る兵隊がいたりしたが、大過なく終了。 なんと午前10時には私の撮影が終わってしまった。
電車を乗り継いで憲兵隊の皆さんと帰京。千葉も遠い!

夜は流山児事務所の塩野谷さんのプロデュース公演の稽古場に顔を出す。最近注目の劇団「モダンスイマーズ」の蓬莱竜太さんの演出に特に興味があった。
まだ稽古の初期段階のようで荒削りだが、却って本番が楽しみだ。不条理なこともコミカルなことも、やはり根っこには演じる側のリアリティが必要だと思い至る稽古風景だった。


10月27日(金) 私の撮影13日目(全体は23日目)
木更津の山中の広い草原でロケ。
いよいよクライマックス。心ならずも同じ門下生同士で闘うことになってしまった今回の主役義龍と大観の対決である。二人とも本物の武道家であるだけにアクション場面には期待してしまう。
ただし今日はその導入部だけの撮影。
奪われた娘たちを取り返しに来たヤクザを相手に農民や少女たちと共に立ち向かう義龍。そこへ我々憲兵隊もやって来る。ほとんどの出演者が勢ぞろいだ。台本的にも数ページに及ぶ長いシーン。カメラポジションを変える度に、照明からセットから大移動だし、人数が多いので段取りも多い。スタッフは見るからに大変そうだ。おまけにこの辺りは旅客機の航路なので、せっかくカメラが回っても飛行機の騒音で何度も中断させられる。
憲兵隊の登場で緊迫したところへ大観が忍び寄る前振りのカットで昼休憩。

日没が段々早くなっているので昼食も早目に切り上げ撮影開始。監督もチーフカメラマンも指示と進行が早い。憲兵隊長の大和田さんも裏切ったTの抵抗に手が出ない。発砲しようとした小須田くんもやられてしまう。手に汗を握る展開。西の山の稜線の向こうに日が沈んでも撮影は続いた。本当にこれで映っているのだろうかとも思うのだが、このシーンには何か秘策がありそうである。これに関しては内緒。見てのお楽しみである。
辺りが真っ暗になったところで撮影終了。エキストラを含め大勢の出演者を乗せたロケバスが東京湾を潜って帰路に着く。実は私は海ホタルを通過するのは初めてであった。


10月28日(土) 私の撮影14日目(全体は24日目)
本日も木更津で対決。

10月29日(日) 私の撮影15日目(全体は25日目)
木更津の対決最終日。雨で変更、対決だけとか
山梨へ直行


10月30日(月)私の撮影15日目(全体は26日目)
前日予定がキャンセルになり撮影予備日を使う
昨日の夜から山梨の道志村に乗り込む。暗い夜道を相当曲がりくねって到着。途中で道に鹿が歩いていた。すごい山奥だ。
着いた宿は渓流釣り客の民宿らしい。思ったより綺麗で快適。安心した。
早めに到着したので憲兵隊諸氏の大部屋で宴会が始まる。憲兵隊は私と小須田さんを含めて十余名の編成である。これに今回の主役の3人GくんとTさんと役で怪我をしているCくんの3人も加わる。こんなに揃って飲むのは初めてであるが、撮影中に仲良くなっていたので最初から大いに盛り上がった。それぞれの人の劇団の話や、G&Tさんらの演技レッスンの話、真面目な話やら下ネタまで満載。途中から助監督や衣装さんらの撮影スタッフも混じって更に深夜まで盛り上がる。

それでも4時半起きの5時出発。外はまだ真っ暗だ。
衣装装備も着けてロケ現場まで行く。途中吊り橋があった。これがもの凄い高さなのだ。はっきり言って私は高所恐怖症である。かなり恐かった(実はこの時は暗くてよく見えなかったが、昼間もう一度通ったら谷底の川が丸見えで更にビビッた)。

物語の始めに白竜さん扮する憲兵隊の小隊長が空手家のGくんに負けてしまう。それを苦にした小隊長は自害する。そこで彼の息子と娘の兄妹が仇討ちにやって来る、というのが今日の撮影の場面である。
若い兄妹は今日だけの撮影だということもあって気合が入っていた。Gの方が絶対に強いのだが、2人の思いにたじろいでしまう。兄の刀を受けてひるんでいる間に妹が突いてきた槍が腹に刺さってしまう、というところで午前中は終わり。雨上がりの木立の斜面でのアクションは難しそうだった。兄は1回刀を折ってしまうハプニングもあった。
憲兵隊は小隊長の無念を思って見守るばかりである。

午後は更に恐いアクションの撮影。槍で押されたGが足を滑らせて谷底へ・・・。この先は見てのお楽しみ!
しかし吊り橋で分かるように相当な崖である。命綱を付けているとはいえGくんの勇気と成果に思わず拍手も起きた。もちろん入念なテストとリハーサルを行ったことは言うまでもない。無事終わって全員ホッとした。
しかしGくんもエライが、カメラさんも凄い。レンズを覗くと高い所でも平気なのだろうか?崖の下を覗き込む視線まで自分も身を乗り出しているのだから、相当恐いはずである。

暗くなる前に撮影が終わってよかった。日没間際だと危険度は増すだろうから。
帰りのバスでは誰も口を聞かず眠りこけていた。

そんな訳で明日はクランクアップの日。
撮り残した場面のために木更津に再集合。
実は私は終了後に、その足で伊豆まで「釣りロマン」の収録に直行である。その模様は後日お知らせします。したがってこの日記も3日ほどお休みです。悪しからず。
今日は狂言の稽古にも行ってきました。うーん、忙しいが充実した今日この頃である。


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先にお見せします。クランクアップ直後の記念撮影。
大勢の人間が関わっていいるんですねえ。
秋晴れの日でした。




10月31日(火) 私の撮影16日目(全体は26日目)
本日で俳優部門はクランクアップ。

今日は延期で撮り残した部分を木更津で撮影。GとTの別れ、そして二人の死闘を見守る出演者一同の場面である。
撮影の前に、二人の闘いぶりを編集前のビデオで見せてもらう。蹴り、打ち、突き、お互いに技を繰り出す。草原に倒れ大きな段差の坂を転げる二人、泥だらけになりながら技が尽きても尚闘っている。特に最後のワンショット長回しは迫力があった。当日の現場で見られなかったので、このビデオが頼りだったが、我々憲兵隊一同も唸るしかない。皆さんはスクリーンで堪能してください。

午前中は二人の台詞の場面を撮るが、やはり飛行機が飛んでいてはかどらない。
食事を挟んで午後の撮影。ちなみにこのところ昼食が美味しい。昨日は待望のカレー!あの悪路を運んでくれた努力と味に感激!本日は大草原の真っ只中で、ハンバーグと魚のクリーム煮のビュッフェスタイル。撮影の思い出はランチと共に。

午後はいよいよ憲兵隊、ヤクザ仲間、農民たち、それぞれの思い出GとTを見守る。ススキの原に大勢が立ちすくむ。台詞はないが、最後の思いはこもる。
監督の「カット」と「OK」の声で皆の拍手。スタッフから大和田さんに花束が贈られる。私もシャンペンを頂いた。後で家でじっくり味わおう。 残りの空手家たちの場面を残して我々は現場を後にした。再開を約する出演者、メルアドの交換、握手会、それぞれの思い出を残し帰路に着く。

約1ヶ月の撮影が終了した。私にとってこれだけ多くの出番で映画に出演したのは初めてである。共演者や監督スタッフとも初めての方が多いが、暖かい現場で楽しく演技をすることが出来たのが嬉しい。
詳しい思いや記録は上映前に撮影日記として発表をお約束します!

ちなみに私はその足で「釣りロマン」の収録のために伊豆半島へ向かいました。 11月1日・2日と下田沖の神子元島で大好きな磯釣りを満喫。風や波の条件が良好とは言えなかったし、磯のメインターゲットのメジナやイサキの型物は出なかったものの、魚種は豊富に釣ったし竿は曲がったし私は満足である。
この模様は11月25日(土)に放送予定である。お楽しみに!